115回目の全米オープンが6月西海岸のシアトル近郊のChambers Bay GCで開催されました。現地に行って、開場8か月後の2007年に早くも開催が決まったこのコースとその背景にある全米ゴルフ協会(USGA)の遠謀を考えてみました。テレビで全米オープンを観戦された方も多いと思いますが、採石場の跡地を再利用した、リンクスタイプのゴルフコースでした。採石場の跡地なので、海沿いのホールと丘側では推測で50m以上の落差があり、そこに巧みに、海と平行に、あるいは丘に向かって打ち上げ、海への打ち下ろしとホールが配置され、更に海からの風が追い風、向かい風、横風と様々な角度でうけるようになっていました。また、グリーンもポテトチップと呼ばれるグリーンではなく、起伏が巧みに配されたアンジュレーションのあるグリーンに仕上がっていました。また、ティーインググラウンド、フェアウェイ、ラフ、グリーンに至るまでレスキューという草(芝というよりは草のイメージでした)で造成されたコースでした。
全長は7200~7700ヤードで日によってティーインググラウンドの位置を大きく変えています。その上、ただフェアウェイのターゲットを狙うだけ、グリーンの攻めどころを正確に狙うだけでは良いスコアが生まれないコースでした。落ちてからのボールの大きな曲がり、転がる距離を感じる選手の想像力を要求しているコースでした。ティーインググラウンドの位置・傾斜、風、フェアウェイ・グリーンの起伏、また選手のクラブ選択、球の方向、球の高さ、飛距離を含めて、想像力、対応力が試され、それを発揮した選手が生き残るコースになっていました。更に、グリーンもレスキューで細かな凹凸があり、時として理不尽な曲がり方もすることを含め、選手にタフさを求めていました。
このコースでプレーしている選手の力が上がることは容易に想像できます。プロを抑えて、6名のアマチュアが予選通過していますが、このコースで開催された全米アマの上位者が顔を連ねていることも、想像力を要する難易度の高いコースでの経験が必要であることを表しています。USGAの狙いはそこにあったのだと思います。パブリックコースでこれだけのコースがあり経験をつめることが、幅広く力のある選手を育成でき、米国のゴルフ力になっていることを感じました。
日本人では一つ力の抜けている松山選手だけが予選通過し、18位タイでした。米国で環境の違う様々なコースでプレーしている経験と、持ち前の力がかみ合った結果だと思います。藤田選手は予選落ちしましたが、奇しくもこのコースで数多くラウンドすれば、自分でもコースを攻略出来ると言っています。振り返ってみて、日本のゴルフ振興にはスポーツである以上、世界のTOPで勝てる、日本人のメジャー優勝者を出すことが、一つの大きな方策だと思います。今年のマスターズを除く、全米オープン、全英オープン、全米プロはすべてリンクスタイプのコースです。日本で同じようなコースを造る事業家が現れることを期待したいところです。さもなければ、文字通り荒野を目指し、海外へ飛び出すしかないのかと思うところです。
余談ですが、コースは本当に素晴らしいと思いましたが、トーナメントを見るギャラリーにとっては修行でした。起伏のある砂山が配置されていることによる見にくさ、砂地の坂道の上り下り、歩くルーティングの悪さ、更に砂の巻き上げる埃に耐えなければなりませんでした。日本のトーナメントの10倍疲れます。これも世界の一流プレーを見る修行と思って楽しむしかありませんでした。選手と同じハードさをギャラリーにも求めているChambers Bay GCの全米オープンでした。