菅野徳雄の「プロツアー激辛情報」
(日刊ゲンダイ 平成28年8 月24日)優れた指導者がいない限り東京五輪もゴルフのメダル獲得は無理だ
治安、ジカ熱、テロ……と、心配事の多いリオ五輪であったが、何とか無事に終わり、日本は金12、銀8、銅21の計41個という史上最多のメダルを獲得した。
しかし、112年ぶりにオリンピック競技に復活したゴルフは、ジカ熱とか過密スケジュールを理由に、世界ランキング上位の男子選手が10人以上も出場を辞退するという異常事態。
米女子ツアーで2勝している野村敏京はメダルに1打足りなかったが、日本から行った他の3人はメダルには程遠く、まったく盛り上がらなかった。
それでも4年後の東京五輪には、世界ランクの上位選手が全員出場するはずだから、世界の強豪を迎え撃ってメダルを取るには、一日も早く動き出さなければならない。
リオ五輪で多くのメダルを取った競技には、優れた監督やコーチがついていた。4年前のロンドン五輪では金メダルを一つも取れなかった男子柔道がリオ五輪では金2、銀1、銅4個と7階級全部でメダルを獲得した(女子は金1、銅4個)。 ロンドン五輪の後、日本柔道の監督に就任した井上康生はヨーロッパに渡った。スコットランドに古くから伝わる、両腕を肩に乗せるようにして組み合って投げ合う格闘技を学ぶためだ。
襟を取り合って体から離れて技をかけることによって一本を取るのが、これまでの日本の柔道だった。井上監督は体を密着させた状態から技を繰り出す柔道を取り入れようとしたというのだ。
これまでの日本の柔道は技をかけようとして失敗すると、相手は体を密着して攻めてくるので、レスリングのような技で負けることが多かった。そうした体を密着させた状態から一本を取る柔道を学ぶために、井上はヨーロッパに行ったり、ロシアのサンボや沖縄相撲を柔道に取り入れたりして、体を密着させても勝てる柔道に変えてきたというのである。
水泳には北島康介を世界一に育てた平井伯昌コーチがいて、今は萩野公介などを指導している。
シンクロナイズドスイミングがリオ五輪でメダルを奪還出来たのは、井村雅代監督が中国から戻ったからだ。
日本のゴルフが東京五輪でメダルを取れるかどうかは、指導者いかんにかかっている。
「個々の選手にコーチがついているので、技術的なことについては口出しをしない」
リオ五輪のコーチに就任した丸山茂樹はこんなことを言っていたが、これではコーチとはいえない。コーチは全責任を持って選手を指導し、メダルを取れなかったら「すべてコーチの責任」というぐらいの覚悟を持たなかったら、引き受けるべきではない。
もし丸山がコーチを続けるのなら、平井コーチや井村監督のように選手を引っ張っていけるだけの指導力を持っていなければメダルは取れない。
技術的なことは個々のコーチに任せるという考えなら、即コーチを降りるべきだ。