人気絶頂の女子ツアーでもない、松山英樹の米国での活躍で見直される男子ツアーでもありません。いま、静かなブームになっているゴルフツアーがあります。国内のシニアツアーのさらに年齢の高い日本グランド・ゴールドシニアの試合(PGA主催)です。
6月24、25日の2日間、千葉・スカイウエイCCで開催された「日本プログランド・ゴールド選手権ゴルフパートナーカップ」は、次々とコースに足を運ぶギャラリーのために最寄りの成田駅からギャラリーバスがピストン運行。コース内に設営されたギャラリーサービスのテントには行列のできるありさま。
最終日のギャラリー数の公式発表は初日に続いて1465人。場内は歓声やら拍手やらで大賑わい。いま、どうしてグランド・ゴールド(G&G)がこうも人気なのでしょうか?
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50歳からのシニアのさらに上をいくグランドは60歳から。ゴールドは68歳になる年度からそれぞれ資格が生まれます。毎年6月に行われるこの大会、今年行われた千葉・スカイウエイCCをのぞいてみると、ホントにこの目を疑うばかりの盛り上がりようでした。
初日に組まれたペアリング、最終組は「尾崎直道、室田淳、倉本昌弘、三好隆」の4人組。一つ前には「羽川豊、湯原信光、渡辺司、飯合肇」と、こちらもビッグネームがずらりと名を連ねて、一瞬レギュラーツアーかと見間違うほどの面々がいるのです。
G&G(グランド・ゴールド)今季初参加組は、室田淳(すでに有資格も今年初出場)はじめ、尾崎直道、渡辺司、羽川豊、湯原信光・・。レギュラーやシニアで活躍した有名選手が、まだまだ元気はつらつな姿でG&Gのフィールドに移ってきているのです。
きっとギャラリーの思いも同じなのでしょう。「シニアの鉄人」室田は昨季、2年連続シニア賞金王は成りませんでしたが、賞金ランク3位をキープ。
レギュラーツアーともかけもちで戦っているトッププレーヤー。
レギュラーを卒業してシニアツアーで活躍している直道や羽川、湯原信光、飯合肇らのプレーも目の前で見られるとあっては、もうじっとしていられないのでしょう。それぞれ年季の入ったゴルフの技は、レギュラーにはない高度なものもみせてくれます。
レギュラーツアーと違って、選手に近づけないローピングもなく、60歳を過ぎたプロたちは、ピリピリした雰囲気もみせずみんな気さく。ギャラリーとのちょとした会話にも応えてくれてファンを喜ばせます。その頂点ともいえるファンサービスは、6番のパー3ホールです。
「みんなでワイワイ、応援ホール」と銘打ってグリーン脇のスロープがまるで”スタジアム”。次々やってくる選手を自由に応援してくださいという趣向。
拍手はもちろん、ここでは大声を出しても許される応援エリアなのです。グリーン横のテントでは、ゴルフタレントの黒田カントリークラブの司会でプロゴルファーのすし石垣、藤井かすみの男女二人のプロが″解説〝するという仕組み。
有名メーカーのキャディーバッグが当たる抽選会もあるなど、至れり尽くせりのギャラリーサービスです。 また、アプローチの練習場では憧れのプロからバンカーやアプローチのワンポイントレッスンも気楽に受けられるエリアがあり、まさにシニアらしいサービス満点の企画が用意されています。
おまけに成田駅からコースまでのギャラリーバスはタダ。入場も無料という条件は、ゴルフ好きの腰を上げさせる大きな要素です。それだけではありません。
コース内のギャラリ―プラザには、いくつものテントが出て、天むすに鳥めしおにぎり、串焼き、から揚げ、ホットドックにカツサンド、焼きそば、たこ焼き・・とちょっとしたお昼が無料で食べられるのです。
コース近くの成田ゆめ牧場からは、アイスクリームやヨーグルト等のドリンク類も出店していて、ゴルフを見ながらおいしいランチのフリーサービスはギャラリーの心をゆすります。
この大会はPGAの公式戦で歴史は古いのですが、以前はメディアも取り上げないようなマイナーな競技でした。ところが2013年、埼玉・高坂CCでの大会で冠スポンサーに「ゴルフパートナー」(中古クラブ等販売)がついてから様相が一変しました。
「ゴルフパートナー」がいろいろな企画を持ち込み、客集めにも奔走しました。その効果は年々上がり、高坂2年のあと、兵庫・よみうりCCで2年、そして今年は千葉・スカイウエイCCに舞台を移して″5年目”の大会が盛会裏に終わりました。
今年の日本グランドシニアは、有力選手が集まり面白い展開でした。最終日は首位から3打差以内に、初日7アンダートップ・三好隆、1打差の鉄人・室田淳、グランド新人・羽川豊、永久シード・尾崎直道と倉本昌弘、飛ばし屋・福沢孝秋の6人がひしめく大混戦。
初日3位の福沢が8番から3連続バーディー。15番でも2メートルのバーディーパットを着実に取って通算8アンダーで抜け出しました。5番で池に入れトリプルを打った室田は、それでもしぶとく1打差で最後まで粘りましたが、最終18番で第1打を左の土手に打ち込んで悔しいボギー。初出場初優勝を逃がしました。
福沢は、日本シニアオープン(02年)、日本プロシニア(04年)に続いて日本タイトル3つ目。昨年は関東プログランドにも勝っており、公式戦に強い男。若いころは社会人野球で捕手をつとめた野球人。
″諏訪湖CCの福沢孝秋〝として名を売りましたが「こんなすごいメンツだし、勝てるなんて思ってなく適当にやったのがよかったのかな。最高の気分です」と、会心の笑顔でした。
ゴールドでは、ゴールド初出場の海老原清治(68)が、最終18番(パー4)で141ヤードの第2打を8番アイアンで直接放り込む逆転サヨナライーグル。1打差リードされていた松本紀彦(73)を突き放す通算イーブンでの劇的優勝でした。
「左の土手下から転がりを計算して打ったんだ。(アンジュレーションの強いグリーンで)いったんボールが見えなくなったあと、奥のピンに向かって転がったよ」と興奮気味の海老原サン。
「青木(功)さんがハワイでやったときの気持ちが分かったよ」。1983年、青木功がハワイアンOPで最終ホール″サヨナライーグルV〝を演じた劇的シーンを思い出した海老原。かっては青木功ファミリーの番頭格だった男らしい思い出でした。
今回もひっそりと、新聞各紙にもあまり報じられなかった日本G&G選手権。
「レギュラーやシニアツアーで活躍した面々が大勢G&Gに入ってきたのがきっかけになりましたね。いまやシニア以上にファンの方に楽しんでもられるG&Gになって嬉しい限りです」(PGA・伊藤靖士広報)。ゴルフ界にはこんな隠れた人気トーナメントもあるのです。グランドシニアの次戦は「ユニデングランドシニア選手権」が10月17、18日静岡・サザンクロスCCで開催されます。
[日本プログランドシニア選手権の上位成績。()は年齢]
①ー8 福沢孝秋(64)
②ー7 羽川豊 (59)
尾崎直道(61)
④―6 室田淳 (61)
三好隆 (65)
⑥ー3 飯合肇 (63)
⑦―2 渡辺司 (60)
高橋勝成(66)
中尾豊健(65)
⑩0 湯原信光(59)
(賞金総額:1000万円。優勝賞金:100万円)
【この記事は2017-7-3 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】
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