ゴルフ会員権の損益通算~西村國彦~

弁護士 西村國彦

①税制改正のされ方
2004年度税制改正では、土地建物の譲渡益に対する課税税率が26%から20%に引き下げられ、景気回復に向け不動産取引の活性化を促進することになりました。ところが税収不足に悩む税務当局は、同時に、含み損をかかえながらも倒産手続をとることなく、まじめに生計を立ててきた人たちの生きる術を奪うような改悪を強行しました。しかも同年1月に遡る「後決め」というアンフェアなやり方です。即ち2004年になってから突然、居住用を除く不動産の譲渡損失が発生した場合でも、他の所得との損益通算を認めないことにしたからです。
損益通算とは、1つの所得が黒字、他の所得が赤字といった場合に、そのある所得の黒字と他の所得の赤字とを、一定の順序に従って差引計算を行うというものです。
所得が赤字の場合に損益通算の対象となる所得は不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得とされています。
不動産を売却した場合、利益あるいは損失が発生することになりますね。その場合、利益に対しては課税され、損失が発生すると減税されるのが原則です。例外的に「損益通算」と言って、「他の所得」とあわせて減税されることが認められてきました。
しかし、新税制では「他の所得」との合算が認められないので、損失が出ても税金が戻ってこないことになります。

ABOUTこの記事をかいた人

1947年生まれ。東大法学部卒。1976年弁護士登録(東京弁護士会)。
現在さくら共同法律事務所シニアパートナー。
1997年通産省会員権問題研究委員会委員。
ゴルフ場据置期間延長問題や東相模ゴルフクラブ(現上野原カントリークラブ)をはじめ南総カントリークラブ、太平洋クラブの再建など会員とゴルフ場を守るための活動を実践している。
また実際に自分の目で見てきたメジャートーナメントでの経験や、実際に自分が世界(米国・英国・アイルランド・豪州・アジア)の素晴らしいコースをプレーした経験をさまざまな形で発信しているゴルフジャーナリストでもある。掲載誌は月刊ゴルフダイジェストアルバトロス・ビューゴルフ場セミナーゴルフマネジメントゴルフィスタなど多数。
主な活動・著書
「ゴルフ学大系」のうちゴルフの法律」(1991年・ぎょうせい)
「ゴルフ場預託金問題の新理論」(共同執筆)(1998年・日本ゴルフ関連団体協議会)
「ゴルフ会員権再生の新制度」(共同執筆)(1998年・日本ゴルフ関連団体協議会)
「ゴルフ場再生への提言」(1999年・八潮出版社)
経済産業省サービス産業課「ゴルフ場事業再生に関する検討会」レクチャー(2002年)
「賢いゴルフ場 賢いゴルファーのための法戦略」(2003年・現代人文社)
「平成ゴルファーの事件簿」(2003年・現代人文社)
「ゴルフ場の法律に強くなる!」(2007年・ゴルフダイジェスト社)
「ゴルフオデッセイはにかみ弁護士の英米ゴルフ紀行」(2011年・武田ランダムハウスジャパン)
ほか、近著に太平洋クラブを舞台に会員の全面勝利を描いた
「ゴルフ場 そこは僕らの戦場だった」(2015年・ほんの木)
月刊「GEW(ゴルフ用品界)」に連載された
「ゴルフ文化産業論」(2021年・河出書房新社)がある。