ポスト松山のV騒動が学連を直撃㊤

写真㊧が辞任した中島前会長。㊨は菅副会長

辞任騒動の裏に、”ユーレイ選手”の優勝劇が隠されていた。
大学ゴルフ界が大揺れだ。2月8日、都内で開かれた関東学生ゴルフ連盟の臨時理事会で、トップである中島敬夫会長と、阿部靖彦専任理事(東北福祉大ゴルフ部監督)が、任期満了を目前にしながら辞任した。

立教大学OBの中島会長は昨年、松山英樹が優勝した日本オープンの開催コース、狭山ゴルフクラブの理事長。もう一人の阿部専任理事は松山英樹が巣立った東北福祉大のゴルフ部監督。ともにゴルフ界では知らぬ人がいないほどの有名人の辞任劇。そこに隠されていたのは「ポスト松山」と呼ばれる有望選手に絡む、ルール破りのゴリ押し出場騒動があった。

事の発端は、昨年の8月12日にさかのぼる。千葉・鷹之台カンツリー倶楽部では、第64回の歴史を誇る関東学生ゴルフ選手権の最終日が行われていた。見事優勝を飾ったのが東北福祉大の小西健太。同じ大学の先輩である松山の後継者と目される大器が、実力をいかんなく発揮して優勝を飾ったわけだ。

ここまでは良かった。しかし11月になって小西の大会出場資格に関して、疑惑の目が向けられたのだ。発端は、大会の結果が報告された11月の理事会が終了した直後に、ある大学の監督が、試合前に規約上の参加人数(120人)を一時的に超えていたことに気づいたこと。その後棄権した選手が出て再び120人となったたため、ほとんどの関係者がそれ気づかないまま、競技は終了し、試合は成立していた。しかし一部の監督たちがもう一度調べ直すと、なんと優勝した小西健太が、無資格で出場していたことが判明したのだ。

同大会の出場資格は、前年度の日本学生、関東学生、朝日杯の3つで16位以内の者、前年度の文部大臣杯、会長杯の優勝者。これに加えて予選を通過した者となっている。小西は、そのいずれにもあてはまらない。この大会に関しては、出てくるハズのない「ユーレイ選手」だったのだ。それなのに優勝してしまったから、エライことになった。

優勝者にはタイトルの名誉だけでなく、他の試合の出場資格が付いてくる。3位以内の者に与えられる他の試合の出場権からも、はじき出された者がいることになる。影響は6人の選手に及んだ。

これを知った一部の監督が、中島会長に質問状を送付。中島会長からは「小西の参加資格実施規定上の参加資格はなし。会長特別推薦枠として資格を与えた」との回答が来たが、監督側は納得しない。再度質問状を送付した。その結果「関東学生ゴルフ連盟競技規定 第3章 大会及び競技会 第18条をご参照ください。」という2度目の返信が来た。
第18条、とは「競技委員長以下競技委員(当日任命された競技委員を含む)は、その競技において一切の責任と権限を有する」という一文だ。委員長を含めた競技委員はすべて連盟所属の学生だ。ある大学の監督は、こう言って怒りを爆発させる。「大会の運営は基本的に学連委員長や、競技委員長に任されています。でも阿部監督や中島会長のような権力者から『会長の特別推薦だから』と言われたら、学生は文句など言えませんよ」。複数の監督が、小西の特例参加を、大人2人がゴリ押ししたとみているのだ。
(清流舎・小川 朗)


(写真㊧が辞任した中島前会長。㊨は菅副会長)
((小川 朗・The Tokyo Chronicleより転載)=以下次号)

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当協会会長。2024年3月の改選により任期2年の3期目に入った。甲府一高→日本大学芸術学部演劇学科卒。スポーツ新聞の記者として岡本綾子や青木功が全盛の海外ゴルフツアーを特派員として7年半、300試合以上取材。1983年の全英オープンを皮切りに男女メジャー競技の取材もその1割強に上る。
「岡本綾子ゴルフのすべて」など多くの連載を取材・執筆。
運動部長、文化部長、法務広報室専門委員、広告局長、同顧問を歴任後2015年9月に退社。調査報道物を最も得意とし週刊パーゴルフで「ゴルフ場を造った男たち」、「日刊ゲンダイ」火曜日掲載の「今ゴルフ場で何が起こっているのか」などを連載。日刊ゲンダイ毎週金曜日の「ホントにゴルフは面白い!」は人気連載となり休載なしのペースで4年目に突入している。スポーツ関連の問題で東京新聞の「こちら特報部」など、マスメディアからコメントを求められることも多い。GOLF Net TV「小川朗のゴルフギョーカイ学」ではゴルフの「キホンのキ」について解説している。ノンフィクション、インタビューものにも定評があり単行本・新書版の分野でも精力的に活動。「岡本綾子のすぐにチェックしたい!ゴルフの急所」(日本経済新聞出版社)は紙面で1年にわたり連載したものに加筆・再編集したもの。「新書版ながら9刷のスマッシュヒットとなっている。「どんなクセでも自分で直せるゴルフレッスン」(星野英正)。『ゴルフは「自律神経力」で確実に10打縮まる!』(小林弘幸・横田真一)も大好評を博し「アスリートのパフォーマンス向上は腸内環境から」などのテーマで講演活動も精力的に行っている。
㈱清流舎代表取締役社長。
やまなし大使。
主な活動
「ゴルフまるごと生情報」の海外リポート、米LPGA「ファーモア・インベラリーC」(ともにテレビ東京)の解説も務めた。インターネットDAZNのゴルフ中継やラジオのコメンテーターも務めている。
法務広報室専門委員時代に日本自殺予防学会に入会、総会で「自殺とメディア」をテーマに講演。済生会病院のHPではソーシャル・インクルージョンのページで「いのちの電話」理事長や「自殺防止センター」相談員のインタビューを行っている。http://www.saiseikai.or.jp/social-inclusion/  また、スペシャルオリンピックス日本の公式ウエブサイト でも有森裕子理事長や安藤美姫らアスリートによる座談会http://www.son.or.jp/column/interview/index.html のインタビューも担当している。日本大学藝術学部文芸学科、日本ジャーナリスト専門学校などで『スポーツ新聞の作り方』をテーマに講師も務めた。ウエブメディアではe!Golfに「小川朗の現場主義!」を連載中。Yahoo!Japan公式コメンテーターも務めている。終活分野にも詳しく、終活カウンセラー協会の認定終活講師として検定や勉強会に定期的に登壇。「みんなの介護」の「介護の教科書」における連載も54回を数えている。https://www.minnanokaigo.com/author/akiraogawa/ 清流舎代表取締役 The Tokyo Chronicle 編集長。https://www.tokyochronicle.net/