男子ツアーは賞金額を減らしても地方の試合を増やすべし

菅野徳雄の「日本のゴルフを斬る」
(日刊ゲンダイ 平成28年3月10日
男子ツアーは賞金額を減らしても地方の試合を増やすべし


年間26試合(うち2試合はアジアンツアーとの共催)と低迷している日本の男子ツアーは青木功が会長に就任したことでどう変わるのだろう。ハワイアンオープンや世界マッチプレー選手権で優勝し、全米オープンでジャック・ニクラスと死闘を演じた青木の名前は世界のゴルフ界で知らない人はいない。昨年は旭日小綬章も受章している。

一番の注目は、青木功の名前で男子ツアーの試合数を増やすことができるかどうかだ。「何としても試合を増やしたい」という青木の強い思いは、日本で初の国際試合ダンロップフェニックスオープンを創設するなど、トーナメントプロデューサー&ディレクターとして活躍してきた大西久光を副会長に担ぎ出したことからもうなずける。

かつて、男子ツアーは宮城、新潟、静岡などでも開催されていた。それが今は関東と関西を行ったりきたりが多く、残りは北海道、九州、四国で3、4試合ぐらい。

男子ツアーが40試合以上あったとき、主力選手は地方の賞金の少ない試合には出たがらなかった。そのためギャラリーも少ないので、「こんなことを続けていたら早晩、地方の試合はやめてしまう。賞金の少ない試合にも主力選手が出られるように年間のスケジュールを選手会で調整すべきだ」と書いたことがある。これから試合を増やすにはまず地方に目を向けるべきだ。現在、男子ツアーの賞金総額は5000万円から2億円までと決まっている。しかし、今はそんなことを言っているときではない。賞金額は別として、試合が少なければ選手も育たないと、大西氏もかねてから言っていることだ。

地方へ行けば総額5000万円とか、それ以下ならスポンサーになる企業はあるはずだ。東北とか上信越とか北陸とか、地方へ行けば、プロの試合を見たいというファンは必ずいる。盛岡では岩手オープンという試合を何年も前からやっていて、シード選手もずいぶん出ている。これをもう少し規模を大きくしてツアー競技に昇格する手もある。仙台なら震災の復興を支援するためのチャリティートーナメントがよい。

試合前日に行われているプロアマトーナメントで、男子プロは同伴のアマチュアには見向きもしないで自分の練習をやっているということがよく問題になる。練習はその前にやっておいて、プロアマトーナメントは、アマチュアに奉仕する日と決めるべきだ。

アメリカのチャンピオンズ(シニア)ツアーはシード権を持っていない選手は週2回、プロアマトーナメントに出なければならないことになっている。シニアのプロアマトーナメントはアマ4人にプロが入ってやり、一緒にプレーしたアマチュアには必ずお礼の手紙を英語で書いて出すことになっている。シード権のないプロは8人のアマチュア全員にお礼を英語で書かないといけないので練習どころではないとアメリカのシニアツアーに出ていた天野勝が言っていたのを思い出す。

お客さんがいるから自分たちは生きていけるのだということをツアープロは一時も忘れてはいけない。

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1938年生まれ。岩手県陸前高田市出身。立教大卒。元日本ゴルフジャーナリスト協会会長。分かりやすいゴルフ技術論と辛口のゴルフ評論で知られる。「日本のゴルフを斬る」「シンプル思考で上手くなる」(共に日刊ゲンダイ)「菅野徳雄の言いたい放題」(月刊ゴルフマネージメント)を連載中。「トッププロのここを学べ」「ゴルフスウィングの決め手」「頭のいい男はゴルフが上手い」「即習ゴルフ上達塾」「誰も教えなかったゴルフ独習術」などの著書がある。