1グリーンと2グリーンではレイアウト、コースデザインが全く異なってしまう ゴルフコース設計家 ~菅原 栄二~

ゴルフコースは本来1グリーンのものである。設計上からいっても2グリーンではどうしても戦略上、無理が出てくる。ゴルフ規則25条第3項「目的外のグリーン」の文言などは一つのホールにグリーンが二つある場合を想定してはいないように思う。わが国のコースをプレーした外国人ゴルファーの中には2グリーンを見て、「これはゴルフコースではない」と酷評した人さえいるぐらいだ。
日本の夏は気温も湿度も高いのでベントグラスは仮眠してしまい、高麗グリーンでは冬は葉が枯れて良いコンディションが望めないのでベントグリーンを設けたのか、要するに夏用と冬用の2グリーンを造るようになったのである。
1グリーンで高麗芝とベントグラスの 張り合わせ のものもあったが、一つの大きな円形に近いグリーンでは大体奥の方はベントで比較的狭く、手前は高麗で広くしているところが多いようである。これだとプレー上距離感もつかみにくく、カップを狙うのに異なった芝の面をパットするので好ましくない。メンテナンス面でも、ベントを使用している時期に手前の高麗に目土が入れてあるときなどは ピッチエンドラン タイプのプレーヤーには酷である。

2グリーン、高麗グリーンは日本特有のものであり、他国ではまず見ることができない。昭和30年代の日本の各コースでは本グリーンをベントグラスにする例が多くなった。パッティング面はベントグラスの方が優れている。
グリーンの広さはそのホールの距離、主にアプローチショットの距離と種類によって決めてある。横幅を決め、相応する奥行きを決めることにより、前後、左右の傾斜を通常10パーセントぐらい、奥へ傾いている場合でも5パーセントほどにとどめるのが普通である。
何ホールかに傾斜合成として帯状の線、または点線を導入する場合もある。受けグリーンでは、冬のグリーンなどでは不当に3パットを招く結果となるので受けすぎないようにしてある。
現在、主流となっているベントグラスのグリーンは1980年代より盛んになり、新種が輸入できたことや日本の風土に合うように改良され、排水完備等により芝管理ができるようになったからである。
1グリーンと2グリーンとでは、レイアウトもコースデザインも違ってくる。実施設計上では丘陵だと土量の移動量によってコース全体のレイアウトが決定されるが、1グリーンの場合はティグラウンドを決定してからそのホールの距離を割り出し、プレーゾーンであるフェアウエイの幅、ペナルティゾーンのラフ及びバンカーの配置が決めてある。
ペナルティゾーンは必ずしも平坦地ではなく、小さなマウンドや傾斜がある。これらは隠れたハザードとして一打目の落下地点周辺に用意されているのが一般的だ。二打、三打目からのグリーン狙いはグリーン周辺とグリーンの形状と傾斜度を大まかに確認しておくこと。グリーン後方に法面があれば地山にグリーンが設置されているので、グリーン面は受けている場合が多く、グリーン奥は排水個所が三方向に系流され、複雑な傾斜面になっているので奥には外さないこと。
1グリーンは全体的に先細り気味で景観でカバーされているので惑わされないこと。グリーンへの落下地点は原則的にピン手前で左右にブレてもピンより奥には落とさないようにする。2グリーンはどうしても先太りになり、高麗とベントグリーンでは構造が違うので、両面のレベルが違う場合でもグリーンの間にバンカーは造らないのが普通である。

〈プロフィール〉
菅原 栄二(すがわら えいじ)
1935年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。65年からゴルフコース実施設計、開発許認可業務に専念。浅見緑蔵に師事。ゴルフ場コースマネジメントの執筆。ゴルフ関連の著作あり。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。