日本の多くのゴルファーはアンジュレーションのあるコースを好まない傾向が強い。「名門」=平坦な林間コースというイメージがゴルフ会員権が暴騰したバブル期に植え付けられたこともあり、特に、山の中腹や高原に造られた高低差のあるコースはいまだに好まれないようだ。確かに、フラットなコースは多少ボールが曲がってもボールを見つけやすく、プレーする上では楽であるが、何か物足りなさを感じざるを得ない。
最近、55年以上もゴルフを続けてきて思うのは、フラットな林間コースよりある程度標高の高いゴルフ場の方が本来のゴルフそのものが持ち合わせている楽しみを満喫できる、ということだ。
健康面では言うまでもないが、まず何より、大自然の中で遊べる(プレーできる)楽しさがある。マンションや住宅街がコース近くにあってそれらがラウンド中に目に入ってしまうこともある首都圏の林間コースとは正反対に、山のコースは素晴らしい景観と大自然の豊かさに満ち溢れている。
年始めの頃の冬の晴れた日は少し寒いが、遠くに冠雪した山々を眺望でき、春が近づいた暖かい朝は雲海を見渡しながらの優雅なゴルフを楽しめる。春は風も温み、コース内の桜はもとより周辺の山に点々とする山桜が咲き始め、「山が萌える」世界を堪能できる。夏は猛暑の平地よりは朝晩の風は涼しく、日中の暑い時間帯は短い。そして秋は、言うまでもなく、日一日と色を変えていく紅葉に目を奪われる。まさに、山のコースでは四季の移り変わりを肌と目で楽しみながら一日を過ごすことができる。
現実的なスコア面では、山のコースはフラットなコースと比べると一般的に総ヤーデージは短めだが、決してほぼ同じ総ヤーデージのフラットなコースより良いスコアが出るとは限らない。というより、むしろ難しい。
ほとんどのホールは、ティーイングエリアとグリーンとの間に高低差がある。中にはティーショットが極端な打ち下ろしのホールもあれば、第2打地点からグリーン面が見えない砲台グリーンのホールもある。また、左右どちらかがOBになっていたり両サイドともOBのホールもあったりする。いわゆるナイスショットとミスショットの差がはっきりとスコアに表れることが大半だ。
また、ティーイングエリア以外は必ずといってよいほど左右のスタンスの高さだけでなく、スタンスの位置とボールの位置が同一平面上にあることはない。
ティーショットをする前から、どちらサイドに打っては絶対いけないかを考え、神経を集中させて臨まなければ必ず大ケガをする。また、すべてのショットにおいて正確な距離感を求められる。ピンまで同じ100ヤードでも、打ち上げと打ち下ろしではまったく打たなければならない距離は違ってくる。ボールが上り斜面にあるか下り斜面にあるかでも違う。
グリーン周りからのアプローチショットも同様である。さらにグリーン上では、山のコースならではの周囲の景観やそのホールがどういうところに造られているかによって錯覚が起こる。左に曲がっていくと読んだパッティングラインが右に曲がっていったりする。ゴルフの難しさでは、フラットなコースの比ではない。それだけにビビって十分振り切るスイングができなくなる恐れもあるが、それを克服するよう務めながらラウンドを重ねれば、どのようなコースに行ってもどこに打ってはいけないかといったマネージメント力と思い切ったスイングができるようになるご褒美も待っている。また、山の自然の地形を利用したホールでは、自然のアンジュレーションによってラッキーに恵まれることもあり、まさに、人生と共通する面白さを感じることもある。プレー料金も平坦な林間コースよりははるかに安いところがほとんど。昨今は乗用カートでのプレーが一般的になり、山コース特有の上り下りも苦にならない。改めて山コースを訪れて、大自然に囲まれてのゴルフを楽しんでいただきたい。
<取材・筑波国際カントリークラブ>
おっしゃる通りです。かつて赤星四郎が「アンジュレーションこそ、このゲームの生命。もしコースが湖面のように平坦続きならば、とうにゴルフは滅びていただろう。心からアンジュレーションを愉しまなくて、何がゴルフだ。」と言ったそうですが、日本のコースの根っこは「接待」なのでそうなるんでしょうね。
日本のトーナメントコースはフェニックスのようなフラットで表情の同じコースが多いですが、オーガスタは起伏が激しいし、全英のコースは草むらですもんね。
山岳コースで集客に困っている倒産寸前のコースに光が当たることを願っています。