運動&スポーツ情報サイト「Citta」からの質問!「メンタルトレーニングの方法」

運動・スポーツ情報サイト「Citta(チッタ)」から、日本ゴルフジャーナリスト協会理事でゴルフハウス湘南代表の小森さんへ、ゴルフについて気になるアレコレを質問する企画の第4弾です。今回は、「メンタルトレーニングの方法」について伺っていきます。

【Citta】では早速、小森さんにお話を伺っていきましょう。小森さんよろしくお願いいたします!

【小森】よろしくお願いします。

ゴルフの上達には“心技体”を「三位一体」で向上

【Citta】早速ですが、以前に掲載のコラムの中で、ゴルフの上達には“心技体”を「三位一体」で向上させる必要性についてお話いただいた事がありましたよね!
https://citta-town.com/column/post/404

その中でも“心(メンタル)”は、安定したパフォーマンスを維持する脳力を発揮する為に重要であると教えていただきました。小森さんから見て、やはりプロゴルファーの方々は、“心(メンタル力)”に優れている方々ばかりでしょうか。また、どういった点が優れていると思われますか?

【小森】はやりプロですから、一般ゴルファーと比べて「体心技」は共に優れています。その中で、同じプロでもトーナメントで活躍できるプロと、そうではないプロ(その方が圧倒的に多い)の差は心(メンタル)だと思います。
体と技、そして心の関係は、携帯電話で考えると分かりやすいと思います。

体は携帯電話の本体そのもの、技はアプリ、そして心はアンテナです。最新で高機能のスマホを使い、便利なアプリを沢山インストールしていても、電波の届かない山奥などでアンテナが一本も立っていなかったり、圏外だったりしたら、通話もメールもできません。携帯電話の機能そのものは、全く変わっていないにもかかわらず、アンテナ(心)が立っていなければ、その性能を発揮することができないわけです。
それと同じで、その人が持っている能力(体と技)そのものは変わっていないのに、心が良い状態を保てていないと、その能力を発揮できなくなってしまいます。

しかし心が良い状態で、その人が持っている能力を最大限に発揮できたとしても、能力以上のパフォーマンスを望むことは出来ません。古いスマホと最新のスマホでは、その性能に差があります。また同じ年式のスマホでも、金額に比例して性能も上がるでしょう。心がどんなに良い状態でも、古い機種や低機能のスマホが、最新で高機能のスマホの性能を上回ることはありません。
バンカーからボールを打つ技術を持たない初心者が、心の状態が良好だからといってバンカーから打てるという事はないのです。たまたま当たったという事はあるかも知れませんが・・(笑)

よってゴルフのパフォーマンスは、体(フィジカル)を強化し、技(スイング)を習得し、心(メンタル)を整える三位一体が必要なわけです。ゴルフに限らず、何においてもそれは言えると思います。

前置きが長くなりましたが、プロとアマの違いは、フィジカルの強さとゴルフの技術力との差といえ、トッププロとそうではないプロとの差は、メンタル力だと思います。

脳科学の進歩がメンタル力の強化につながる

【Citta】プロゴルファーの方々はどういった環境でメンタルトレーニングをされているのでしょうか?

【小森】メンタルトレーナーがツアーに帯同し、常にメンタルトレーニングに取り組んでいるプロは、トーナメントで活躍しているトップ中のトップでもほんの一握りだと思います。それなりに費用もかかりますから・・
しかし、メンタルトレーナーの門を叩いたり、セミナーを受講したりしてメンタルトレーニングを学び、取り組むプロ、もしくは研修生(プロの卵)は少なくないと思います。

メンタルトレーニングといえるかどうか分かりませんが、“常にポジティブに考えよう”、“ミスしても直ぐに忘れよう”といったメンタルを良い状態に持っていく考え方を心がける選手は、プロアマ問わず多いのではないでしょうか。

【Citta】日本の選手と海外の選手で“心(メンタル力)”の違い・差は感じられますか?

【小森】かつては感じましたが、今はそうは感じなくなりました。これはゴルフに限らず、多くの競技においてそうだと思います。オリンピックなど世界的大舞台でのメダル獲得数が増えているのが、それを物語っています。

かつての選手は、世界のひのき舞台に立つことが、イコール「日の丸を背負うこと」と重く捉え、重圧に潰されてしまうケースが多々見られましたが、今は「国を背負う」といった考え方ではなく、あくまで「自分のため」、個人の名誉、自分の夢や目標のためと、フランクに考える選手が増え、それがメンタルにも良い影響を与えているように思います。

【Citta】日本のゴルフ界では、“心”は重要とされているのでしょうか?また、これまでどのような発展を遂げてきたのでしょうか?

