世間に蔓延するゴルフ離れはメディアにも大きな責任がある  ~樋口 恭~

From member’s Voice
ゴルフが日本で始まってから100年が経過しようとしている。当初、ゴルフは特定の人、裕福な人しかできないスポーツであった。現在は庶民的スポーツとして認められてはいるものの、「真のスポーツ」としては、まだ受け入れられていない。
そこで、フロムメンバーズボイスでは、会員4名に「日本のゴルフ界をさらに発展させていくには何が必要なのか?」を主たるテーマとして、助言、提言などの意見を寄せてもらった。


 

ここ十年ぐらい職業としてではなく、引いた形で、冷ややかにゴルフ界を見続けている。すると、内に入っていた時には見えなかった様々なものが見えて来始める。最も痛感したのが「メディアがゴルフをつまらないものにしてしまった」だった。
会員のほとんどの方は、そのメディアに関与されているだろうし、以後記することに、「そりゃー、違うぜ」と反論されることを百も承知で、書いてみよう。
責任の第一は紙媒体である。全国紙、スポーツ紙、週刊誌。そのすべてにいえることだ。
先日、小野光一プロが死去された。その訃報がスポーツ紙に顔写真付きで掲載された。その写真を見て飛び上がって驚いてしまった。なんとI・Tプロの顔ではないか。S紙だけの誤報かと思ったら、数紙同じ写真を使用している。「共同通信の配信ミスだな」とピンときたが、そこで再びなぜ? の疑問が浮かんできた。
小野プロといえば、中村寅吉プロとのペアでカナダカップに優勝。ゴルフをほんの一部の人のお遊びから、一般人にもできる競技として位置づけた。プロゴルフ界の大功労者だろう。現在のゴルフ記者は、そんな歴史、資料も調べずに取材に出ているのだろうか。スポーツ紙といえば、スポーツ全般のプロ集団。配信のミスを見抜いて当然だったのではないか。
翌朝、訂正記事を見て笑ってしまった。「共同通信の配信ミスで…」案の定、すべてのミスを配信に押しつけた。だが、一読者としたら「共同通信スポーツ」を買っているのではない。発行元の新聞社の題字の会社の新聞を買っているのだ。自責を負わない会社の方針? そのまま背負って現場で取材に当たっている様子が行間にあふれている。
こんな記者たちの取材を受けなければならない取材対象者達は、大変だなと思う。プレーも見ずに意味不明、支離滅裂な質問を受け、「もう一度勉強し直してこい」と一喝されれば、紙面で「悪い内容でおカンムリ」と書く。こんな馬鹿げた記事では読者も離れていってしまう。
次は電波媒体。これも過日の出来事。女子プロの試合のゲスト解説者として、杉原輝雄プロがマイクの前に座った。画面にある時点までの順位とスコアが写し出されたのは上位6位タイまでで、以下はカットされた。その時、実況に入ろうとしたアナウンサーを制して、杉原プロはこう言い放った。
「ゴルフは、上位の人達だけで競技をやっているわけじゃないのだから、全員のスコアを流しなさい。プロは応援してくれている人がついているのだから…」
杉原プロ、よくぞ言った。と喝采したが、その後、同局、他局も最終日以外は全成績を流しているのには出合わない。加えてゴルフを知らないアナウンサーの聞きずらい中継。音を消してみているというのが実状だ。
これはほんの一部だが、こんなメディアもゴルフ離れの片棒を担いでいると思える。

〈プロフィール〉樋口 恭(ひぐち やすし)
1941年群馬県生まれ。明治大学卒業後、スポーツ紙に入社。ゴルフ担当などを経て、整理部部長後退職。現在はザ・ファミリー紙編集長。