男子ツアー、開幕から6戦中外国パワーで5勝!また出現した韓国新戦力。日本勢は″かやの外”

国内男子ツアーでまたまた劇的な優勝者が現れました!3日目の5打差を逆転して、ツアー史上4人目のデビュー戦V(関西オープン=和歌山・橋本CC、19日~22日)。それを演出したのはまたも外国パワー、韓国からの刺客は、昨秋の最終予選会(QT)25位の資格で今年から日本ツアーに参戦してきた26歳。09年に韓国でプロ転向後、特殊部隊に志願入隊。12年1月から1年10ヵ月の厳しい兵役を経験したあとツアープロに復帰したという異色プロ。日本ツアーの初出場初優勝は、07年の石川遼(当時アマ)以来のことですが、それにしても日本勢のふがいなさはどうしたのでしょう。開幕から6戦目(国内4戦目)で実に5人が外国勢。日本人が勝ったのは、僅かにパナソニック・オープンでの池田勇太ただ一人。2週間も試合がなく、オープンウイークを過ごした男子ツアーなのに一向に気勢が上がりません。

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優勝したのは チョ・ビョン・ミン。12歳からゴルフを始めアマチュア時代には韓国ナショナルチームに加わるなどしましたが、大きな実績は残せず兵役へ。主に空挺部隊で訓練を受け、高度1000㍍超から20回以上のパラシュート降下を体験するなど、過酷な環境で鍛えられました。「もう2度と行きたくない。ゴルフの方が全然楽」(チョ)と漏らす26歳は、韓国の自宅が近い昨年賞金王の金庚泰(キム・キョンテ、29)の活躍などを見て、日本でのプロ生活を決意したよううです。韓国ツアーでは未勝利。下部ツアーでは2勝。日本では昨年12月にトライしたQTで25位。今季のかなりの試合出場が約束されました。今春4月のチャレンジトーナメント(下部ツアー)では2位に入って上昇機運を高めていた矢先のことでした。

kawamura

欧州ツアー帰りの強行軍、川村昌弘も最後まで″1打差”で追ったが、プロ2勝目は成らず。(関西オープン=和歌山・橋本CC)

今大会ではアップダウンも強い難コースの和歌山・橋本CCで、上位陣のスコアが伸びずチョは兵役で鍛えられた強いハートをバックに、得意のパットが冴えました。最終日も2位と1打差の首位で迎えた17番。5㍍のバーディーパットを決めて優勝を確実なものにしました。「優勝できるとは、信じられない。自分のプレーに集中してたけど、優勝は期待してなかったです」と、いきなりの日本ツアーVに興奮気味。この優勝で今季の残り試合と18年まで向こう2年間の出場権を得ましたが「日本は試合もたくさんある。今後は日本で楽しくプレーできれば最高」と、日本を新しい″戦場”にすることを宣言していました。昨年の賞金キングで今季もすでに2勝して賞金ランク1位にいる金庚泰(キム・キョンテ)を筆頭に、韓国パワーが日本ツアーを席巻するなか、またも韓国元特殊部隊のコワイコワイ新戦力が出現しました。

近藤共弘

近藤共弘が1打差2位と食い下がるも、″やっとここまで”の感。(関西オープン)

手をこまぬいている日本勢はどうしてるのでしょうか。第82回を迎えた関西オープンは、日本最古のオープン競技。いまでは賞金総額7000万円、優勝賞金1400万円の規模の小さい大会になりましたが、この歴史ある試合への選手の思い入れは深いはず。それなのに初日から朴ジュンウォン(韓国)に首位を奪われ、2、3日目はスコット・ストレンジ(豪州)。最終日には5打差(3位)のあったチョ・ビョン・ミンに大逆転を許すなど、日本パワーは終始″かやの外”。辛うじて3日目、3位タイにつけた近藤共弘(38)と川村昌弘(22)。最終日、川村は10番のバーディーで首位に1打差まで迫るなど何度かチャンスはあったのに「正直、何かスイッチが入るような感じがなかった」(川村)と、気合薄。さらには「凄いチャンスにつなげることができず、ラッキーがあるわけでもなかった。勝つときには何か、スーパーショットなどがあるものなのにそれもなかった」という。最終ホールでは、後ろの最終組チョ・ビョン・ミンとはまだ1打差ビハインド。バーディーを狙ったロングパットを打ち過ぎて大きくオーバーさせ、返しも入れられないボギーのひ弱い幕切れ。「最後が下手くそでした」と、嘆いてみても結局は2打差の4位どまり。近藤も1打差2位で終わるのが精いっぱい。出だしの1番で右足内転筋を痛めてのプレーだったようです。

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今季好調、すでに1勝を挙げている池田勇太も初日70位から追い上げたが、タフな橋本CCに苦しみ3打差5位タイどまり。日本勢の起爆剤とは成らず!(関西オープン)提供:いずれもJGTO

海外志向の強い川村は、前週欧州・アジア・南アが共催する「モーリシャス・オープン」に参加。強い風の中の試合で12位に入る健闘でした。で、火曜日の夜に帰国したばかりの強行日程。アフリカ・マダガスカル島に近いモーリシャス共和国での試合。日本へ帰るにはドバイを経由して丸1日かかるような世界の裏側での試合にも平気で出かける川村は、もう3年間もこの武者修行を続けています。若さと世界が好きという旺盛な意欲で戦う川村なのですが、プロ2年目(13年)の20歳で勝ったアジアパシフィック・パナソニックオープン以来、2勝目がきません。今週後半から右前腕部に痛みがあったというのは気がかりですが、川村のような若い行動派の大暴れが、どうしても欲しいところ。
関西オープンはレギュラーツアーに再昇格して8年目ですが、今年4日間で動員した1万5615人のギャラリー数は復帰後最多。青木功JGTO会長は「男子の試合が少ないので、トーナメントに飢えている人が多いのかも」と複雑な表情でした。日本男子の新たなヒーローの出現が、なんとしても待たれます。

 

【この記事は2016-05-23にゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】