【小森】ゴルフ界に限った話ではありませんが、心の重要性はかなり以前から認識されていたと思います。しかし、それを科学的に語られるようになったのは最近です。それは脳科学の進歩が背景にあると思います。

かつては心、イコール精神論で、精神修行と称して滝にうたれて精神を鍛えるといった、非科学的な行動も見られましたが、それは少なくなったと思います。
心は脳の働きですから、脳科学が進歩し、脳に関する様々なことが解明されてきたことは、メンタル力の強化にプラスになっていると思います。

何も考えないからナイスショット

【Citta】小森さんがラウンドされる際に意識されている“心”の部分を教えてください。

【小森】これはゴルフスクールのお客様にもお伝えしていることですが、あれこれ考えないことです。(笑)
例えば谷越えや池越えのシーン。誰もが谷や池には落としたくはないのですが、それを過剰に意識すると失敗します。例えば「池越えだ!しっかり飛ばさなきゃ」とか、「ダフってはいけない!ちゃんと当てなきゃ」といった思考です。このように考えると、まず間違いなく谷や池に落とします。(笑)

谷や池を越え、目標地点に運ぶには残り何ヤードか?といった情報収集や、ボールのライや風などの状況分析は必要ですが、得た情報から必要なクラブを選択し、良い結果をイメージしたら、あれこれ考えずに打つだけです。その時点では、谷や池の存在は忘れるぐらいでなければなりません。

このような考え方は、Cittaのコラム『ナイスプレーを生み出す5つのステップ④「何も考えないからナイスショット』(2023年3月29日公開)で詳しく解説していますので是非お読みください。

また「楽しむ」ことも大切です。谷や池を「イヤだなぁ」と考えたら、ミスする確率はグンと上がります。
「さぁ池越えだ!ワクワクするなぁ!」とプレッシャーを楽しみましょう。そのようなプレッシャーを楽しむのも、ゴルフの醍醐味のひとつですから。

メンタル力を高める「自己4大ツール」とは?

【Citta】最後に、誰でも実践できる!メンタルトレーニングがあれば教えてください!

【小森】ではメンタル力を高める「自己4大ツール」を紹介しましょう。4大ツールとは「言葉」「笑顔」「姿勢」、そして「思考」の4つです。この4大ツールは、人間にすでに備わっている能力ですので誰でも即実践できます。また上手に使えば意外とやさしいです。個々に解説しましょう。

◎言葉

ポジティブワードを意識的に使いましょう。ポジティブワードとは、「嬉しい」「楽しい」「幸せ」・・など、文字通りポジティブな言葉です。逆にネガティブワードが多い人はメンタル力を弱めてしまいます。ラウンド中にミスをしても、心の中で出来るだけポジティブワードをつぶやくようにしてみてください。

ここでワークです。紙に思いつくポジティブワードを出来るだけ沢山書き出してみましょう。※解答例は本コラム末尾に記載しておきます。

◎笑顔

やはり笑顔が一番です。笑顔が難しいシーンでは口角を少し上げるだけでも効果的です。笑顔によって表情筋が刺激を受け、脳にフィードバックされてポジティブな感情が生まれ、メンタル力が上がります。

また笑うと、免疫のコントロール機能を司る間脳に興奮が伝わり、情報伝達物質が分泌され、血液やリンパ液を通じて体中に流れ出します。その結果、免疫力を高めるといわれています。免疫力が高まることで、疲れにくくなり、フィジカルも強くなります。

更に、えっ?って思われるかも知れませんが、笑顔でゴルフスイングが良くなります。特にヘッドアップなどのミスが軽減できます。何故なら、笑顔によって、首を動かす胸鎖乳突筋や、肩甲骨を動かす僧帽筋といったゴルフスイングに大切な筋肉が柔軟になるからです。
このように見てみると、笑顔は心技体のすべてを向上させる最強ツールといえると思います。

◎姿勢

その場で実験をしてみてください。頭を下げ、背中を丸め、良くない姿勢をしてみてください。そしてその姿勢のまま、楽しいこと、嬉しいこと、ウキウキすることを考えてみてください。
次に下げていた頭を上げて正面を向いてください。そして背筋を伸ばし、胸を張り、堂々とした良い姿勢をしてください。この状態で、悲しいことや嫌なこと、イライラすることを考えてみてください。

