運動&スポーツ情報サイト「Citta」からの質問!「体幹トレーニングの重要性」

運動・スポーツ情報サイト「Citta(チッタ)」から、日本ゴルフジャーナリスト協会理事でゴルフハウス湘南代表の小森さんへ、ゴルフについて気になるアレコレを質問する企画の第5弾です。今回は、「体幹トレーニング」について伺っていきます。

【Citta】では早速、小森さんにお話を伺っていきましょう。小森さんよろしくお願いいたします!

【小森】よろしくお願いします。

ゴルフスイングの4つの要点

【Citta】早速ですが、以前Citta掲載のコラムの中で、ゴルフに必要な「身体能力のABC」について解説をしていただいたことがありましたよね!※関連コラム:ゴルフの上達と健康増進を図る身体能力ABCとは?(2022/10/24公開)

身体能力のABCの中で、身体の可動性や柔軟性、均衡性といった事はキーワードになっていたかと思います。今回は「体幹」という事で、身体のまさしく“幹”になる部分についてですが、小森さんはゴルフを行う上での体幹の重要性についてどの様に考えていらっしゃいますか?

【小森】メチャクチャ大事だと考えています。「身体能力のABC」でも体幹(コア)の重要性はお伝えしましたが、過去のコラムでお伝えした「ゴルフスイングの4つの要点」を読み返すと分かりやすいと思います。

4つの要点とは・・・
①スタビリティ(Stability:安定性)
②モビリティ(Mobility:可動性)
③キネティックチェーン(Kinetic chain:運動連鎖)
④パワーポイント(Power point:力の作用点)

つまり、安定すべきところは安定させ、動かすべきところは動かすこと。そして、それが可能となるカラダをつくること。また、体幹から発生したパワーを、胴体→腕→クラブへと増幅させながら伝える運動連鎖を実現すること。そして、そのことで生み出されたパワーを効率よくボールに伝達できるポイント(位置)を知ること。この4つがゴルフの上達には不可欠です。

この「安定すべきところ」の代表格が“体幹”なのです。そして「運動連鎖」のパワーの発生源も“体幹”です。
初心者の頃、頭を動かすな!背筋を伸ばせ!軸を安定させろ!肩を回せ!腰を回せ!と先輩ゴルファーからアレコレ指導されて困惑した人は少なくないと思います。これらの指摘事項は、すべて「体幹の安定」に集約されます。

「ゴルフスイングの4つの要点」については、下記コラムを開いておさらいしてください。
股関節の柔軟性を高めてゴルフも仕事も元気ハツラツ!(2024/1/22公開)
ゴルフスイングにおける「重心」と正しい体重移動(2023/1/23公開)

ゴルフスイングにおける「コア」の重要性

【Citta】ゴルフスクールの生徒の皆さんには、体幹の重要性についてどの様に伝えていらっしゃいますか?

【小森】その前に「体幹」の定義を明確にしておきたいです。体幹は広い意味で、首から上と四肢(両腕と両脚)を除いた胴体全体を指すケースがありますが、ここでは横隔膜の下下腹部と定義しましょう。
具体的な筋肉で説明すると、正面と両サイドをカバーする腹横筋と、背中側をカバーする多裂筋、そして底をカバーする骨盤底筋と天井にあたる横隔膜に囲まれた空間です。

体幹の重要性を理解するには、コアの存在を知らなければなりません。コアとは、重心(=センター・オブ・グラビティ)です。東洋的には「丹田(たんでん)」といいます。丹田は「へそ下三寸」といわれ、おへそより三寸(約9cm)下のところです。解剖学でいうと骨盤の中心「仙骨」の前です。

ゴルフスイングでは・・というより、どんなスポーツでも同じだと思いますが、このコアを安定させることがとても重要です。コアは体幹の中心にありますので、コアの安定には体幹の安定性が不可欠です。私はそのことを、次のように説明しています。

ヒモの端に重りをつけて、片手でクルクル回します。このとき、ヒモを安定して回転させるには、持っている方の手を安定させる必要があります。この手がフラフラ動いていたら、重りは安定して回転することが出来ませんし、勢いもでません。やってみてください。(図1)


