今から52年前、東京ゴルフ倶楽部でのプロ月例会のラウンドについて歩いていたときのことです。
「オイ、大西これをカップインさせるから見てろ」
と、トラさんはバンカーから叫んでグリーンの芝目を読みにに行きました。
その頃は芝目の強い高麗芝だったので、芝目を読むことが今よりもっと重要だったのです。
そして、グリーン手前のバンカーに入れたトラさんは宣言通り、カップインして見せたのです。
その時私が見た光景は、
今でもハッキリと目に浮かぶくらい、衝撃的なものでした。
そんな衝撃を受けた私は当時、アマ選手で千葉CCのハンディー2でしたが、更なるレベルアップの為にその高度な技術を習得したくなりました。
トラさんの言うとおり、板切れを持って行くと、
「その上にボールを置いて打つ練習をしろ」
とだけ言うと後は何を聞いても答えてくれませんでした。
打つたびに板をたたく音がするので、とても恥ずかしかったのですが
不思議なことに上手く打つと、ボールは高く舞い上がる。
こうして練習を重ねるうちに、板とボールの間にフェースをくぐらす要領を会得していったのでした。
このレッスンは愛弟子の樋口久子さんも聞いたことがなかったそうだから、私が受けたアマ用の特別レッスンだったのでしょう。
「板の上のボールを打つ練習をしろ」
寅さんのアドバイスはそれだけだったのですが、
理屈ではなく、自分で感覚を身につけるのが大切だと知ったことも
その時の貴重な体験でした。
この練習は、雨で固くなったバンカーや悪いライからのアプローチなどにも有効でしたが、
それがタイガー・ウッズで有名になったロブショットだと言うことは知らなかったのです。
あれ以来、板の練習はしていませんが、もう一度練習した時は、新たな感想などご報告します。
さて・・・。
暫く経ったある夜、トラさんは砧の練習グリーンでパットの練習をしていました。
「真っ暗でホールも見えないのに」というと
「インパクトで良い音がするかどうかをチェックすれば良いのだ」と
これまた、ぶっきらぼうな返事でした。
何かにつけて名手の考えることは違うなと今も印象に残っています。