この夏の猛暑以上の熱波となった、渋野日向子の全英女子オープン優勝。その後の渋野フィーバーぶりは、久しぶりに国民的な関心事となり、スポーツニュースやゴルフメディアの枠を越えて、日々報じられている。
先ずは8月5日未明に渋野が優勝を決めたその日、私が自身のSNSに投稿した記事をご覧頂きたい。
『渋野プロのメジャー制覇、朝のワイドショーでも大きく取り上げていましたが、あらためて思うことは2つ。
1つはコースとの相性。国内初優勝が茨城GCで2勝目が戸塚CC。そして今回のウォーバーンGCと、全てパークランド&ツリーラインのコース。日本人でメジャー開催コースに強い菊池絵理香プロの特長は、コースに対してシンプルに構えて直線的なラインでフェアウェイにボールを入れてくるショットメイキング。
渋野プロはわりとティアップの位置を工夫している様に見えましたが、やはり曲がらないPINGのドライバーとの信頼関係でアドレスの向きがしっかりしているので、直線的にフェアウェイに対して打てていました。
今回の様にフェアウェイが走ると(残業というらしい)距離も稼げるので、ドライバーでのアドバンテージが取れているのが、難易度の高いと言われたインコースを4日間ノーボギーでプレー出来た要因だと思います。
優勝スコアの18アンダーはインコースで4日間ゲットしたバーディー数と同じというのは、まるでマスターズ優勝者のスコアの様ですが、フィールドのデータ的にはインコースの方が難易度が高いと出ているみたいですから、その相性の良さには目を見張るモノがありますね。
国内の2つはグリーンコンディションの良さに定評のあるゴルフ場で、ドライバーでアドバンテージを取って、得意のパッティングでバーディーを取るというプレースタイルが見えて来ます。
となると来年の東京オリンピックの霞ヶ関CCとの相性がバツグンの様に思えてきました。問題はこの酷暑で、霞ヶ関CCのグリーンが仕上がるかどうか?かもしれません。
2つ目はスイング特性。ゴルフとソフトボールを同時に始めて、今でもソフトボールの方が好きと言っている渋野プロ。
ゴルフだけでなくソフトボールを同時にやっていたという事で、ゴルフクラブより重いバットを振りながらスイングを磨いてきたわけです。そのせいか、いわゆるクラブに振り負けているスイングではないと感じます。
ジュニア期にゴルフだけしかやらないと、どうしても最初はクラブに振り負けてしまうケースが多く、振り負けた仕組みの中での「負け方の巧さ」を磨いてしまうケースがあります。
この辺りが、大人になってメジャーに出ていった時、世界のトップ選手との差になっているんだろうなと感じていましたが、渋野プロはそれをクリア出来ていたんだと思います。
「負け方の巧さ」を磨いてしまった選手は、環境やゴルフコース、芝質の変化に弱いと思います。メンタル的にも今までより強いストレスがかかった場合は、基本「負けている」のですから、思うようにクラブが振れません。
その点、渋野プロは、ニコニコ笑いながら、もぐもぐしながらでも、全く問題なく自分の意図するショットとパットを積み重ねていくことが出来たのだと思います。
技術的には改良するべき点や、アプローチのバリエーションなど、まだまだ伸びしろがあると思いますので、今後の渋野プロの成長に期待したいです。
そして、渋野プロの勝利により、日本のゴルフがもうワンランク上に引き上げられる事を期待し、自分もそのお役に立つべく、努力したいと思います。』
以上が渋野優勝の朝、SNSに上げた文章。
ここに書いた様に、渋野はパークランド&ツリーラインのゴルフコースとの相性がいいと思われる。
私自身、渋野国内2勝目となった7月のアネッサレディースの前週に、プライベートながら試合会場となった戸塚CC西コースを視察プレーして来たが、その難易度には正直驚いた。
それこそ梅雨時につき雨でも降ればコースは長くなり、優勝スコアはアンダーにならないのでは?と思ったが、渋野の優勝スコアは12アンダー。しかも終盤の難易度の高いホールをバーディーとしての逆転劇だ。たしか、多少の悪天候もあった様に記憶している。
そんな渋野、海外への積極的な挑戦には慎重な構えだが、メジャー戦には全英女子オープンチャンピオンとして出て行くだろう。
となると、コースとの相性を見ると、ANAとエビアンは違う様な気がする。残る全米女子オープンとUSLPGAは毎年持ち回りでの開催となるため、東側のクラシックタイプのコースには期待したいところだが、やはりアメリカ本土で闘う雰囲気はこの前のそれとは違うだろう。
しかし、スマイルシンデレラは、すでにメインランドでも憧れのヒロインとして迎えられるのであろうか?
