日本ツアーが観るプロスポーツとして魅力を持つ日は来るのか日本のトーナメントを変えたい!
日本でもアメリカツアーに本気で挑戦する選手が現れてきた。また衛星放送の普及で、一般のゴルフファンでも容易に欧米のゴルフトーナメントをテレビ観戦することができる環境が整った。そこで囁かれだしたのは「日本のトーナメントは何故か面白くない」ということである。海外の試合を経験した選手からも、そして欧米ツアーをテレビ観戦するファンからも同じような声が発せられる。そこで日本のツアーが何故面白くないのか。そしてどうすれば魅力あるトーナメントになるのか。主に戦いの舞台となるコースにターゲットを当て、5名の論客に健筆を振るってもらった。
いいゲームは、いい舞台、いい役者がいて初めて成立する。まず初めにいい舞台ありきが絶対条件だが、悲しいかな日本のプロゴルフトーナメントには、この「いい舞台」が極めて少ないと日頃から感じていた。舞台が優れていなければ、役者であるプロゴルファーもいいプレーを引き出すことはできない。そうした安易な設定の中では感動するシーンも少なく、それがファンに物足りなさを感じさせてしまう。また役者の方も楽な舞台に慣れてしまうと、たまに厳しい舞台が現れると、それについていけず不平が出る。これが現在の日本のツアーの低迷にもつながっているのではと常々危惧していた。そんな折に、若手プレーヤーの一人、谷口徹プロが「日本に本当のトーナメントコースはない」という発言を堂々としたので、ビックリすると同時に、日本のゴルフもそう捨てたもんじゃないと、安心した。で、早速谷口プロに真意を質してみた。反応は予想以上に強かった。
││日本のツアーには本物のコースはほとんどないと言いましたね。その真意は。
谷口 ツアー機構などは、バーディをどんどん出すことがファンサービスだと思ってやさしいコース設定にしていますが、勘違いもはなはだしいと思います。アマチュアがプロに求めるのは、難しい設定の中で、プロでしかできない高度な技術を見せてくれることだと思うんです。その代価に僕らは高い賞金をもらうんです。
││選手の中にも、難しいコースでボギーを出すより、やさしいコースでバーディを出す方がファンが喜ぶと思っている人が多いのでは。
谷口 そんな考えだったら、賞金なんか当てにせず、自分達だけで試合をやればいいんです。僕達プロは、最高のものを見せることが商売なんです。自分達の都合でゴルフをやっているんじゃないんです。
││具体的には、何が欠けているんですか。
谷口 ゴルフのゲームを引き出すコースの選定や、設定が極めて安易です。例えば、ハザード一つ取っても、浅いバンカー、浅い池で、それが障害にならない。ハザードに入れることは本来ミスで、ペナルティを覚悟しなければならない。でも日本はそこから簡単にバーディが取れる。これではナイスショットした人が報われない。本当のフェアなコースとは言えません。それにそういう安易なコースでは、精度の高いショットや、スイングも作ることができない。高い技術や、精神力も身につきません。
││外国は違いますか。
谷口 欧米のコースはシビアです。ハザードはハザードとしての役目をきっちり果たしている。そこに入れたらまずパーを取ることも難しい。だから選手は正確なショットを身につけるべく精度の高いスイングを研究するのです。それにミスをしたらそこから脱出するために、いろんな技術の練習をする。向こうのプロがアプローチや、トラブルショットが上手いのはコースがそうさせるのです。
││ただ難しいだけですか。
谷口 そうじゃないんです。例えばショートアイアンでピンをデッドに攻めたとき、いいショットをすればボールはきっちり止まる。技術、勇気がきちんと報酬となって表れる。だから選手は積極的にピンを狙ってくるし、それがファンに感動を与え、ツアーが活気を帯びる。その最大の理由はミスとナイスショットがきちんと表れるコースにあると思います。
││日本にはトーナメントに適するコースはありますか。
谷口 もちろんあります。ジャック・ニクラス、ピート・ダイなどの設計したコースは十分プロの能力を引き出す内容があります。困難なコースで、プロが全身全霊を尽くして挑戦する姿を見てファンは満足します。それがツアーに活気を吹き込み、ゴルフの普及に貢献します。今の生ぬるい環境では僕は不満。ツアーが暗いのは消化不良の状態が蔓延しているからです。ゴルフはチャレンジのゲームです。困難に挑戦する本当に面白いスポーツなんです。ツアーを魅力的にするためにも、僕らをうんといじめるようなコースを選定して欲しい。ツアー機構も、スポンサーも、マスコミもゴルフの発展を考えて一致団結して、そのことに取り組んでもらいたい。もちろん僕達プロも現状に甘えてはいけないと思う。はっきり言いますが、今のまま(現状のコ―ス設定)では世界に通用するプロは育ちません。思い切った改革が必要です。
(聞き手 宮崎紘一)