世紀末の問題提起特集~2グリーンではタイガー・ウッズは生まれない。顕著な例はパー5にあり ~大西 久光~

2グリーンが日本のゴルフの国際化を阻んでいるのは、本当か!?
2グリーンでプレーさせられているのは日本のゴルファーだけである

 「日本ではゴルフに似たスポーツが行われている」。この言葉は、かつて日本を訪れ、2グリーンのゴルフ場を見たあのジャック・ニクラスが語ったものだという。つまり、2グリーンは日本以外の国でゴルフとかかわった者にとっては、アン・ビリーバブル! な代物なのである。しかし、日本の中でゴルフに出合い育った多くの日本人ゴルファーにしてみれば、2グリーンに違和感を覚えることは少ない。その一方で「ゴルフというスポーツは1グリーンのゴルフ場で行うのが世界の常識であり、2グリーンの是非は論ずる問題に値しない」という厳しい指摘も実際に存在する。さらに「2グリーンでは国際的に見て、真のトーナメントも開催できないし、何より国際的なプレーヤーが育たない」という意見も少なくないのである。そこで何故2グリーンはいけないのか!? に焦点を絞り、多くの見識者に寄稿していただいた。
(構成・日本ゴルフジャーナリスト協会事務局)

2グリーンではタイガー・ウッズは生まれない。顕著な例はパー5にあり

日本ゴルフ場設計者協会理事長 大西 久光
1グリーンと、2グリーンの差がどこにあるかを具体的に説明いたしますと、ロングホールを比べれば、歴然とします。この近年は用具や、ボールなどの進化で容易に2オンするようになりました。これが日本の多くのコースに見られる2グリーンですと、外しても簡単に1パットのバーディが取れます。
極端にいえば、もう一つのグリーンを狙えば、ホールのレイアウトの形状からもアプローチは易しいからです。
ところが欧米の1グリーンは、グリーンを外すと、池や深いラフ、ハザードが効いてアプローチが大変難しくなります。乗らなかったときのリスクは、2グリーンのコースと比べるとはるかに大きい。つまり2オンを狙うのは、ある意味では無謀であり、相当な覚悟と、それだけの技術、精神力を必要とします。
タイガー・ウッズが簡単に2オンしているように見えますが、あれは飛ぶためだけではなく、危険を乗り越えるだけの、技術と勇気に裏づけされているのです。
1グリーンは、インサイドワーク、コースマネジメントなどが否応無く要求されます。それがゴルフの質を高め、人間としての幅を大きくし、謙虚さも生まれます。単に形状の違いと片付けられないのです。

〈プロフィール〉
大西 久光(おおにし ひさみつ)
1937年兵庫県西宮市生まれ。59年関西学院大学を卒業し、日本ダンロップ(住友ゴム)に入社。99年住友ゴム常務、及びダンロップスポーツエンタープライズ社長を退任し、ターゲットパートナーを設立し、代表取締役に就任。日本ゴルフコース設計者協会理事長。