「第4回ゴルフミーティング NGK×JGJA」~ゴルフによるウェルビーイング創出

日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)は10月5日、ゴルフ業界が抱える課題解決に向けてテーマを設定し、議論する「第4回ゴルフミーティング NGK×JGJA」を東京・新宿区で行った。今回は一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK)と初めて合同で開催した。

第4回のテーマは「ゴルフによるウェルビーイング創出」。一般社団法人ゴルフトライアスロン協会の松尾俊介代表(JGJA理事)、ゴルフ場を経営する株式会社セブンハンドレッドの小林忠広代表取締役社長(NGK委員)、神奈川大学サッカー部の大森酉三郎監督の3人が登壇。小森剛JGJA理事が司会進行を務めた。会には、リモートも含めて37人が参加した。

小森理事は冒頭、今回のゴルフミーティングについて「ゴルフ場の衰退はゴルフ業界の衰退に結びつきます。ゴルフ場を取り巻く環境は厳しい。物価、人手、天候などで非常に苦労されていると思います。経営のプロ集団のNGKとJGJAがコラボすれば何か新しいものが生まれるかもしれないと思い企画しました」と開催意図を説明した。

講演①「日本のゴルフ場を魅力あるものにするために」(松尾氏)

松尾氏は、「ゴルフ場は60代、70代の人たちのプレースタイルに合わせている傾向があるのではないか、若い人たちはちょっと違うなと感じているのではないか。今までのやり方を変えて方向転換する時期に来ているのではないかと思っています」と切り出した。

まずゴルフ場の現状にかかわるデータを紹介。この15年間で日本のゴルフ場は273コースが閉鎖されて2150コースとなっており、このペースで閉鎖が続けば今後10年で2000コースを割る状況となる。「ゴルフ場はすべての需要の拠点と考えています」とし、ゴルフ場が少なくなるのは練習場、インストラクター、プロツアー、用品業界に影響すると説明した。

2019年のコロナ前と比較して、プレー人口は減っておらず、売上も上がっているが、練習場の売り上げは減っている。また、ゴルフをプレーしている年代の分布で70代から下へどんどん減っている現状。これに対して「プレーの選択肢の多様化」「危機が表面化していないということは売上の安定が判断を鈍らせているのではないか」「ゴルフ場の用途を広げる余地がある」という3つの論点にそって、様々なデータを示して話した。

既存の18ホールのプレーだけではなく、6ホール、9ホールなどプレーホール数の柔軟な設定、早朝・夕方の活用、土日など予約が取れるときにはショットガンスタートを採用して1日の組数を倍増させることや、バッグを担いでのプレーなど「ゴルファー目線でのプレースタイル」の取り入れを挙げた。

年1回以上のゴルフ実施率で20代は2022年4.5%から2024年に8.5%に増加しているデータを提示。「この世代を継続してやってもらう方法を考えたい」と話した。今後ゴルフをしたい人の割合は20代から40代が多く、潜在的な人たちを「何とか引き留めてゴルフ場に足を運んでもらう」。そのために「小さな実証実験から始める。大きな投資をせずにできることを既存の仕組みの中で始めてみる」と提案した。コンペルームなどの空いている時間の活用やゴルフ場の散策やランニングへの開放などでゴルフ関係ではない人たちの意見や目線で考える必要もある。

ゴルフ場で、ゴルフを中心に家族、仕事、自然体験、星空体験などのイベント活用、他のスポーツの受け入れなど用途を広げる方法を考える。

こうしたさまざまなアイデアを提示し「できることから始めて、これはできる、できないと判断していく」ことを提案した。「週末に子供たちがゴルフ場に連れて行って、と言われる環境にぜひゴルフ場が変わって行ったらと考えています」と話した。

また地域の防災インフラをして地域を支える社会資産としてみてもらうことで、地元との接点もできるように提案。自治体と契約をしてゴルフ場を1つの災害避難場所とするなど「ゴルフ場の役割はいっぱいあります。24時間ゴルフ場をもっと多くの人に利用してもらえるか考えましょう」と話した。

講演②「ゴルフ場が取り組む最新事例とウェルビーイング」(小林氏)

小林氏はNGKの経営対策委員を務めており、ゴルフ場経営者協会の中長期ビジョン「ゴルフ界はウェルビーイングな社会の実現に貢献する!」を紹介し、ウェルビーイングの定義、ウェルビーイングであることによる幸福度、幸福度によって企業の生産性などの違いなどについて資料を示した。

ウェルビーイングについては、金、モノ、社会的地位など金銭欲、物欲、名誉欲の地位財では幸せが長続きせず、長続きするのは非地位財で、安全な環境に基づくもの、健康など身体に基づくもの、心的要因として自己実現と成長、つながりと感謝、前向きと楽観、独立と自分らしさの4つの因子、という定義を提示。「これをどうゴルフ場で達成するかというと、我々には東京ドーム10個分の広い場所があるんです。ゴルフをしない方にとっても宝の山であり、ゴルフ場の利用価値を感じていただき、地域と手を組んでいく、地域に貸し出す、地域の公共財として考えました」と話した。

