2020年JGJA大賞 アース製薬株式会社・大塚達也会長インタビュー②

2020年日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)大賞に、コロナ禍の中で女子ツアー「開幕戦」としてアース・モンダミンカップを開催したアース製薬株式会社・大塚達也会長を選出した。大会では、従来のテレビ中継ではなく、5日間にわたってYouTubeを利用したネット生中継を実施。画期的な試みが成功を収めた経緯などを、JGJA会長小川朗が聞いた。

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インターネット中継に踏み切った理由は

小川 アース・モンダミンカップは出張中で新幹線の中で見ていました。いろいろなところで、仕事をしていたり、休憩の合間に見られたり、インターネット中継いいじゃないかというのを耳にしました。ファンの方が知ったという点で新境地になった。配信も1つの決断でしたか

大塚会長 トーナメントを始めたときに、大会開催とテレビ中継がワンセットで、テレビが欠けると公認してもらえないというように聞かされていました。JLPGAがテレビ局から何らかのメリットを得ているから、セット販売のようにやるのかなと勝手に想像していました。

主催者にとってはテレビ放映料というのは非常に大きな負担になってくる。我々としては生で4日間放映したいという気持ちでやっていたのですが、公認を維持するには番組枠を買い切ることで多大な費用が発生するがしようがないと思ってやっていた。

そのうちにJLPGAがテレビ放映権料を取るのではなく、義務付けているわけではないということが判明して。いろいろな人の思惑とか、それまでの慣習もあり、私のところに間違って伝わってきたんだなと思いました。小林会長と放映権について話をしていくうちに、そういうことがだんだんと分かってきたのです。

テレビ費用に関しては、枠は定価で買い、製作費も我々が負担するんですね。それであれば、テレビ局は儲かる仕組みがあるので、一部JLPGAに還元しても罰が当たらないんじゃないですかと思う訳です。

(テレビ局は)昔から、儲からない時から、JLPGAのために放送してあげて、今の女子プロの人気がある。育てた恩を今返してもらっているというようなスタンスが長きにわたって続いていますので、それはおかしいなと。儲かったらお裾分けというか、みんながウインウインの関係になっていくべきじゃないかなと思います。

うちの商売のやり方は、基本的にメーカーも儲かるけど、小売店も儲かる、消費者も喜ぶ、みんながそれぞれ喜んでくれないと長く続けることはできないという考え方で拡大してきたところがあります。ゴルフ界はテレビ局と代理店だけが儲かって、あとは大変だなと感じました。

費用も主催者負担だけですし、選手も賞金を獲得できるだけで、JLPGAは肖像権等の権利を持ちながら収益を得られていないというのはいびつな関係で、世界中のスポーツイベント、競技を見ていても、ここまで搾取されている協会はないぞと感じました。

もう少しJLPGAに還元したらという問題提起をしたんです。それで、テレビ局から放送協力金をお支払いしますということになり、それならいいんじゃないか、と。

ある時、JLPGAから放送協力金の話があって、小林(浩美)会長にテレビ局から放送協力金は入っているでしょうと聞いたら、いただいていませんと。小林会長が調べてみると、放送協力金という名目はあるんですけど、代理店から払われていて、テレビ局からは払われていない。

テレビ局の方があいさつに来ますが、放送協力金を出していただいてありがとうございますといっても、だれも何も言わなかったんですよね。当然払ってくれているものと思っていたのですが、2,3年ちょっとだまされたんですかね(笑い)。

事務局が言ったのか、(自分が)誤解して解釈したのか、そこはよく分からないので、深く追及するつもりもないんですけど、それだったら違うよなと。テレビ局が払うべきだし、テレビ局とJLPGAで取引があるべきだと思うので、ちょっと考えているものと違うなあということで、テレビ放映なしでいこうかと。

今年はYouTubeでやりましたけど、もともとネット中継だけでいいと思っていましたので、テレビ中継は丁重にお断りをして、予定通りネットに流したということです。

小川 テレビ放映とインターネット中継の経費はどれぐらい違いますか

大塚会長 安いです。4チャンネルやっても半分ぐらい。中継時間も長いです。視聴者の数もはっきりしますし、どんな方がご覧になっているとか、データが取れます。

元々商売気を出してやっているわけではなくて、社会貢献としてやっていますので、コマーシャルを入れるつもりもなければ、ゴルフ界の発展のためにそういうことができるか、試験的にやったことでもあります。

