【 GOLF・スケッチブック 】
記事はゴルフの諸事雑事を書いています
日記としてゴルフ生活を描いた書籍から、前回は若手プロの石川遼とベテラン金井清一を取り上げたが、今回は遊びの天才とも巨人ともいわれた大橋巨泉とゴルフ漫画として楽しく描いて我々に提供してくれた石ノ森章太郎の「ゴルフ日記」に触れていたい。
大橋巨泉。遊びの巨人であった彼にとってゴルフとは、遊びの域を超えて、夫婦のような、人生のパートナーとなった存在であった。それを「わがシングルへの道」に描いてみせた。タイトルを読むとシングルになる技術的経緯を書いていると受け止められるが、どっこいそうではない。ゴルフへのチャレンジを通して、ゴルフへの魅力やゴルフの奥深さを体験していく内容だ。
また、その折々に社会事象に触れ、自分の考えを披露する。絶えず前を向いて歩く姿が随所に感じ取られ、単なる「ゴルフ日記」に終わっていないところが巨泉らしい。自分のメモした「ゴルフ手帳」を再構成して書かれている。1977年に講談社より単行本として発行、後にその後の15年分を追加して講談社文庫から出された。
あの多忙な巨泉が弛むことなくゴルフにチャレンジしてゆく姿は、同じアベレージゴルファーとして教えられるところが多く、良書となっている。かれこれ半世紀も前のゴルフ体験記だが、現在も色褪せることなく、彼のチャレンジが迫ってくる。
次に“漫画の王様”石ノ森章太郎著の「ゴルフ超心理学日記」は漫画を活字にしたような誠に面白いエッセーである。内容は多忙な漫画家生活のなかで、寸暇を惜しんでクラブを振った日々の記録でもある。なかでも、漫画家10人ほどで「イージー会」というゴルフ会をつくり、月1回のゴルフ会を開き、業界でのコンペや友人知人とのプレーの体験論やゴルフ観といった内容を面白可笑しく書いている。
この「イージー会」とは全員が50歳を超えていることから、老後は枯山水ではなく
“E・RO爺ィ”になり活力を出して行こう、との趣旨で付けられた名前とか。参加したのは石ノ森章太郎ほか藤子不二雄Ⓐ、北見けんいち、千葉てつや、松本零士などなど当時の漫画界を代表する選手ばかりだ。彼らの作品から伺えない人柄や人物像が描かれていて、誠に興味深い。
この本は30年ほど前に「GOLFコミック」(秋田書店刊)に連載されたもので、2008年に清流出版から発行された。1990年前後、バブルの余韻が残っている時代に、多忙の中でゴルフ三昧に耽る漫画家たちのゴルフ行状記であるが、当時の“ゴルフ”というものが社会の中でどんな存在であったかを知る上で貴重な資料となっている。
なお、石ノ森章太郎は21世紀を見ずして、1998年60歳で亡くなっている。いま生きていたら80歳。もう少し長生きできていたならと思うが、考え方を変えてみれば、彼が戦後日本の最もいい時代に活躍されたことを思うと、幾分残念な気持ちが和らぐのである。
前回と今回にわたって著名人の「ゴルフ日記」を取り上げたが、ゴルフにとって日記とは技術向上の目的だけでなく、その人の人生をも書き残す大切な存在であることを改めて感じるとともに、ゴルフの生きざまは、時代が変わってもそう大きく変わるものではないという、ゴルフの持つ奥深さを感じる。ゴルファーはゴルフの古典を読もう。
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