すでに自治体や商工会と一緒に、伐採した木を益子焼に使用したり、木を使ったモノづくり、フットゴルフの開催、障がい者団体とのイベントなど、様々な取り組みをしている。

2019年から「みんなが幸せを実感できるゴルフ場を目指そう」というビジョンを展開。売上、来場者数、組数、バッグ数、リピート率とかゴルフに関する数字には関係なく「みんなで幸せになるんだというのを最上位の理念として置いています」といい「ゴルフ場がパークとして存在する。ゴルフだけではなく、サイクリングをやったり、レストランを利用したり、そのゴルフ場があるから地域の活気が生まれるのではないかということを目指してやっています。ゴルフ場の文化を変えていく、ゴルフ場が地域の存在する意味をつくっていく、働く人も楽しいということを目指しています」と話した。

こうした取り組みが評価されて、ゴルフ場として初めて「Bコーポレーション」という制度に認定された。「世界的な判断基準、監査基準も下でウェルビーイングな会社だといわれるように頑張りたい」とした。

トークセッション「大学サッカー部が取り組む地域ウェルビーイング」(大森氏)

対談相手の小森理事から、大森氏が監督を務める神奈川大サッカー部の取り組みの「竹山団地プロジェクト」を紹介した。竹山団地は1971年に竣工されたマンモス団地で、当時は1万人ぐらいの住人が今は6000人ぐらいになって、高齢化率は46%。高齢化、不健康、社会的孤立など顕著になっている。団地内で賃貸、テナントの管理をしている神奈川県住宅供給公社と締結してサッカー部員が2019年からサッカー部が寮として利用している。地元の高齢者に健康体操、スマホ教室などを開催し、地域の健康づくり、コミュニティーづくりに貢献している。部員食堂を改装して多世代交流カフェ「竹山キッチン」として開放、農場も作って取れた野菜を使った料理の提供や料理教室を行っている。これによって、高齢者の健康増進につながり、地域の安心や活気を生み出し、若者が社会に貢献し、社会が若者を育てる共生社会ができている。この活動で学生の社会性や人間性がはぐくまれ、競技成績にも表れているという。

この活動を始めたのが大森氏。学生時代はサッカーをやっており「Jリーグにはいかなかったんですけど、Jに近いところに行きたいと思って探したら自衛隊があるということで海上自衛隊に11年間行ってきまして」と笑いを誘って自己紹介。自衛隊時代に飛行場で航空機の運航に支障がでないように滑走路わきの草刈りや滑走路の石拾いなどをやっていたが「ゴルフ場でも芝を刈っている方、養生している方は自然と会話しながらお客さんのために丁寧な仕事をされていると思うんですが、自衛隊で先輩が『お前たちがいるから日本を守れている、安心して飛行機を飛ばせるんだ』と。サッカーやっていた時にこれが足りなかったんだと気づいた」といい、サッカーには「58分30秒」という考え方があり、90分の試合時間の中で60分はプレー時間、そのうちボールを触らない時間が58分30秒、自分が触っているのが1分30秒。「まさに飛行機を飛ばすのが1分30秒、飛ばすための時間が58分30秒。サッカーは若者を育てられると思った」という。その後、神奈川大の監督として自衛隊時代の経験をもとに「何かできないかということで、チャンスをいただいたのは竹山団地のお話でした」と話した。

小森理事は「58分30秒の考え方はゴルフにも通じると思います。競技成績を上げるために地域貢献しようというのは難しいかと思いますが、ゴルフ界でも参考になるかと思います。ゴルフの特性を考えると、中高年が集まりやすい環境がある、地域に根ざした施設、広大な敷地がある、健康増進やフレイル予防に関する運動特性がある、世代間交流が生まれやすい、子供の教育・人間形成にも貢献できるといったことがあります」とし、神奈川大サッカー部の取り組みはゴルフにも応用可能な考え方、活動といえそうだ。

その後、質疑応答を行い、会場の出席者から多彩な質問や意見が出され、懇親会を含めて約3時間のゴルフミーティングで活気あるやり取りが行われた。

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ABOUTこの記事をかいた人

1959年北海道札幌市生まれ。札幌南高―北海道大学工学部卒。82年日刊スポーツ新聞社入社。同年から計7シーズン、ゴルフを取材した。プロ野球巨人、冬季・夏季五輪、大相撲なども担当。2012年、日刊スポーツ新聞社を退職、フリーに。
著書に「ゴルフが消える日」(中公新書ラクレ)、「ビジネス教養としてのゴルフ」(共同執筆、KADOKAWA)
日本プロゴルフ殿堂、国際ジュニアゴルフ育成協会のオフィシャルライターでHPなどに執筆。東洋経済オンラインでコラム「ゴルフとおカネの切っても切れない関係」を担当。趣味で「行ってみました世界遺産」(https://世界遺産行こう.com/ )を公開中。
【東洋経済ONLINEより】
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