数々の栄光を手にする一方で、腰痛やひざの故障にも苦しみ、05年を最後に一線から退いた岡本。現在は故郷に近い東広島市の木谷というところで土地を耕し、農業を営んでいる。まさに晴耕雨読の悠々たる生活だ。木谷地区は木谷ジャガイモの産地で、栽培に適した赤土に恵まれ、岡本も日頃はクラブならぬ鍬(クワ)振るったり、農耕用の機械を運転したりしているのだろう。
時折、女子ツアーの解説者としてテレビに出ている。さすがに世界の綾子、心理的にも技術的にも的を射た分かりやすい解説だ。ほかにも今の彼女には後輩を育てる大きな仕事がある。森田理香子、表順子、青山香織、若林舞衣子らの指導にもあたっている。
彼女としばらく会っていないが、ゴルフ評論家三田村昌鳳氏のフェイスブックに対談中の最近の写真をみつけた。一時、体調を壊したという話も聞いていたが、元気そうだった。ぜひもう一度お会いしたいものだ。
女子プロにもシニア選手が出場するレジェンズツアーがある。
岡本をはじめ森口祐子、涂阿玉らはまだ若い。レジェンズツアーなら十分に戦っていけるだろう。女子選手の引退は少し早すぎる気がする。皆さん、老け込むのはまだ早い。
話が少し横道にそれてしまったが、日本ツアーで44勝、米国ツアーで17勝、欧州ツアーで1勝、トータル62勝をあげている岡本。世界中にこれだけ勝利を重ねる日本人プレーヤーは今後、出てくることはないだろう。
岡本がゴルフで成功した背景には、ゴルフを始める前に他のスポーツで猛烈に体を鍛え上げたことが挙げられる。地元の中学でソフトボールのピッチャーとしてライバルチームを圧倒。剛速球でならし、男子チームも打てなかった。実業団まで続けた送付とボールボールがあったから、成功したのだろう。
WHO‘S WHO
岡本綾子(おかもと・あやこ)1951年4月2日、広島県安芸津町(現東広島市)出身。学生時代はソフトボールの選手。愛媛・今治明徳高を経て大和紡績福井で活躍。73年に池田CCの研修生となってゴルフを本格的に始め、74年にプロテスト合格。日本ツアーでも通算17勝を挙げ、87年には賞金女王に輝いた。05年に世界ゴルフ殿堂入り。
【2015年9月9日にデイリースポーツに掲載された記事を引用】