永久シード選手・片山晋呉プロ(45)が起こしたプロアマ大会での同伴招待客アマチュアへの不快行為について、日本ゴルフツアー機構(JGTO)は6月27日、定例理事会後、記者会見。
「すでに科されている30万円の制裁金に加え厳重注意」の処分を下したことを明らかにしました。除名や出場停止などの厳罰ではなく″厳重注意〝にとどまった裁定。
騒動後初めて公の場に姿をみせた片山晋呉プロは、青木功JGTO会長、石川遼副会長・選手会会長、野村修也JGTO理事・弁護士らと壇上に並び「大変な事態を招き本当に申し訳ありませんでした。
深く反省し、至らなかったところを改め、これからのゴルフ人生の糧にします」と平謝りで謝罪しました。自ら課している「トーナメント出場自粛」はまだしばらく続きそうです。
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都内のホテルに設定された会見場。壇上の片山は何度も深々と頭を下げました。
「一緒に回られたアマチュアの方に不快な思いをさせ、本当に申し訳ない。この20年間、プロアマについて何を教わることもなく、見よう見まねでここまできてしまった。アマチュアの方が1ホール終わって″帰る〝といわれたときも、どうして帰るんだろうと思った。自分の至らなかったところは改めます」と謝罪しました。
片山にしてみれば、いままでずっとやってきたプロアマでの行動・作法のやり方だったのでしょうが、それでは通らない時代になりました。
事件〝の起きた茨城・宍戸ヒルズCC西13番パー3ホールでの細かい状況も、調査委員会からの説明を受けたJGTOが明らかにしました。
調査委員会によれば、ショットガン方式による片山組の最初のホール13番でまず4人(プロ1人、アマ3人)がティーショット。片山プロともう一人のアマH氏がグリーンにオン。そのアマの方がカップに近かったため、この組はアマが打ったボールを、″セカンドボール〝として選択しました。
自分のボールをピックアップした片山は、ここでティー(tee)を3本グリーンへ投げ、同伴アマチュアには「下りのスライスラインですよ」とひとこと伝え、自分は同伴者がプレー中にも関わらず投げたティーをカップに見立てて、パッティング練習を始めました。
一言声をかけたり、承諾を求めたりすることはありませんでした。アマ3人のパットがいずれもカップを外れたため、片山はパッティング練習を中断して、プレーに戻り、プロがパットしたボールはそのままカップイン。片山組のスコアは「バーディー」となりました。
この後、アマチュア3人は14番ティーグラウンドへ移動しますが、片山は終わった13番グリーンでパッティグ練習を継続。グリーン附近ではアプローチ練習も行いました。このとき次の14番ティーへ移動したアマチュアのA氏から大声で「早くこちらへ上がってきてくださいよ」と声をかけられました。
そのため片山プロは練習をやめ、小走りでスカイレーター(動く歩道)で14番ティーグラウンドへ移動します。すると先行する組がまだティーショットを打つ前だったため、片山から「まだ詰まってるじゃん」との発言がありました。
ここでA氏は片山プロに向かって「同組なのに、プロは自分の練習で同伴アマチュアに対する配慮が不足している」との不満をぶつけました。この苦言に対し、片山プロは「すみません」と冷静に対応したと、報告書は伝えています。
そのあと、先行組のセカンドショットが終わったため片山組がティーショットを打ちます。打順はH氏、I氏、A氏、片山プロの順でしたが、A氏はその前、スマートフォンで宍戸ヒルズCC総支配人に連絡しており、自分がティーショットを打ったあと「帰る」と発言します。
総支配人が乗用カートで迎えにきたため、A氏のバッグを積み替えA氏は一人クラブハウスに戻りました。
ただ、A氏がプレーを断念するまでの片山とA氏との一連のやりとりは、片山プロがA氏に対し、暴力的または侮辱的な発言や行為を行った事実は認められなかった、と報告書は述べています。
けげんな表情の片山プロ。しかし、プロと残った同伴アマ2人は、14番ホール以降もプレーを続け、18ホールを全てホールアウトしました。
クラブハウスでは、大会委員を務めていたF氏、本大会のツアーディレクターが、A氏からの訴えに基づきプレーを終えた片山プロから事実経緯の確認を行い、青木功会長を交えて対応を協議。その結果、片山プロの対応が同伴アマチュアに対する「不適切な対応」または「不快感を与えるような態度をする行為」に該当するものと判断。
片山プロに対して30万円の制裁金を科すことを即決(本懲戒・制裁規程第15条による)。プロアマ大会の表彰式終了後、片山プロにその旨通告が行われました。
騒動はここで終わらず、さらに調査委員会を設置し、本調査を実施することに決定。6月中には懲戒・制裁委員会を設け片山プロへの追加処分の要否を決定するとし、27日の理事会への報告提出となりました。
結果は「片山プロが同伴のアマチュアに対して暴力的または侮辱的な発言や行為をおこなった事実は認められない。また自らはトーナメント出場自粛を公表しており、すでに一定の制裁を受けている」とし、さらに不快を与えた招待客のアマチュアにも片山プロが謝罪している。
A氏もこれを受け入れ、片山プロの現場復帰を望んでいるという。よって機構側としても出場停止などの懲戒処分を科す必要はなく、追加処分は「厳重注意」にとどめるとの決定をしました。
JGTOは2016年3月に就任した青木功会長、さらに機構副会長および選手会長に就任した石川遼ともども、プロアマ大会におけるホスピタリティの強化を打ち出した矢先の出来事でした。
プロとアマチュアの打つティーグラウンドを同じにしてコミュニケーションの機会を増やしたり、プロが個人的な練習を行う場合にもそのタイミングをわきまえ、アマチュアの了解を得るなどの気配りを実行しているプロも多くなりました。
彼なりに20年間やってきた片山プロの応対ぶりは、積極的にアマチュアに″サービスする〝タイプのプロではなかったのは確かです。
「一流プロと一緒にプレーできるだけで喜び」としてきた古いアマチュアの思考も、新しい時代では通用しなくなってきたとみるべきでしょう。
意に沿わないと、生涯獲得賞金21億6658万円余(2位)を生み出している31勝の永久シードプロを投げやってでもプレーを放棄してしまうプロアマの時代です。
「時代が変わったのかな」とつぶやいたのは45歳の片山プロの本音かもしれませんが、いまやプロ側の徹底した意識改革の必要性が迫っています。相手はメインスポンサーではなかったのようですが、スポンサーの1人ではあったため、JGTOも大あわてで事態の収拾に当たりました。
ツアーを開催するには1試合で4~5億円はかかる男子プロツアーです。スポンサーにそっぽを向かれたら生きていけない世界なのです。
戦列復帰の時期については明確にしていませんが、男子ツアーは7月は2試合、8月は1試合しか試合がありません。しかも7月の2試合のうち1試合は、ISPSハンダ・マッチプレー選手権の予選ラウンド2日間です。
昨季この試合に優勝、今季はシードされている片山プロは、9月5日から開催のマッチプレー本戦からの出場でOKです。
ISPSマッチプレーを主催する国際スポーツ振興協会の半田晴久会長は「ディフェンディングチャンピオンとして、本戦にもプロアマにもぜひ出てほしい」と、個性豊かな片山晋呉の出場を待ち望んでいます。片山の戦列復帰は、遅くてもこのあたりかとみられています。
【この記事は2018-7-2 ゴルフ会員権売買の老舗 (株)桜ゴルフ『児島宏のグリーン見聞記』に掲載したものを転載しております】
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