弱者ゴルファーを疎外する高反発ルールへの大反論

「クラブの高反発規制はナンセンス。一般アマチュアが少しでも飛ばしたいという願望にブレーキをかけて何の得策があるというのですか。ゴルフの活性化ということを考えたらあんな馬鹿げた規制は即刻廃止すべきです」

パネラー大西久光氏が高反発規制に大反論

パネラー大西久光氏が高反発規制に大反論

7月28日都内で行われた日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)のタウンミーティングにパネラーとして呼ばれた大西久光氏がこう切って捨てた。

大西氏といえば、元日本ゴルフコース設計者協会の理事長で現ゴルフ緑化促進会理事長。
その昔は住友ゴム工業の役員を務め、その時ダンロップエンタープライズを創設。現在のプロゴルフトーナメントの仕組みを作った人物でもある。
ちなみにこのミーティングにはゴルフ業界に携わる人達や、ゴフマスコミ多数が聴衆として参加していただけに、影響力の大きい大西氏の公式発言は強烈なインパクトを残した。
このミーティングが開かれた約1週間後の8月5日には、日本を代表するクラブメーカーの一つ、横浜ゴムがプロギアブランドの「egg(エッグ)」のニューモデル2タイプの発表を行い、何とそのうちの一つを高反発として堂々と披露した。

「ルールは承知しています。でもゴルフを楽しむエンジョイゴルファーの飛ばしたいという要望に応えるのもメーカーとしての役目。ルール適合品と適合外の2タイプを用意し、後はゴルファーの選択におまかせするだけです」(横浜ゴム常務取締役兼プロギア代表取締役森田史夫氏)

大西氏の言葉に後押しされたような有名メーカーのルール適合外品の発売。どうやら高反発クラブが再燃しそうなムードが業界に漂っている。

断っておくが、大西氏は高反発クラブの規制を全面撤廃しろと言っているわけではない。

「現在はクラブやボールの開発でプロや競技アマの間で飛びすぎることが問題になっている。

特にプロの世界では軒並み300ヤードを有に超える選手が続出。これにコースが対応しきれず、ゴルフの概念が昔と完全に変わってしまった。今年の全米オープンを見ても分かるように、500ヤード台のパー4ホールが5つもある異常事態。今や飛びすぎに対応するには7800ヤード級のコースが必要だが、そうは言ってもコースを簡単に作り変えるのも難しい。何らかの規制が必要なのはプロや競技アマの世界。それをプロもエンジョイアマも一括りにすること自体が乱暴なのです」

大西氏は更にこんなことも言った。「もし重い、飛ばない昔のクラブのままだったら私もとっくにゴルフをやめていた。クラブの開発のお陰で年齢を経ても楽しくゴルフを続けている人は大勢いる。そんな人たちの楽しみを奪ってどこがゴルフの活性化なのか疑問に思います」

大西氏はプロやトップアマの競技と、ゴルフをエンジョイするゴルファーとではルール(高反発規制)を別にすべきで、何でもかんでも高反発が賛成と言っているわけではないのだ。

日本ゴルフ用品協会もJGAに真っ向反論
この高反発クラブの規制には日本のクラブ及び用品メーカー300社以上で組織される一般社団法人日本ゴルフ用品協会(JGGA=馬場宏之会長)も反発している。
今年の2月1日には「ゴルフ用品ルール適合外品の流通に関するJGGAの対応について」の公式声明文を発表している。

