動き出した日本のゴルフ~これからのゴルフ界に望むこと~
ここ数年、日本のゴルフ界が動き出している。女子ツアーの宮里藍選手をはじめとする若手選手の活躍、それに伴うギャラリーの増加、テレビ視聴率の伸びなど、徐々に明るい兆しが見え始めている。ゴルフ場、ゴルフ用品、ジュニア育成などの分野でも、同様の兆しが見える。そこで今回は当協会のメンバーに、現在の日本のゴルフ界について、それぞれの得意分野の出来事を分析していただき、冷静かつ熱く語ってもらった。
日本のゴルフ界も満更でもない ~薬師寺 広~
今年は宮里藍プロの活躍で女子ツアーが注目を集めているが、男子ツアーも満更でもない。今年は名の知れない中堅選手の活躍が目立っている。例えば、マンシングウェアオープンKSBカップで優勝した三橋達也。初日から好調に飛ばし、記者団からも誰?という声が聞かれたほどの無名選手。片山、宮本、横尾と日大の同期ながらこれまで成績を出せなかった三橋が同期の三羽カラスを抑えて優勝。私はテレビで優勝インタビューをしたが三橋プロは初優勝ながら涙も見せず、終始、笑顔を絶やさず冷静に自分のプレーを振り返っていた。
JCBクラッシック仙台では、こちらも無名の神山隆志が中嶋、近藤とのプレーオフを制し優勝した。私と神山プロと出会いは96年まで遡る。神山プロはフロリダ・オーランドで修行し、アメリカのミニツアーを転戦しながら腕を磨いてきた苦労人だ。当時、ゴルフ専門テレビ局に勤めていた私は黙々とボールを打っていた神山プロの姿を6年間見ていただけに、今回の優勝は自分のことのように嬉しかった。努力してきた結果がやっと報われたのだ。諦めず、自分を信じて努力していれば優勝出来ることを改めてこの二人は教えてくれた。今、一生懸命、夢に向かって進んでいる若手プロにどれだけ勇気を与えたことだろう。日本のゴルフファンはもちろんのこと、日本のゴルフ界は底辺からはい上がって来たこの様な選手の出現を待ち望んでいたのではないだろうか。決して派手さはないが強い選手は生まれてきている。日本のゴルフ界も満更でもない。
力はあってもツアーに出場できる選手は、ほんの一握りである。JGTOもプロテストに合格しなくてもツアーに参加できるように、欧米同様にQスクールを取り入れてはいるが、今、当たっている選手にもチャンスを与えるマンデートーナメントが増えて来ることを切に望むものである。視聴率にとらわれ、有名選手中心の試合中継をゴルフファンは本当に望んでいるのだろうか? 夢に向かってはい上がってこようとしている選手の無心に戦う姿を本当は心待ちにしているのではないだろうか?
日本のゴルフ界から世界に羽ばたく選手を育てる意味でも強く望みたい。