弁護士 西村國彦
①税制改正のされ方
2004年度税制改正では、土地建物の譲渡益に対する課税税率が26%から20%に引き下げられ、景気回復に向け不動産取引の活性化を促進することになりました。ところが税収不足に悩む税務当局は、同時に、含み損をかかえながらも倒産手続をとることなく、まじめに生計を立ててきた人たちの生きる術を奪うような改悪を強行しました。しかも同年1月に遡る「後決め」というアンフェアなやり方です。即ち2004年になってから突然、居住用を除く不動産の譲渡損失が発生した場合でも、他の所得との損益通算を認めないことにしたからです。
損益通算とは、1つの所得が黒字、他の所得が赤字といった場合に、そのある所得の黒字と他の所得の赤字とを、一定の順序に従って差引計算を行うというものです。
所得が赤字の場合に損益通算の対象となる所得は不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得とされています。
不動産を売却した場合、利益あるいは損失が発生することになりますね。その場合、利益に対しては課税され、損失が発生すると減税されるのが原則です。例外的に「損益通算」と言って、「他の所得」とあわせて減税されることが認められてきました。
しかし、新税制では「他の所得」との合算が認められないので、損失が出ても税金が戻ってこないことになります。