「日本の男子選手は何故メジャーに勝てないのか!?」。これまであちらこちらで論議されてきたことであるが、その多くはプロゴルファー批判の色が濃いものであった。もちろん、当事者である選手の努力不足、研究不足は指摘されて当然ではあるが、いくら批判が繰り返されても、1900年代に日本人男子選手のメジャーチャンピオンは生まれなかった。おりしも、このところ若手選手を中心にアメリカツアーに挑戦したり、全英、全米オープンにトライするなど海外を目指すプレーヤーが増えている。そこでJGJA流に「何故日本の男子選手はメジャーに勝てないのか」││メジャーに勝つためにはどうすれば良いのかという建設的な意見をそれぞれの分野の論客にご執筆願った。
営利を目的としない言わばPGAのコースをいち早く造ることが絶対条件
天野 勝氏
アメリカのシニアツアーに出てまず驚いたのは彼らの練習量の多さだ。シニアになったらのんびりやっているのかと思ったらとんでもない話で、とにかく朝から晩まで球を打っている。
月曜日、プロアマ競技があるので6時半ごろ練習場へ行ったら、前日(日曜日)優勝争いをしてプロアマに出る必要のない選手まで来てもう練習している。
疲れることを知らない人種ではないかと思ったくらいだ。球を打つことしかやることがないのだろうかと思うくらいよく練習する。
何よりも体力に圧倒された。あのパワーにはとてもついていけない。見た目の飛距離はほとんど変わらなくても車にたとえれば5000ccと2000ccくらいの違いがある。
アメリカのレギュラーツアーで頑張っている尾崎直道選手が前半上位につけていても終わってみると20位ぐらいにとどまるのは体力で負けているからだ。スイングがどうのこうのよりもまず筋力トレーニングが先だ。それで毎日、朝から晩まで球を打っても平気な体力を作らなかったらアメリカではやっていけない。
アメリカはゴルフをやる環境にも恵まれている。小さいときからおカネをかけずに自由にゴルフ場に出入り出来る。よちよち歩きの子供が練習グリーンで遊んでいても誰も注意しない。日本も子供のときから野球やサッカーと同じ感覚でゴルフが出来るようにならないと世界のレベルにはなかなか行けないと思う。
日本も営利を目的にしないゴルフ場が20コースぐらいは欲しい。プロゴルフ協会がゴルフ場をつくって、プロの卵とか、プロになっても試合のないときは自由に出入りして実費だけでプレー出来るコースをPGAで早く作らないと……。
ゴルフ場に所属していないプロは試合がなかったらコースで自由に練習出来ないというのでは強い選手は育たない。毎日でも好きなときにコースで実戦の練習が出来る環境が日本にも早く欲しい。子供たちにも無料で開放したり、おカネをかけずにゴルフが出来るようにしないと世界に通用する強い選手はなかなか出てこない。
〈プロフィール〉
天野 勝(あまの・まさる)
1942年生まれ。身長175センチ、体重75キロ。広島商科大学卒。レギュラーツアー5回、シニアツアー9回優勝。95年米国シニアツアーのQスクールをトップ合格。