いよいよ16日から全英オープンが始まる。ファンが期待するのは松山英樹(23)のメジャー制覇である。松山が最初の2日間に一緒に回るのが、今年のマスターズと全米オープンを連覇したジョーダン・スピース(21)と、そのスピースと全米オープンで優勝争いを演じたダスティン・ジョンソン(31)であることからも、主催者であるR&Aの松山への期待が読み取れる。
松山のツアーにおける最新のデータを見てみよう。最も注目されるのが今シーズントップ10に入った回数である。断トツのスピースの11回に次いで松山は8回と2位につけている。トップ10が多いことは、即ち優勝争いに絡む確率が高いということである。ただし、平均パット数は1.748で39位タイ。1位のスピースが1.686であるから、4日間で5打の違いが生じることになる。松山が優勝争いに絡むためには、なんとしてもパットが好調であることが必須であると考えている。
それでは私の専門分野であるスポーツ心理学の観点から松山の優勝に不可欠な心構えについて述べてみよう。スポーツ心理学の専門誌『ジャーナル・オブ・スポーツ・アンド・エクササイズ・サイコロジー』に興味ある事実が発表されている。それは、自分なりの目標を決めているスポーツ選手(例えば、フリースローを70%成功させる、1マイルを先月よりも15秒速く走る等)はただ勝つことだけを目標としている選手よりもシュートを成功させるし速く走るというのだ。あるいは、全米心理学協会のデータにおいても、「他人と競争する人間」よりも「自分の限界に挑戦する人間」のほうが優れた業績を挙げていることが証明されている。
もしも、今週の全英オープンで松山が4日間とも「パットが好調」で、「具体的な数字の入った目標を設定して他人を意識することなく自分のプレーの限界に挑戦する意識」を持ったなら、必ず優勝争いに絡んでくるはずだ。全英オープンでの松山をはじめとする日本人選手の健闘を期待したい。
(日刊ゲンダイ 平成27年7月17日付)