2020年JGJA大賞 アース製薬株式会社・大塚達也会長インタビュー③

2020年日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)大賞に、コロナ禍の中で女子ツアー「開幕戦」としてアース・モンダミンカップを開催したアース製薬株式会社・大塚達也会長を選出した。JGJA会長小川朗との話は、ゴルフ界の今後、ジャーナリストへの要望など多岐にわたった。

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大会開催へ経営者としての決断

小川 いくつかのツアー主催者は会長とのお考えが似ていますか

大塚会長 ニトリさん(ニトリレディース開催)も女子プロのことを考えて勇気を持って開催を決断されましたし、カストロール(ステップアップツアー、カストロールレディース開催)も延期に延期を重ねてやった。

どうしても開催したいという思いがあれば、どこかのタイミングで開催できたはずですよね。それをやめたといって復活しない。状況が変わってくれば、ゴルフの大会の準備は1カ月もあればできますから、いったん中止といったけど安全に開催できそうというのが分かったし、やっぱりやります、と言っても誰も非難しないと思う。

個人的な意見ですけれども、経営者の立場であれば、いったんやめて、経費が浮くと、売上が減っているし補填できたらいいな、こういう社会情勢だから中止にしても非難されないし、という部分も多少はあった会社もあるのではと思います。

私だってそういう選択をしたかもしれないので、決して気持ちが分からない訳ではない。いろいろな考え方があってしかるべきだと思います。

その中でトーナメントを開催された方はやっぱり立派だと思います。ゴルフ界に貢献したいという気持ちがあるんだなと。

大会に6億~8億円ぐらいかかるんですけど、それを出さなくていいというと、配当も上げられるし、株主総会を考えると良い面もあると思いますね。

新たな主催者の参入をしやすくする

小川 プロゴルフの世界をご覧になってどういう感想をお持ちですか

大塚会長 光と影みたいな感じで、ブラックボックスみたいなところがだんだん見えてきました。いろんな利害関係が交錯していて、ダークな部分が見えてきた。明朗会計で、きちんとした形でトーナメントをやって、新たなスポンサーが参入しやすい大会を用意していく、道筋をつけていくことが必要かと思います。

小川 大事なことですね。これからツアーが発展するには今の状態が変だなと思っている方もいるでしょうし

大塚会長 (日本ゴルフツアー機構JGTOの)青木会長と話をしたことがあったんですが、青木会長は非常にゴルフ界の発展を考えていらっしゃいます。元々ゴルファーなのでビジネス的な考え方や方針等の構築が難しい部分はあると思うんです。

横できちんとサポートする人がいれば、青木会長自身が決して私利私欲で動く方ではないのははっきり分かったので、脇を固める方がしっかりサポートしてあげれば、すごく良い形で発展していくのではと思います。

選手育成システムに放映権料利用も一案

小川 男子ツアーも大事で、相乗効果も必要です

大塚会長 男子ツアーは女子ツアーに比べて低迷していますが、男子プロこそ米ツアーに匹敵するぐらい盛り上がっていくべきですよね。

どうしてできないのかと、私が最近思っていることは第2の松山英樹、石川遼のようなスターを協会が育てるというふうにしないといけないんじゃないかということです。

いまは大きく育った選手をポンとつっているだけですよね。待っているというやり方。協会が選手を育成する、世界に通用するトーナメントプロを育成する仕組みを作っていかないと、日本のゴルフ界は盛り上がっていかない。海外で活躍する、世界的に注目される選手が出るスポーツはすごく人気が出ます。ラグビーワールドカップはその典型ですよね。

ゴルフ界は松山選手に続く選手がほとんどいない。松山君のような選手が5人いたら全く違うと思うんです。女子は韓国の選手が世界ランクに10人中5人、6人といる。その後にもたくさんいます。

話をしていくと、韓国の女性は根性があるんじゃないかとか、親が一家で支えていくから1人で家族を支えないといけないという追い詰められた中で頑張っているからうまくなるんだとか、親が子供のために海外に移住して育てるとか、根性論がどちらかというと多い。

小川 韓国にはジュニアの育成システムがあって、グループが3つぐらいあって激しく入れ替わっていくから強くなるんだと。そのシステムは日本にはありません

大塚会長 いい先生をつけて体のメンテナンスをしっかりして、指導者も必要で、練習する環境を整える。そこに費用がいる。それを放映権料で賄いたいと、JLP GAが放映権料のことを言う大きな理由ではあります。

韓国より日本は人口が2.5倍ぐらいいるわけですから、世界ランキングにもっと多くの日本人選手が名を連ねるような協会にすべき。韓国のKGAですか、アマチュアの強化費はけた違いに違うけど、そんなに収入を得ているかというとそうでもない。結局、管轄する団体が本気になっているかどうかですよね。JGA(日本ゴルフ協会)が集めたお金はどのように使われているのでしょう。

小川 そこですよね。振興金というのもあります

大塚会長 JGAの傘下ではないのでしょうけど、各県ごとに大義面分をつけて一般ゴルファーから50円とか100円とか取って、そのお金はどこに使われているかというと、誰も答えられない。そういうのをマスコミが正していくというか、提案するというか、自浄努力が働くようにしないといけないと思います

