土井さんとの思い出～新岡和子～ | 日本ゴルフジャーナリスト協会

土井新吉氏を偲んで 去る6月16日（水）午後4時12分、当協会の顧問兼理事であり、会創設以来長年にわたり会長を務められておりました土井新吉氏が、心不全のため、78歳の生涯に幕を閉じられました。会発展のために土井氏がこれまでご尽力いただいたことは、報告するまでもございません。改めて、会員一同、ご冥福をお祈りいたします。

土井新吉氏　＜略歴＞
1925年10月18日北海道生まれ。早稲田大学卒。
55年に日刊スポーツ新聞社に入社し、運動部に配属。64年運動部次長、68年編集局連絡部長、73年編集局編集委員を歴任。83年、同社退社後、フリーライター、ゴルフ評論家として、各ゴルフメディアで活躍。ゴルフの歴史、ゴルフルールに精通し、ゴルフ記者歴45年で培われた知識は、日本ゴルフ界の至宝とも称される。日本ゴルフジャーナリスト界の第一人者として、88年に創立した日本ゴルフジャーナリスト協会の会長を16年にわたって務め、2004年3月より顧問（理事兼任）に就任。また、82年に（財）日本ゴルフ協会広報委員会委員に就任。90年から広報委員会参与（当時は編集委員会委員）を務めた。

土井さんとの思い出　　～新岡和子～

土井さんの訃報に接したのは取材先の全米オープン、シネコック・ヒルズでだった。
ニューヨーク出発の１週間ほど前、私は土井さん宅にお電話をしていた。声はいつもより弱々しかったが、はっきりとお話をされていた。「どうも足・腰が痛くて歩くのが大変ですが、頑張っていますよ」と言ってから「ちょっと家内がお礼を申し上げたいと言っていますので」と代わられ、啓子夫人ともお話をさせていただいた。こんなに早くお別れがくるとは思わなかった。
全米オープンのプレスルームには、世界中からベテラン記者が集ってくる。土井さんと親しかった欧米の記者の方々にも土井さんがお亡くなりになったことをお知らせした。中でも土井さんと特に親しかった前全米ゴルフ記者協会会長のケイ・ケスラ氏は「まさか！」と絶句され「悲しいね」と言って肩を落としていた。
ゴルフジャーナリスト界の長老で、ご意見番でもあった土井さんが、お元気で古稀を迎えられ、東京ゴルフ倶楽部でお祝いのゴルフ大会を開催された際、参加させてもらったことや全米オープン、全英オープン、日本オープンの取材の際の楽しかったことなど沢山の思い出がある。
ある時、私にとって悲しい出来事が起こった。尊敬している土井さんにお話したら、励ましてくださったうえ、優しさ溢れる丁重なお手紙までいただいた。その手紙には「いつも誠実に貴女は真面目に仕事に取り組んでいることをよく理解していますので、元気を出して頑張って下さい」とあった。この言葉に私はどんなに勇気づけられ、嬉しかったか計り知れない。悔しい思いに打ち拉がれている時の温かい励ましにどれほど助けられたことか。この手紙は私の大切な宝物となっている。
全米オープンから戻った私は、さっそく土井さんの横浜のご自宅に伺い、お拝りさせていただいた。
啓子夫人は「主人はメジャー・トーナメントが好きでしたので、全米オープンの週に旅立ちたかったのでしょう。土井の魂は全米オープンの会場に行っていたと思いますよ」と言われた時には涙があふれ、止まらなかった。
２０００年のペブルビーチで開催された全米オープンの最終日に、啓子夫人、長女の香さん、次女の紀子さんが土井さんとともに現地で観戦されていた。これが土井さんの全米オープン最後の取材となった。夫人は「あの時は本当に楽しかったです。主人も好きなゴルフ取材を続けてこられて幸せな人生だったと思います」と語っておられた。
土井さんは誰に対しても寛大で、心優しい温厚な人柄の礼儀正しい紳士だった。
ゴルフ界の大切な重鎮の死は、あまりにも大きく悲しいことである。
心から尊敬している土井さんに、生前受けた恩に、謹んで哀悼の意を表し、厚くお礼を申し上げたい。