(図1)写真左:中心が安定した回転  写真右:中心が不安定な回転

このときのヒモを持っている手がコアです。そして回転しているヒモがクラブだと思ってください。クラブヘッドに安定した円運動をさせるには、コアの安定が不可欠であることが理解できると思います。

またこんな方法もあります。まず2人でペアを組み、一人がアドレスの形を取り、もう一人に後ろから仙骨の少し上あたり(腰の中心)を押してもらい、アドレスの安定度をチェックします。何もせずにアドレスしている時よりも、腹筋を少し緊張させ、腹圧を上げるとアドレスがどっしりと安定することが分かります。(図2)


(図2)後ろから仙骨の少し上あたりを押してアドレスの安定度をチェック

腹圧とは、体幹内部の圧力のことです。腹圧を上げることでコアが安定し、バランス能力が向上するのです。ゴルフはバランスが全てです。そのバランス力の向上に体幹はとても重要であることを、私はこのような簡単な方法で説明しています。

更にいうと、過去のコラムで幾度か紹介したエクササイズ、「ゴルフフィットネス」の前後では、アドレスの安定度がまったく異なります。はじめての方は、皆さんこの違いに驚かれますよ。

体幹トレーニングの方法

【Citta】そうなんですね!「ゴルフフィットネス」が小森さんがご指導されているレッスンでは肝になるという事ですね!ではどのような事を実践されているのでしょうか。実際に用いられているおススメのアイテムがあれば合わせて教えてください。

【小森】 ゴルフフィットネスでは、いくつかのアイテムを使いますが、体幹強化でおススメなのが「パワーバランス」です。この運動は、パワーバランスというゴムホースのような運動補助器具を、ゴルフスイングをするように横方向に、ビューンビューンと左右連続で振ります。この時、身体軸を安定させ、肩と腕の力を抜き、体幹を意識しながら左右均等に振ると効果的です。なぜなら、ゴムホースを振ると、それに遠心力が働くため、外へ外へと引っ張られるからです。

人は引っ張られると、本能的にバランスを保とうと引っ張り返します。その引っ張り返す力は遠心力と真逆の方向、つまり体の中心方向へと働きます。このとき無意識に体の中心であるコアを使います。よってパワーバランス運動によって無意識のうちにコアマッスル(体幹)が鍛えられるのです。

また、ゴムホースの慣性力でより体が捻転されるためストレッチの効果もありますし、呼吸を伴いながらリズミカルに運動しますので、有酸素運動でもあります。つまりパワーバランス運動は、筋トレとストレッチ、更に有酸素運動の3つを同時に行えるのでより効率的なのです。

パワーバランス運動に関しては、私がCittaに寄稿したコラムの第一号、「ゴルフトレーニングで若返る!」(2022年6月22日公開)で詳しく説明しています。是非お読みください。

また、私が主管するゴルフスクールでは、ピラティスも取り入れています。「ゴルフピラティス」というゴルフに特化したピラティスの指導資格の認定者にご指導いただいています。
ヨガやピラティスというと女性が多いイメージがありますが、私のゴルフスクールで行っているピラティスレッスンは9割が男性です。お客様に尋ねると、「巷のピラティススタジオは女性ばかりで行きにくい」と・・

男性のお客様は集客が難しいという声をよく耳にしますが、男性も目的意識を明確にし、その効果や必要性をきちんと伝えてご理解いただいた上で、通いやすい環境を整えてあげればお越しいただけます。是非、男性客の集客にもチェレンジしてください。

ゴルフで広めたい「立腰教育」

【Citta】ゴルフスクールの生徒のみなさんの中には、なかなか体幹が意識できない方や身体の使い方に苦労される方もいらっしゃると思います。そういった方々はどの様な事をアドバイスされていますか?

