ジュニアゴルファーの人口が減少している。ジュニア競技に参加する選手も同様に減少傾向にある。
一方、畑岡奈紗さんの日本女子オープン優勝が示すように近年トップジュニアの技能レベル向上は著しい。プロを凌駕する畑岡さんは突然出現したわけではない。全日本クラスのトップジュニアアスリートには彼女に匹敵する技術を備え、プロトーナメントで活躍できる子が目白押しだ。
通常、若い世代の選手が活躍するほどに子供達は憧れを抱き、そのスポーツのジュニア・キッズ人口は増加するものだ。
この国のゴルフがその例に即していないのは何故だろうか。
学校で人気を集めるスポーツは、サッカー、バスケットボール、野球等々。いずれもクラスメートの選手が活躍する試合を応援・観戦する機会を持つ。
甲子園を例にあげるまでもなく、大きな試合においては学校全体で大挙応援に出かける。
クラスメートが懸命に頑張る姿を見て感動し共感を覚える。その時々の結果に関わらず選手が学校の人気者になるのは当然だ。
その点、ゴルフは残念ながら全国大会といえども生徒たちが多数応援に駆けつける事はない。
クラスメートは我が校の代表選手の県大会等での結果を後から知らされるのみ。
畑岡さんのように、よほどの結果を残さない限り「あの子は随分ゴルフがうまいらしい」という認識を持つ程度だ。
勝負の結果に関わらず、仲間が懸命に頑張る姿を直接見る事で子供達の心は動かされる。
スポーツは観る者に憧れを抱かせる。自分もやってみたいという欲求が生まれる。応援する気持ちはやがて練習風景を見守るだけでも充実感を覚え始めるようになる。
私はいま、毎週土曜日に大相模C,Cで開催される「ザ・ファースト・ティ・ジャパン(TFTJ)」のジュニア向けプログラムにアシスタントコーチとして参加している。
既にご存知の方もおられると思うがTFTは米国フロリダにある「世界ゴルフ殿堂」に本拠を置く非営利団体であり、その日本事務局にあたるTFTJは、子供達にゴルフを通じてライフスキルや人生の価値を教えることを目標に活動している。
http://www.thefirstteejapan.org/
そのプログラムの中に「ラップアップ」と呼ぶ自由形式で発言する時間がある。
ラウンド前に、子供たちに今日のテーマを与えておき、ラウンド終了後のミーティングでそのテーマを果たせたか(成功したか)を聞くプログラムだ。
テーマは「正直」であったり「フェアな精神」であったり「忍耐」であったり。スコアは結果として受け入れ、しかしその結果を生むまでの過程を改めて聞き、互いに評価する。
当然ながらスポーツの技能には差があるものだ。その差異はけして小さくない。
才能に恵まれた者もいれば、必ずしもそうではない子がいる。どんな事柄にもあるものだ。それは明白だ。
しかし、ゴルフという審判がいないスポーツにおいて、プレーヤー個々が予め自分に課したテーマを貫徹できたか、または足りなかったかを、プレー終了後において自身に問いかける時間を持つことは極めて重要だ。
そのことに恥かしながら、私はいま気付かされている。
小学校低学年生は、最初はラップアップにおいて上手に自分を表現できない。むしろみんなの前で話すことを苦手としている。
だが、何度かその時間を経験するうち今日のラウンドで何があったか、何にくじけてしまったのか、くじけないように自分ではどう頑張っていたか。そんなことを小さな声で話しだすようになる。そこではスコア結果の上下関係は小さくなっている。
スポーツにおいての目標を各プレーヤーそれぞれが立て、結果を自身で評価する。
ゴルフという個人種目、かつ審判が自分であるという特殊性がなせる事かとも思う。
スコア、勝負の結果もさることながら、それぞれが今日の自分に課した目標に向かってどれくらい頑張れたかを自分で評価して発表する。それはジュニアプレーヤーが日常の輝きを増す事にどれくらい役立つだろうか。
彼らが学校で、クラスで、人気者になることを希望する。
彼らに共鳴した子達が、ゴルフもやってみようという気持ちを持ってくれる。