そう考えると、1年後に迫った東京オリンピックのゴルフ競技、会場は霞ヶ関カンツリー倶楽部は、まさにパークランド&ツリーラインのゴルフ場。渋野自身もジュニアの試合では、既に訪れていると思われるし(コース改造前か?)、何より自国開催という最大のアドバンテージがあり、現時点ではまだオリンピック出場は確定していないが、かなり有力な金メダル候補と言えるのではないか?
既に東京オリンピックまで1年を切り、ラグビーワールドカップがいよいよ始まり、秋にはUSPGAツアーZOZOチャンピオンシップも開催される。それらのイベントを繋ぎながら、東京オリンピックに向けての機運を高めていくのに最高の起爆剤を渋野から頂いた訳だが、ゴルフ業界でなく駄菓子業界の特需に繋がる様な報道しか目にしない。
ゴルフジャーナリズム、スポーツジャーナリズムというのは、この国には無いんだなと思わざるを得ない状況は、非常に残念であると感じる今日この頃。
ゴルフ業界的にはニューヒーロー、ニューヒロインが誕生すれば、ゴルファーも増えてゴルフ業界がV字回復する!みたいな雰囲気があるが、ゴルフの素晴らしさや楽しさの本質を、現状ではノンゴルファーに伝えられているとは到底思えない。
相変わらず業界の枠の中だけで盛り上がり、業界外への発信をないがしろにするゴルフ業界の悪しき体質は、パシフィコ横浜のハコの中だけで盛り上がっているジャパンゴルフフェアに象徴される。展示のあるメイン会場の華やかさは年々増し、主催者発表によると来場者数も伸びてはいるとの事だか、新規ゴルファー増加による業界全体の成長は未だ実感できない。
賑やかなメイン会場の外では、様々な業界団体がゴルフ振興のためのセミナーやイベントを開催しているが、そちらに脚光があたる事はない。
最近はユーチューブの登録者数で評価されるこのご時世。きっと「ラウンド中に美味しい駄菓子は何?」なんて動画をアップして、ビューを稼いでいるゴルフユーチューバーがいるのではないか?
この様な潮目のきっかけは、トランプ大統領の当選からだと言われているが、私は偶然その大統領選挙の終盤アメリカに滞在しており、何人かのアメリカ人ゴルファーと一緒にプレーしながら彼等の中にあるトランプ待望論を肌で感じ、大方の予想に反してのトランプ当選予測を投票日の前夜に自身のSNSに書き込んでいる。
ゴルフ界では市場活性化の特効薬としてスーパースター待望論がずっと語られている。そのスーパースター像を語るのに、駄菓子の話題は必要ないだろう?と思うし、誰も霞ヶ関CCの東京オリンピック金メダルへの期待と繋げて話さない(渋野はまだ五輪出場が確定していないのは事実だが)のは何故か?
歴史を振り返れば、日本に第1次ゴルフブームを引き起こしたきっかけは、中村寅吉と小野光一ベアによるカナダカップ(後のワールドカップ)制覇。もちろん会場は霞ヶ関CC。高麗グリーンを制するのに、日本ペアは霞ヶ関CCに泊まり込んで、戦場に赴く兵士の如く必死の覚悟で練習ラウンドに励んだと聞く。もう、この頃の話しを語れる方は、誰も居ないのだろうか?
そして、優勝してのオープンカーパレードの写真は見た事があるから、今でも現存していると思われる。渋野の丸の内パレードは無いのだろうか?
渋野の優勝から、42年前の樋口久子の全米女子プロ制覇までは歴史を遡ったが、カナダカップから来年の金メダルまで行かずに、何故そこで止まってしまうのだろうか?
最近、連日朝のワイドショーを賑わせたのは、高級自動車によるあおり運転からの暴力事件。高級車で各地を転々としているとの情報を目にした時「ゴルファーじゃなきゃいいな」と思ったが、あのカップルが2サムで各地のゴルフ場巡りを楽しんでいたなんてなったら、いきなり手のひら返しでゴルフは悪の論調になっていただろう。
なかなか事の本質が見えにくく伝わり難い世の中になってしまった感があるが、この渋野の偉業をどう伝えて、ゴルフ界はどう活用していくのか?朝のワイドショーレベルから脱却せねばならないだろう。
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