いかがでしょうか?どちらも考えにくかったのではないでしょうか。そうです!良くない姿勢で、楽しい事や嬉しいことは考えにくく、一方良い姿勢で、悲しいことや嫌なことは考えにくいのです。これは思考や感情といったメンタルと姿勢が、連動していることを物語っています。

メンタル力を強化したければ、胸を張り、背筋を伸ばし、正しい姿勢を心がけましょう。姿勢の重要性に関しては、Cittaのコラム『姿勢の改善でゴルフの上達と未病の解消を』(2022年10月10日公開)をお読みください。

◎思考

思考はメンタルに直接影響を及ぼすのでとても重要です。メンタル力を強化する思考法でお伝えしたいのは、「感謝思考」と「応援思考」、「集中思考」、そして「プラス思考」の4つです。

ポジティブワードを書き出すワークで、“ありがとう”と書いた人はどれくらいいらっしゃるでしょうか?ありがとうと内言するのは「感謝思考」です。ありがとうは漢字に書くと「有り難う」です。これは有るのが難しいこと、つまり特別なことです。ゴルフが楽しめるのは、当たり前ではなく特別なこと、感謝するに値する素晴らしいことだと思えれば、脳の中にα波がでて気分がよくなり、メンタル力が向上します。

人を応援する「応援思考」もメンタル力向上には効果的です。プロ野球ファンは、好きなプロ野球チームを一所懸命に応援します。オリンピックでは、国民の多くは日本人選手を応援します。FIFAワールドカップでは、普段はサッカーを観ない人まで日本代表の試合を観て応援します。スポーツに限らず、好きなアイドル歌手やグループを応援している人は、応援するあまり、同じCDを何枚も買ったりするそうです。

人は何故、身内でもない他人を一所懸命に応援するのでしょうか。それは人を応援することでメンタルが良くなり、自分自身も元気になれるからです。

次の思考法は、今すべき事に集中する「集中思考」です。「前にこのホールのティショットでチョロしたんだよな・・」は、過去の失敗に心が捉われた状態です。「さぁ、絶好の位置からのアプローチ。ザックリしたらどうしよう・・」は、これから打つショット(未来)に対して心が揺らいだ状態です。このようなことが頭をよぎったら、まず間違いなくミスショットです。皆さんも経験があると思います。これらを解消する脳の使い方が、今に集中する思考法です。今に集中しようと考えれば、過去や未来は見えなくなります。
この「集中思考」に、成功シーンをイメージする「プラス思考」を合わせれば、メンタル力はグンと高まるでしょう。

いかがでしたでしょうか?自己4大ツールは誰にでも備わっているツールです。とはいえ、それを自分で自分の心を整えることに使うクセ付けをしておかないと、いざという時になかなか機能しないものです。このクセ付けこそがメンタルトレーニングです。

この4大ツールを上手く使えば、ゴルフに限らず仕事や日常生活においてもプラスになります。4大ツールを駆使し、メンタル力を強化してゴルフと人生を楽しんでください。

さて、先程のワークの解答例です。
皆さまは、いくつ書き出せたでしょうか?

【Citta】小森さん、ありがとうございました。


※運動&スポーツ情報サイト「Citta」(2023年12月18公開コラム)より転載
https://citta-town.com/

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ABOUTこの記事をかいた人

【略歴】
1993年 サラリーマンからゴルフインストラクターに転身。
2004年 ハル常住さんが主管するハルスポーツビレッジ認定インストラクターとして“ゴルフと
    健康との融合”をテーマに活動を始める。
2005年 「有限会社ゴルフハウス湘南」の代表取締役社長に就任。
2008年 総合コンサルティング会社「株式会社船井総合研究所」と共同で、ゴルフ練習場活性化
    プロジェクトを立ち上げる
2011年 朝日新聞グループが選定する「マイベストプロ神奈川」に認定される
2018年 神奈川県未病産業研究会に参加
2020年 「一般社団法人日本健康ゴルフ推進機構」を設立し、会長に就任する

【メディア実績】
■ゴルフクラシック誌(2008年12月号~2010年12月号)
 連載「ゴルフが変わる!ボディ・チューンナップ」全24回を執筆
■週刊ゴルフダイジェスト(2014年1月28日号)
 「ボールを打たずに上達する!凄い練習法」掲載
■ビジネス情報サイト「Biz Clip」(2015年10月~)
 連載コラム「ゴルフエッセー~耳と耳の間~」現在も執筆中
https://www.bizclip.jp/

【著書】
「仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?」(出版社:星雲社)
 https://www.publabo.co.jp/golf/