小川 我々がちゃんと仕事をしないといけないですね

大塚会長 そうですね、というと怒られますけど(笑い)。テレビ局に忖度をするとか、大手新聞社の忖度で動くような形になってほしくないですね。マスコミの方々には気概を持って、正しい形になるようにしてあげよう、誰かが割を食うようなことがないように、みんながちゃんとした権利を主張できるような社会になるように意見を述べてほしいなと思います。

興業収入が入らないいびつさの解消

小川 子供たちが早い段階でゴルフの楽しさに気づいてくれるのが一番なのですが、今は野球とかサッカーとか、なかなかゴルフに来てくれません

大塚会長 育成システムがないですから、日本の場合は親が負担する、すべて面倒を見る。それだけで食べて行けるかというと難しい。どんなスポーツもそうなんですけど、その中でも恵まれていないスポーツの1つだと思います。

小川 格差がある中でお金のない家庭ではなかなかゴルフができないというのがよくない

大塚会長 プロになっても入会金払って、年会費払って、払うだけで終わって生活費、コーチ代も親が払っている。協会はティーチングプロも抱えているので、ティーチングプロに職を与えるぐらいの感覚で、新人プロを世界に通用するプロに仕立てて見ろと、協会がお金を出す。新人プロも自分でコーチ料を払わなくても指導を受けられて、世界に羽ばたけるかもしれないという夢を描ける。

日々の生活をどうしようかという必要もなく、ゴルフに没頭できる環境を作ってあげるのも重要。そのためにはお金が必要なんですよね。

協会(の収入)は、主催者の公認料と会員の会費、QTやプロテストの受験料とか、ゴルファーからしか取っていないというのはいびつです。入場料とか放映権料とか、興行収入を全く得ていない。劇団員を抱えているのに、劇団員から参加費を取ってお客さんから取らないというのと一緒ですよ。

小川 エンターテインメントビジネスとして成り立ちがおかしなことになっている。その中に一石を投じられた。コロナ禍で今、ゴルフを始める若者が増えています

大塚会長 すそ野が広がることや、自分でも楽しむというのはゴルフの理解に深みが出てくるのでいいと思いますね。

野球にはボールパークがあるので、我々はゴルフパーク、家族連れで来てくれて楽しい雰囲気がいい、また来たいと思ってくれるようなトーナメントにしようと考えているんです。ゴルフをやらない方はあんなに広い芝生のスペースがあることを知らない方も多い。ふかふかの芝生の上を歩く気持ちよさにも感動を覚えますし、皆さんに分かっていただきたいなと思っています。

小川 コロナのワクチンを打てるようになって、外に出られるようになったらですが、今後のゴルフ界との関わりは

大塚会長 トーナメントは出来る限り続けたいと思っています。また、ゴルフトーナメントを新たにやりたい人が参入障壁なく、みんなが手を上げてくれるような、それぐらいの費用しかかからないならうちもやりたいといえるようになってほしいです。

最低3億円とか言われたら役員会にかける時に勇気がいりますけど、賞金だけ出せばよくて、余分な費用はいらないという形でできるようになれば、私の経営者仲間でも手を上げてくれる方もいる。明朗会計になっていないのがネックで、いかにトーナメント参入障壁を下げるかということをやっていきたいですね。

小川 ゴルフジャーナリズムへひとことお願いします

大塚会長 テレビ局とか新聞社への忖度ではなく、自由な発想で筆を振るってほしいなと。人間として、人として、あるべき形はどういうものなのか、考えてほしい。ゴルファーもテレビ局も大切ですから、みんなウインウインになるような形にしてほしいです。

小川 本日はありがとうございました。

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既得権はどこの世界にもつきものだが、第三者としてゴルフ界に入るとゴルフ界だけで通用している「不思議」なことも多い。「私の目の黒いうちには変わらないだろうなと思いながら、好き放題話したんですけどね」と最後に笑ったが、ジャーナリズム、メディアを含めて、ゴルフ界の将来を思っての大塚会長の言葉、提案に耳を傾けなければならない。

(構成・JGJA赤坂厚)

 

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ABOUTこの記事をかいた人

赤坂厚

1959年北海道札幌市生まれ。札幌南高―北海道大学工学部卒。82年日刊スポーツ新聞社入社。同年から計7シーズン、ゴルフを取材した。プロ野球巨人、冬季・夏季五輪、大相撲なども担当。2012年、日刊スポーツ新聞社を退職、フリーに。
著書に「ゴルフが消える日」(中公新書ラクレ)、「ビジネス教養としてのゴルフ」(共同執筆、KADOKAWA)
日本プロゴルフ協会、日本プロゴルフ殿堂、国際ジュニアゴルフ育成協会のオフィシャルライターでHPなどに執筆。「行ってみました世界遺産」(https://世界遺産行こう.com/ )「ゴルフ上達への18ホール」( https://www.golflesson90.com/)を公開中。
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