「タテ社会」の日本ゴルフ 「ヨコ振り」の難しさ

このコーナーはもちろん、インターネットで使われる文章は、文字が左から右に流れる「ヨコ書き」がほとんどである。一方で、新聞や雑誌、単行本など従来の活字媒体は上から下に流れる「タテ書き」が圧倒的だ。両方が混在し、しかもそれをごく自然に受け入れている日本は、世界でも稀有(けう)な国だという。

日本はゴルフも「タテ」を重視
もとはといえば、日本は漢字やカタカナを使ったタテ書きが主流で、欧米のヨコ書きとは対照的であった。それは文章だけにとどまらず、いろんな分野に及び、「タテ社会」「タテ文化」対「ヨコ社会」「ヨコ文化」として違いを見せてきた。

よく言われるのは労働組合。日本では一企業の中に組合があるのに対し、欧米では企業横断型の、職種を核とした、例えばパイロット組合などが大きな力を持っている。あるいは、同じ城でも、日本の大名は高さを競い、ヨーロッパ貴族は横の広がりで力を誇示した。

身近な例では、包丁の使い方。日本では「トントン」タテに切るが、西欧は「ゴシゴシ」とヨコに使う。

スポーツでも見られる。日本古来の剣道が大上段から振りかぶる「面」を究極の技とするのに対し、フェンシングではサーベルを水平にして相手を突く。

ではゴルフはどうだろう。やはりある。皆さんの中には、「打ち込め」とか「ダウンブローで」などという文字やアドバイスを見聞きされた方が多いと思う。「パーシモン世代」のゴルファーはなおさらだ。

「ヨコ振り」が推奨される欧米
さらには「クラブはタテに使え」「真上からボールをつぶせ」など、より具体的に“タテ振り”をすすめることも多かった。特にアイアンショットなどでは、いかに打ち込めるかが上達のポイントとされ、手首をねんざする人まで出る始末。

ところが欧米ではウッドはもちろん、アイアンでもあまりターフは取らず、ボールを確実にとらえる払い打ち、つまり“ヨコ振り”が推奨され、プロゴルファーでもその傾向が強い。

ゴルフは、体を回転させるヨコの動きと、クラブでボールをたたくタテの動きを組み合わせて行わなければいけない、ややこしいスポーツである。しかも、ドライバーからウエッジまでクラブの長さが大きく異なるので、上半身の前傾姿勢も変わり、それにつれてスイングの角度も違ってくる。

その度合いの中で、本能的に、日本人はタテ振りに、欧米人はヨコ振りになったのかもしれない。

長尺クラブがスイング変える
ところが、長尺クラブの出現で、そんな“お話”だけではすまなくなった。かつては長さ43インチ台が主流だったドライバーが、今や46インチを超すものまで現れ、それにつれてスイングも変わらざるを得なくなったのだ。

シャフトが長くなると、同じ強さで振ればスイングの弧が長くなる分、ヘッドスピードが上がり、ボールはより遠くに飛ぶ。この時、長くなったのだからスイングはそれだけフラットになる。つまり、今までよりヨコ振りにしないと、クラブの性能をいかしきれない。

ここで、タテ社会、タテ文化に慣れ親しみ、タテ振りで育った世代は苦労する。理屈はわかっていても、体がなかなか反応してくれないのだ。その点、長尺クラブでゴルフを始めた若い世代は、いとも簡単に使いこなし、みごとなほど飛ばす。

46インチのドライバーで飛ばしたいなら、まずはヨコ書きのこのコーナーをしっかり読み、目と体を「ヨコの動き」に慣れさせるのが近道か……。

日経電子版2015年4月23日配信