ジュニア教育に創意工夫を。セント・アンドリュースから学ぶこと ~秋山 真邦~ 

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21世紀を目前に控え、ゴルフ業界は未だ低迷状態が続いている。来年は日本にゴルフが伝わって100年という節目を迎える。ご存知のとおり、ゴルフ業界では一丸となって「ゴルフ100年祭」を開催することで、明るさを取り戻そうとしている。
そこで今回のフロムメンバーズボイスでは「日本ゴルフ界をさらに発展させていくには」を主たるテーマとして、会員4名に代表して助言、提言などの意見を寄せてもらった。

ジュニア教育に創意工夫を。セント・アンドリュースから学ぶこと 秋山 真邦

セント・アンドリュースのオールドコースでは、11月から3月あたりまでの冬季、フェアウェイ上は人工芝のマットを使ってショットするよう求められます。確か前回の全英オープンの頃からではなかったかと記憶するので、もう5、6年は実践しているのではないでしょうか。
プレーヤーに評判が悪いのは当然のことですが、ちょうど新芽が芽吹く時季でもあり、フェアウェイの緑を守るための止むを得ない措置ともいえます。リンクス・トラストも、冬季に訪れる熱心なプレーヤーたちの不平をおしても、オールドコースの完璧なメンテナンスを優先させているようです。
ところで、この光景を目にしたとき、本場スコットランドのコースにはまるで似合わないと思ったのと同時に、別のことに応用できないかとも考えました。例えば、ビギナーやジュニア育成に際しての利用です。
日本のゴルフクラブでも、最近はジュニア教育に熱心になりつつあり、プレーフィーを低く抑えるなどして、ジュニア向けにも解放する傾向が増えています。しかし、その場合に、クラブの担当者が憂慮することは芝の傷みのようですから、ここで人工芝マットを利用すれば、その心配は解消されるでしょう。
これはちょっとした思いつきでしかありませんが、プロのタイトル獲得を含めて欧米とのゴルフ文化の差異の大きさを感じるにつけ、ジュニア教育の大切さを痛感する次第です。とくに私は、セント・アンドリュースに何度も行っていて、人とゴルフの理想的な関係を見ているものですから、彼等のジュニア教育の違いには愕然とします。歴史が違うのは確かなのですが、その歴史をうめるためにも、ジュニア教育に限らずゴルフのいっそうの普及のためには、それなりの工夫が必要だと思います。
セント・アンドリュースでは、オールドコースを含めて5つの本格コースがあり、そのなかにはビギナー向きのコースもあるほか、ショートコースやパッティングコースまで揃っています。セント・アンドリュースに住む子供たちは、小さな頃からこれらのコースを通じて順々にゴルフに親しんでいくのです。町のすぐ脇に数多くのゴルフコースが広がるセント・アンドリュースと同等には論じられませんが、日本のクラブでもそのあたりの工夫を望みたいものです。

〈プロフィール〉秋山 真邦(あきやま まさくに)
同志社大学卒業後、秋山写真事務所を開設。1987年、企画会社(株)MCRを設立。ゴルフ雑誌の取材や内外のゴルフ場の撮影などで活躍し、写真集「栄光と歴史のセント・アンドリュース オールドコース」(小学館プロダクション)、「広野ゴルフ倶楽部」(インターステイトウィルゴルフ)などゴルフ関係の著作も多い