今年も中盤を過ぎ、ゴルフのメジャーイベントも3つが終わった今、確かな足取りで世界のゴルフ界が変化しつつあるのを感じる。
ゴルフ先進国の米英ゴルフ団体USGA、R&Aがリーダーシップをとり世界のゴルフ界がゴルフの基本概念をも見直しながら、ゴルフというスポーツの大衆化を図ろうとしている試みが随所にみえる。例えば男子専用クラブの撤廃や、9ホールゴルフ普及作戦、楽しいゴルフの普及運動などは、プロスポーツとしてのアスリートゴルフ隆盛の一方で、地道な大衆化努力により、他のレジャーやスポーツに奪われたゴルフ人口を取り戻そうとする動きが感じられる。
そういえば両協会共にトップが五十代の会長へ交替、新しい感覚で舵を取っていこうとする心構えが感じられる。世界のゴルフを管轄する両協会の変化は、必ずや近い将来、世界のゴルフ界を変えていくのだろうと言う期待を抱かせてくれる。
その証拠に、今年両協会が主催したメジャー競技、全米オープン、全英オープンでは、そのギャラリーサービスとして、会場でのモバイル器機持ち込み使用(画像撮影を除く)が許可されたし、会場やテレビ中継を通じて、新しいゴルフを世に知らしめていくための工夫が凝らされていたようだ。
その一方では国内ゴルフ界全体をリードすべき組織はどうなるのかが懸念される。確かに7月1日付けでJGAの新しい役員人事が発表されスタートしているが、役員の年齢だけ見ると決して若返りとは言えない過去をそのまま踏襲したような陣容で、これで改革がすすむのだろうかといささかの心配を感じてしまう。この陣容で如何に過去の陋習から脱却し、新しく生まれ変わりつつある世界ゴルフ界の秩序や標準に対応していけるかは、一重に日本ゴルフ界現場で働く若い構成員や業界人達の改善意欲や提案能力、実行力にかかっていると言っても過言ではないだろう。
それはこれまでのように根本的な改革意欲に乏しい保守的リーダーに黙々と従うのではなく、新たな若い情報収集力と企画力、実行力を駆使して現場から改革の波を起こしていくしかないだろう。
多くの若いゴルフ業界人が肌で感じていると思うが、今年のゴルフ界はかなりのスピードで改革が進んでいるようだ。恐らく今年のゴルフシーズンが終わった頃には、世界ゴルフ界の各所に昨年までとは違った多くの変化がみられることになるだろう。その時、国内のゴルフ界が同時に変化を果たしているか、それとも世界標準に立ち後れたガラパゴス状態になっているかは、これからの進め方にかかっているということを、特に若い業界人に認識して欲しいと痛切に感じている。
河北俊正
(月刊スポーツ用品ジャーナル誌 2015年8月号連載記事「ゴルフビジネスのインサイドを読む」より)