放映権問題にも一石を投じる

小川 トーナメントの成り立ちを見ていると、リスクを背負うのは全部主催者、放映料も全部面倒を見るのは悪い点でもあります。丸儲け的な、テレビも代理店も儲かって、全部主催者が負担するのはおかしいという考え方はあったんですけど、なかなか。メディアもグループがありますから、厳しく批判できる関係にならない。ジャーナリズムがなかなか機能しないというのは、忖度したり、代理店からは広告のこともあるので、力関係が働いてずるずると続いてきました。ツアーの健全な発展を考えると全く会長のおっしゃる通りなんですが、誰もやれなかったんですね

大塚会長 なかなか既得権は手放せないですし、損はしたくないというのは分かります。本来もらうべき人が声を上げないといけなかった。

JLPGAは小林会長が放映権料いただけますかとテレビ局に申し入れたことは決して間違ったことではないと思います。テレビ局の方々は目くじら立てることなのかなと不思議に思いました。

自分の会社が損をするような、経費が増えるようなことには絶対OKとはいわないし、他のテレビ局とのバランスもあるでしょうから、テレビ局自身が自ら踏み出すのはなかなか難しい。

現場の方も、会長や社長がいっているから、気持ちは分かるんだけど無理だなあと言っている。今まで育ててやったのに、今さら人の懐に手を伸ばしていいのか、恩を忘れたのかという。でもそれはあなたじゃなくて、先々代の社長だったりするでしょう。

テレビ局の批判をしている訳ではないんです。時代時代に応じた違う考えがあるんじゃないかと思うんですが、出来上がっている仕組みを変えるのはなかなか難しい。

小川 ゴルフトーナメント振興協会(GTPA=トーナメント主催者で構成される)の空気はどうでしたか

大塚会長 JLPGAは基本的に…非常に…言い方というか、申し出の方法が失礼だと、突然文書だけで一方的な要求だと受け止められていて、それに対しては抵抗しようという感じだったと思います。

主催者といってもテレビ局が多いですし、実際に主催者も担当者しか出てこないところもあるので、主体性をもってトーナメントを変えていこうとか、トーナメントにかかる経費を抑えようとかいう感じではなくて、オーナーがOKだからいいじゃないという感じなんですね。今のままで差し障りなくやっているからという感じでしたね。

表向きはJLPGAとミーティングを何回やったといいますが、深く本質をついた議論がなされたかというと、小林会長が言うだけで、実際に折衝に来ないと。でも、テレビ局で門前払いされているし、社長に会って直談判できるのかというとそういう場を設けている訳ではない。

小川 小林会長が説明責任を果たしていないという声が出ていましたが、小林会長ではなくていいですけど、JLPGAの意向を主催者に持って行って放映権料を取りたい、選手たちに還元したいといえばよかった。そこがどうもぎくしゃくしています

大塚会長 そこは(テレビ局側が)したくないという態度ですね。それだけテレビ局が主導権を取っているのであれば「小林さん、悩みあるんなら相談においで、聞いてあげる」というところが、来ないから会わないというのはいかがなものかと。全く上から目線ですよね。最初から相手にしたくないと。

小川 それは議論になっていませんね。

(つづく)

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YouTubeでの大会全期間のインターネット生中継は、ゴルフ業界でも評判になった。トーナメント開催を「社会貢献」と位置付け、放映権料の問題にも大塚会長のように、冷静に、公平な目で見ることが、コロナ禍も含めた転換期のゴルフ界に必要なのだろう。大塚会長が言う「ウインウイン」の関係を見つけ出す努力が、ゴルフ界の将来につながっていく。

(構成・JGJA赤坂厚)

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ABOUTこの記事をかいた人

赤坂厚

1959年北海道札幌市生まれ。札幌南高―北海道大学工学部卒。82年日刊スポーツ新聞社入社。同年から計7シーズン、ゴルフを取材した。プロ野球巨人、冬季・夏季五輪、大相撲なども担当。2012年、日刊スポーツ新聞社を退職、フリーに。
著書に「ゴルフが消える日」(中公新書ラクレ)、「ビジネス教養としてのゴルフ」(共同執筆、KADOKAWA)
日本プロゴルフ協会、日本プロゴルフ殿堂、国際ジュニアゴルフ育成協会のオフィシャルライターでHPなどに執筆。「行ってみました世界遺産」(https://世界遺産行こう.com/ )「ゴルフ上達への18ホール」( https://www.golflesson90.com/)を公開中。
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