菅野徳雄の「日本のゴルフを斬る」 (日刊ゲンダイ 平成28年5月26日)
勝つことより稼ぐことを考えているのか
今季、日本の男子ツアーは東南アジアで開催された共催2試合を入れてもわずかに26試合しかない。うち6試合が終って日本選手の優勝は池田勇太ただ一人。
先週の関西オープンは日本ツアー初出場の趙炳旻(韓国)にあっさりと負けてしまった。日本の男子ゴルフはどうしてこんなに弱くなってしまったんだろう。
日本の男子ツアーを統轄する日本ゴルフツアー機構(JGTO)の青木功新会長が就任したとき、まず挙げたのは「人を育む」だった。しかし日本選手がこんなに下手ではファンはますます離れていってしまう。
強い日本選手が出てこないとギャラリーを増やすことも出来ないのだから、試合を主催したいというスポンサーも出てこない。今のような状態が続いたら、早晩日本の男子ツアーは消滅しかねない。
日本の男子プロを強くするためには青木会長自身が先になって、選手たちを叱咤激励するしかない。自分たちはどういうふうにして強くなっていったか、どんなゴルフをしてきたか、ジャンボ尾崎と中嶋常幸にも手伝ってもらって、若い選手たちに話をする機会を是非作ってほしい。
AONが三つ巴で戦っていたころは、見ていても息が詰まるような試合ばかりだった。AON時代に、日本と名のつく4つの公式競技(日本オープン、日本プロ、日本プロマッチプレー、日本シリーズ)を年間制覇し、ジャンボを王座から引き下ろして賞金王になった村上隆のショートゲームは人間離れしていた。
ジャンボは、パワーよりもサンドウェッジの技が際立っていた。一人一人誰にも真似のできない武器を持っていた。
あの頃は負けたときの悔しがり方も尋常ではなかった。だから、負けた選手に話を引き出すのは容易でなかった。とはいっても話をしたくないというのではないので、記者たちも選手が話し出すのを根気よく待った。
当時の青木が色紙に「勝負」と書いていたことでも分かるように、勝つことしか考えていなかったわけだ。
東京オリンピックの年(1964年)からゴルフの物書きをやっているけれど、今の人たちは昔の選手のように勝ち負けにはあまりこだわっていないような気がする。負けてもたいしてくやしそうな顔をしない。
開幕戦をプレーオフで負けた近藤共弘は「集中してやれたし、満足できる4日間だった」なんてことを平気で言っている。彼に限らず、負けて「よくやったと思う」と言う選手が多いのには本当に驚く。
勝つか負けるかよりも、年間を通していくら稼ぐかを考えているのかも知れない。だから、日本ツアー初出場の韓国選手にも負けてしまうのだ。
そういうことも含めて、青木会長は選手たちにプロとしての考え方、戦い方を教育する必要がある。