菅野徳雄の「日本のゴルフを斬る」 (日刊ゲンダイ 平成27年7月30日掲載) 選手会長に危機感ゼロ 大甘コースが日本人プロをダメする 内憂外患、日本の男子ツアーはついに落ちるところまで落ちたという感じだ。今年(2015年)、全米オープンには5人、全英オープンには8人の日本選手が出場し、決勝に残ったのは2試合とも松山英樹ただひとり。他の日本選手は全員予選落ちしているのだ。 しかし、日本選手がふがいないのは、世界に出て行ったときだけではない。15年の日本ツアー11試合が終わった時点で、日本人が勝ったのはわずかに4試合。 「日本のコースは30年前と変わっていないような気がする」と、藤田寛之がある新聞で言っているのを読んだ。日本のゴルフは社用ゴルフによって支えられてきたので、一般アマチュアのプレーの流れを良くするため、やさしく造られたコースが多いのは確かだ。 しかし、近年は外国の著名な設計者に依頼し、世界的にも見劣りしないタフなコースも随分できている。開催コースを決めるときは主催者任せにしないで、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が主導権を持って選ぶべきだ。その場合は、選手会からも「こんなやさしいコースでやっていたら世界から置いていかれてしまう。タフなコースで、セッティングも厳しくしてほしい」と強く言わなければならない。 ■世界のコースはどんどんタフに けれども現実はむしろ逆で、開催コースの支配人とプレーしていると、「このホールはフェアウエーをもう少し広くしてほしい」とよく言われるという話を聞いたことがある。 開催コースのメンバーがラフを伸ばすのを嫌がるという話はよく耳にするけれど、本当は逆だと言う支配人が多い。 「あまりアンダーパーが出るとやさしいコースだと思われるので、ラフを伸ばしたほうがよい」と言うメンバーのほうが、むしろ多いというのだ。 今年(15年)の全米オープンの開催コース、チェンバーズベイについては批判的な意見も多かった。しかし、世界のコースはこれからもどんどんタフになっていくのは間違いない。 それなのに日本オープンの開催コースは、時代に逆行するかのようにやさしくなっている。以前は1グリーンのコースでフェアウエーを狭くし、ラフに入れたらなかなかグリーンを狙えないようなセッティングだった。 それが3年ぐらい前から、「以前は選手をいじめるようなセッティングだった」と言って、フェアウエーを広くし、ラフを短くし、グリーンを狙えるようにしているのだ。 昨年(14)の日本オープンを通算10アンダーで優勝した選手会長の池田勇太は「フェアなセッティングだ」と喜んでいた。選手会長自らそんなことを言って楽に稼ごうとしているから、世界に出ていくと予選落ちし、国内でも日本選手は勝てなくなっているのだ。選手会長が先頭になって、世界でも通用するタフなコースで試合を開催し、厳しいセッティングにするよう主催者やJGTOに強く働きかけていかないと、日本の男子ツアーはこれからも衰退の一途をたどるだけだ。