SLE規制問題とは茶番みたいなもの   菊谷 匡祐

SLEルール」は本当にゴルファーのためになるのか!
高反発フェースのドライバーはクラブとして認められないというけれど・・・

クラブフェースの反発係数を0・830以内に抑えるSLEルール(スプリング効果規制)が2008年1月1日から施行される。高反発クラブはゴルフ規則によって正式なゴルフ用具として認められないというもの。しかし、現状では「ルールだからといって素直に受け入れられない」などの意見も多く、一般ゴルファーやゴルフ場も含めて賛否両論が渦巻いている。SLEルールの今後の問題点、一般のアマチュアゴルファーに与える影響などについて識者の意見を集めてみた。


 

SLE規制問題とは茶番みたいなもの  菊谷 匡祐

いわゆる「スプリング効果の規制」とは、本来、簡単な話である。

20世紀最後の20年、宇宙科学の進歩によってクラブの素材が革命的に進化し、結果、ボールがやたら飛ぶようになった。相対的にコースが短くなり、試合に対応できないかも知れない事態が招来されそうだ。このまま事態を放置するわけにはいかない――というのが、規制が設けられた理由である。そして、2006年からJGAの主催する試合では、「高反発クラブ」の使用は認められていない。

新年度からは一般のアマチュア・ゴルファーに至るまで、この規制が適用されることになる。が、私見によれば、アマチュア・レベルがプレー上で「高反発クラブ」の使用不可措置の影響を受けることは、ほとんどなきに等しい。実際、高反発クラブが登場してきたとき、一般のアマチュア・ゴルファーは「福音」と受け止め、飛ぶクラブとてやはり真っ芯で打たなければ飛ばない――などとは思いもしなかった。が、やがて飛ぶクラブとはプロや上級のアマチュアが打てば飛ばせるが、平均的アマチュアでは飛ばせるわけではないことを悟るに至ったのだ。いまさら高反発クラブが使えないとしても、何ら支障はないのである。ただし、以上はプレー上のことに限れば――の話だ。

しかし、問題は別にあった。JGAは確かに、2002年から規制の方針を広報してきてはいた。が、現実はどうだったか? クラブ・メーカーの飛ぶクラブ開発競争、および販売合戦の連続ではなかったか。この形勢をJGAはあまりに手放しに放置したままだった――少なくとも、JGAがメーカーに待ったをかけたという噂を耳にしたことはない。当然、無辜の一般ゴルファーは「高反発クラブ」を求めて狂奔する。これを買って飛ばなければ、他に求める。物置には何本ものドライバーが眠り、なおバッグには2、3本入っている。かくして飛ぶはずのクラブを抱えたまま何年かが経過し、今回の規制実施の事態になったのだ。一般のゴルファーにとっては、薄々感じてはいたものの、まるで寝耳に水のような非常事態に思えているはずである。にもせよ、競技に出るレベルのアスリート・ゴルファーは、すでにR&A認可のクラブを使っている。それ以外のゴルファーは、飛ぶクラブを使っても何ら問題は生じない。

今後、中古クラブのショップには、膨大な数の高反発クラブが値もつけられないまま、半ば死蔵されるだろう。一方、メーカーには新しいクラブのセールス・チャンスが訪れている。面白くもあり驚きもするが、高反発ではないはずの現在のクラブは、いままでよりもボールを飛ばせるという。だとすると、SLE規制騒動とは茶番みたいなものだったと言うしかない。関係諸氏、お疲れ様でした。

飛びの規制というなら、ボールの反発性を抑えるしかないと、ゴルフ関係者なら誰もが思っている。が、さて誰が猫の首に鈴をつけるのか? 今後、これが見物である。