「日本のプロゴルファーが世界で活躍するためには、何が必要か?」
多くの見識者から色々な意見を出されている。選手の技術面はもちろんのこと、メンタルやフィジカル面、或いはコースのセッティングの問題など、多岐に渡った論議である。
そのほとんどは、「当たらずしも遠からず」であろう。しかし、その論議の中で、ティーチングプロの役割に関して語られることが少ない。小生が常々感じるのは、日米の指導者層の違いである。日米プロゴルファーの選手層の厚さが違うことは、よく言われる。それ以上に層の違いがあるのがティーチングプロではないだろうか。
私自身、今まで通訳、翻訳やインタビューなどを通じて海外の百人を超えるティーチングプロ達と接する機会に恵まれた。そこで一番感じたのは、彼らのインテリジェンスである。 具体的には物事の分析力や、論理的に分かりやすく会話する能力に長けている。プロゴルファーというよりも、ビジネスマン、しかも多くの場合、経営者といった感じさえする。反面、日本のティーチングプロに接して感じるのは、ゴルフプレーヤーの職人の集団というものだ。どちらかと言えば、近寄りがたい個性豊かな集まりである。そこには、欧米のクラブプロに感じられるビジネスマンの雰囲気からは程遠いものがある。
本来、ティーチングプロとトーナメントプレーヤーは、その職域が大きく違うはずである。トーナメントプレーヤーは試合に出て賞金を獲得して生計を立てるプロゴルファーである。ティーチングプロはゴルファーをトータルでサポートするゴルフプロフェッショナルとして、ある意味、ゴルフ界のビジネスマンであろう。サービス業としてのコミュニケーション技術はもちろんのこと、ゴルファーをトータルでサポートできる知的センスに長けていなければならない。自分のゴルフプレーが上手いだけでは、到底なれる職業ではないはずだ。
その昔「日本のゴルフの常識は、世界の非常識」と言われたことがあるが、ティーチングの分野では、現在でも、世界からかい離したり、大きく立ち遅れていることが少なくない。
世界的なティーチングプロを見ていても、円熟味を帯びてくるのは六十歳を超えてから。それほど習得すべき能力や知識が多岐にわたり必要とされる。技術面だけをサポートする、いわゆるスイングティーチャーであれば、訓練することで映像分析能力など誰にでも出来うるものであろう。日本のティーチングプロが、スイングティーチャーの域を出ないのは、人生経験の幅から来ているのかもしれない。ティーチングの主役は、ゴルファーそれぞれ。一人一人のゴルファーが何を考え、欲しているか、それらを見抜く眼力を備えることは無論のこと、人生のチューター的役割を担うことが少なくない。そのためには、人間力を磨く勉強を常日頃から欠かすことなく、己を高めていく努力が必要となるであろう。
ゴルファーから得られるべき信頼関係も、一日にして築けるものではない。ティーチングプロとしての人となりや生きる姿勢がゴルファーから見られている。プレーを見せるのがトーナメントプロの仕事なら、人間性を見せるのがティーチングプロの生業であろう。
以前、日米のティーチングプロの違いが取り上げられたことがあった。その中で興味深かったのは、仕事の範囲・読書量・デスクワークの時間であった。
米国では、クラブプロとして、プロショップの経営をはじめ売り上げや労務管理に至るまで仕事の守備範囲が広い。そのためには日頃から学ぶ姿勢を持つことで当然読書量も増え、仕事の中に占めるデスクワークの時間も要求される。まさにゴルフ界のビジネスマンといったところであろう。
米国ゴルフ界が押し並べて良く、世界のグローバルスタンダードだとは思わないが、日本のティーチンプロが世界から学ぶべき点はたくさんある。
二年に一度、米国PGAが主催するPGAティーチング&コーチングサミットには世界中からティーチングプロが集まり、発表会が開催されている。私は今まで四回にわたり出席させて頂いているが、日本からの出席者は、ほとんどいないのが現状である。
多くの日本人プロゴルファーが国内に留まるように、世界に出て行く日本人ティーチングプロも、また少ない。
その意味で、微力ではあるが日米のティーチングプロ界の橋渡し的な役割を担い、日本人のティーチングプロが国内だけに留まらず、世界で活躍するためのお手伝いが出来ればと思っている。