その骨子を簡単に説明すると
「JGGAは、すべてのゴルファーの皆様が楽しくプレー出来、ゴルフがもっと魅力的になり、興味を持っていただけるよう、会員企業が一致団結して市場の活性化に取り組んでおります。
ゴルファーの皆様には競技への参加やルールを厳格に遵守される方、レジャーや健康増進でエンジョイする方など様々です。全てのゴルファーの皆様がそれぞれの目的やご要望に合った用品を選択して頂けるように、多様な用品が提供される環境がゴルフ市場の活性化により望ましいものと考えています。このような観点からR&Aが定める規格範囲外(高反発クラブ)用品の製造・販売を行うかどうかは、各会員企業の自主的な経営判断に委ねております。これらの製品を製造・販売する場合には当該製品が適合外品(違反クラブ)であることを明確に表示し、必要に応じて適切な説明を加えることを、会員企業に対して強く要望してまいります」
分かりやすく言えば、高反発クラブはメーカーの判断で自由に製造・販売してもいいですよ。ただしその旨をユーザーにきちんと説明することを忘れないでください-ということなのだ。

先のプロギア「egg」はまさにこの後押しを受けての決断だったということが分かる。

権威主義JGAへの不満噴出
高反発ドライバーは2008年からR&AやUSGAの方針で使用禁止になった。飛びすぎて、ゴルフの伝統や精神を損ねるというのがその理由だった。
これに日本のJGA(日本ゴルフ協会)もすぐさま追従。
「違反クラブを使用してのゴルフはゴルフにあらず」と頑なな姿勢を押し付けた。プロやトップアマはそれでも何の支障もない。だが、ゴルフをレジャーとして楽しむエンジョイゴルファーや、歳を取って力の衰えたシニアゴルファーは飛ばす喜びを奪われた形になり、「面白くない」からとゴルフを止める人たちも続出した。

本来ゴルフ普及・振興の役目を持つJGAはそんな弱いゴルファーの気持ちなどお構いなし。
ところがゴルファー減少が続く昨今、加盟クラブからの会費で維持するJGAにもその火の粉が降りかかってきたのか、それまでの態度を一変した。
「規則を統括している立場として、不適合クラブでプレーすることを容認することはできません。しかしながら、健康や親交を深めるためにプレーするなど、個人の目的まで否定することはできません」とここにきてトーンダウンしたのだ。
手の平を返すとはこのこと。違反クラブでのプレーはゴルフにあらず-と大上段に振りかざしていたのが嘘のような態度だ。

統括団体で、ゴルフの普及・振興に努める立場なら、ゴルフ人口の大多数を占めるエンジョイゴルファーから飛ばす楽しみを奪えば、どうなるかは目に見えていたはず。それともJGAは主催する日本アマや日本オープンなどに出場するゴルファーだけが、アマチュアゴルファーと思っているのだろうか。

曖昧な容認をするなら、「競技以外のプライベートでの使用はルール上問題なし」と規則に明記すればいいだけの話だ。

こんなことを言っては身も蓋もないかもしれないが、年配者ゴルファーが高反発ドライバーを使ったからといって、飛躍的に飛距離が伸びるわけでもない。精々10ヤード前後だ。それも芯に当っての話し。仮に190ヤードの人が200ヤード飛んだからといって何の問題があるというのだ。わずかな飛びのアップで生き甲斐や、元気が出る。それで健康になり、ハッピーになれば、それこそゴルフの意義が深まり、ゴルフ活性化やゴルファー増加の要因にもなる。

JGAは権威やメンツ(権威主義でこれにこだわるから他にもいろいろ問題が出ている)など捨てて、ゴルファー(エンジョイの)の立場で施策をするべきだ。そのためにもまずエンジョイゴルファーへの「高反発禁止」ルールは即刻撤廃すべきである。

ABOUTこの記事をかいた人

宮崎 紘一

スポーツ紙記者を経て、フリーのゴルフジャーナリストに転身。また現在「月刊ゴルフレビュー」を発行。共同通信社のゴルフコラム「ティーアップ」を現在まで16年掲載中。プレジデント、ZAITENなど経済誌にも辛口評論を連載。日刊ゲンダイ、週刊現代、週刊文春、徳間書店などのコメンテーターも努める。ゴルフ好きでは誰にもひけを取らず、そのため「ゴルファー目線でゴルフ界にもの申す」が信条。(有)ジーエフ企画代表取締役。