日米女子ツアーが共催したTOTOジャパンクラシック(茨城・太平洋クラブ美野里)は、アジア旋風が吹きまくって大会を盛り上げました。優勝したのは中国の強豪・フォン・シャンシャン(27)。通算13アンダーで他を圧倒し、優勝賞金22万5000ドル(2317万5000円)を獲得。先週のサイム・ダービー・マレーシア(米ツアー)に続く2週連続優勝で米ツアー6勝目、日本ツアーも6勝目。この試合、優勝から3位タイまでの6人は、中国、韓国、日本で占め、米ツアーにおけるアジア勢のパワーを見せつけました。日本勢では20歳の堀琴音が10アンダーで3位に入る健闘をみせました。
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並みいる米ツアーの強者を押しのけて、2日目「64」の猛チャージでトップに立ったシャンシャンは、最終日も他を寄せつけぬゴルフを展開しました。前半はややショットがばらついてパーが続きましたが、パー5の9番で3㍍を沈めると一気に実力をみせ始めました。10、11番と3連続バーディー。17番のパー5も2オンして楽々バーディー。3打リードで迎えた最終18番。珍しくティーショットを左の林に入れて出すだけのトラブルに見舞われました。3オンした10㍍を3パットしてダブルボギーで冷や汗をかきましたが、ご本人は「17番でリーダーボードをみて3打のリードがあったので、18番もプレッシャーは感じずにやれた。左に曲げたけど、3オンで2パットのボギーで収めればいいと、焦りはなかった」と、涼しい顔でした。
それよりも、最終組なのに前半で3人ともバーディーが取れなかったため、7番あたりにきて 「私たち3人が最終組なのにバーディーがこない。これではギャラリーに申し訳ない。もっといいプレーをしてバーディーを見せないといけない、と2人に話しかけていた」(シャンシャン)という。自らかけたハッパがきいたのか、そのあと9番から3連続バーディーがきたのだから見上げたプロ根性といえそうです。
中国広州市出身の27歳。10歳のころ父からゴルフを教わり、04、05年中国女子アマ連覇。07年には米ツアーの予選会に挑戦。アイアン1本が折れるアクシデントがありながら出場権を獲得。08年から米ツアーで戦っていますが、11年からは日本ツアーにも参戦して日米でかけもちプレーで名を売りました。12年には6月の全米女子プロでメジャー初制覇したのに続き、10月には日本女子オープン(横浜CC西)にも勝ち、同一年に日米両メジャーを獲る快挙も成し遂げました。世界各国で「フォン・シャンシャン」の名をさらに高めたのは、今年8月のリオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得したことです。
五輪の銅メダル以来、好調を続けるシャンシャンは、2週連続Vを含めて米ツアー6試合すべてトップ5入り。今回の優勝で世界ランクも8位から6位に浮上する見込みで、いまや世界のトッププレーヤーにのし上がりました。いまは中国に住まいがあり、オフには米フロリダに滞在してトレーニングを積んでいます。「優勝するためには、飛距離はパー5で2オンできる平均以上が必要。あとはアイアンの正確さ。それにガマン強さと自分に自信を持ってプレーすること」と話し「日本のコースは比較的コースが狭いし、グリーンは硬く締まっている。だからショットの精度が大事になってくるが、私は日本のコースが好きだし、自分のゴルフに合っている。この大会にはもっと強くなって来年も戻ってきたい。それと東京オリンピックでは金メダルを獲ることが目標です」。
頂点に立ったシャンシャンを追って、今回上位に入ったのは張ハナ(24)ら韓国勢と日本勢では堀琴音(20)が意地をみせました。10月の日本女子オープンでは最終日、単独首位で後半を迎えながら、高3の畑岡奈紗に優勝をさらわれて涙した琴音です。最終日は5打差の12位から出ながら、6バーディー、2ボギーの68とスコアを伸ばし、日本勢最高の3位に入って成長の跡をみせました。2日目にはシャンシャンと同組でプレーし、64を出されたプレーを目の前にしました。「アイアンがグリーンでしっかり止まる。ドライバーも振るときと振らないときを使い分けている。力の配分を変えているのなど勉強になった」と、世界ランカーの迫力のプレーを吸収した体験は貴重でした。「差を感じた」(琴音)とはいえ、世界の強豪相手に日本勢唯一のトップ10に入った実績は琴音をまた一段と大きくするでしょう。琴音は3位賞金743万円余を獲得、生涯獲得賞金を早くも1億越えを実現。20歳での1億突破は日本女子で4人目の快挙です。
米女子ツアーは現在、賞金ランキング、世界ランキングともに1位を快走するのは19歳のリディア・コ(ニュージーランド)。同2位に君臨するのは20歳のアリア・ジュタヌガーン(タイ)。今回はジュタヌガーンが10位、コは43位と優勝争いには加われませんでしたが、ドライバーはバッグから外し、がっしりとした体からパワフルなショットをみせたジュタヌガーン。今季、米ツアー初優勝から3週連続優勝。全英リコー女子オープンでは初メジャータイトルを手にした片りんは、たっぷりと見せてくれました。コも正確なアイアンショットと、″世界一の精度”といわれるパットを随所に披露していました。
さらに22歳のチョン・インジ(田仁智=韓)は9月のエビアン選手権を制覇、昨季の全米女子オープンに続くメジャー2勝目を挙げました。昨年のワールドレディスサロンパスカップと日本女子オープンも制して日本にもファンは多い選手ですが、今回は19位にとどまりました。
韓国勢の活躍に続いて、米女子ツアーには今季タイから13人が出場しています。日本からは飛ばし屋でパット数ランキングも上位にいる野村敏京(23)が、米ツアーを主戦場にしていますが、宮里藍、宮里美香、上原彩子らがやや精彩を欠いているのは寂しい日本勢です。日本国内ツアーで賞金ランキングトップを走るイ・ボミ(韓国)も今回は振るいませんでしたが、いま女子ゴルフ界の大勢は、アジアに目が注がれているのを証明したTOTOジャパンでした。
【この記事は2016-11-7 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】