【小森】パワーバランスを片腕で振る運動種目がありますが、その時は片腕が空いているので、その空いている手でコアに手を当てて振っていただきます。手でコアを押さえていますので、コアを意識しやすくなります。

しかしパワーバランスを両腕で振る時や、実際のゴルフスイングのときにそれは出来ませんので、体幹が意識できない方には、コア(へそ下三寸)、もしくは仙骨に意識を向ける、もしくは“思う”だけでいいと伝えています。またゴルフのときだけでなく、常にコアを意識して活動するように伝えています。例えば歩くときは、“コアを前に移動させる”ように意識する。椅子に座るときは、“コアを椅子に降ろす”意識を持つ、などです。

身体の使い方に関してのアドバイスは、“自然体”です。アドレスでは背筋を伸ばし、40度前傾させて、バックスイングは肩を90度右に回し、トップの手の位置はここで・・と形を強要するレッスンがありますが、それはNGです。エクササイズで動きやすい身体を獲得し、可能な限り身体能力を高めた上で、力相応の自然なスイングに徹する。ここがポイントです。

【Citta】ゴルフの上達や健康増進には「正しい姿勢」の獲得も必要と教えていただきましたが、日頃から小森さんが「正しい姿勢」を作るために意識されている事はありますか?

【小森】私もレッスン以外の仕事はパソコン仕事が多いのですが、どうしても背中がマルまったり、頭が前に出たりしがちです。なので出来る限り背筋を伸ばし、頭が正中線の真上に来るよう心がけています。
また両肩が前に出て、胸が閉じ気味になることも多いので、両肩を1センチほど後ろに引き、胸を開くことも心がけています。骨盤を常に立てることも大事です。椅子に座っているときは、骨盤が後傾しがちですので注意しています。

骨盤を立てるといえば、森信三(もり しんぞう)先生をご存じですか?戦前の教育者で哲学者です。

森信三先生が提唱する教育法に「立腰(りつよう)教育」があります。「立腰」とは、腰骨と立て、姿勢を正すことです。そして立腰教育では次のように説いています。

「心を立てようと思ったら、まず体を立てなければならない。一 腰骨を立てること、二 アゴを引くこと、三 常に下腹の力を抜かぬこと。同時にこの三つが守れたら、達人の境といえよう」

この3つの教えは、ゴルフで正しいアドレスをとるための教えそのものです。森信三先生がゴルフをされていたかどうかは定かではありませんが、もしされていたら、きっと達人的に上手だったと思います。(笑)

今は学校で子供たちに姿勢の大切さを教えなくなっていると聞きます。とても残念なことです。
私は近い将来、ゴルフを通じて立腰教育を広めたいとも考えています。それには自分自身をもっと高めなければなりませんね。

【Citta】小森さん、ありがとうございました。
【小森】ありがとうございました!


※この記事は、運動&スポーツ情報サイト「Citta」に掲載されたコラム「体幹の可動域UPストレッチと体幹トレーニング方法」(2024年2月19公開)をJGJA公式HP用に小森がリライトしたものです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

【略歴】
1993年 サラリーマンからゴルフインストラクターに転身。
2004年 ハル常住さんが主管するハルスポーツビレッジ認定インストラクターとして“ゴルフと
    健康との融合”をテーマに活動を始める。
2005年 「有限会社ゴルフハウス湘南」の代表取締役社長に就任。
2008年 総合コンサルティング会社「株式会社船井総合研究所」と共同で、ゴルフ練習場活性化
    プロジェクトを立ち上げる
2011年 朝日新聞グループが選定する「マイベストプロ神奈川」に認定される
2018年 神奈川県未病産業研究会に参加
2020年 「一般社団法人日本健康ゴルフ推進機構」を設立し、会長に就任する

【メディア実績】
■ゴルフクラシック誌(2008年12月号~2010年12月号)
 連載「ゴルフが変わる!ボディ・チューンナップ」全24回を執筆
■週刊ゴルフダイジェスト(2014年1月28日号)
 「ボールを打たずに上達する!凄い練習法」掲載
■ビジネス情報サイト「Biz Clip」(2015年10月~)
 連載コラム「ゴルフエッセー~耳と耳の間~」現在も執筆中
https://www.bizclip.jp/

【著書】
「仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?」(出版社:星雲社)
 https://www.publabo.co.jp/golf/