From member’s Voice
21世紀を目前に控え、ゴルフ業界は未だ低迷状態が続いている。来年は日本にゴルフが伝わって100年という節目を迎える。ご存知のとおり、ゴルフ業界では一丸となって「ゴルフ100年祭」を開催することで、明るさを取り戻そうとしている。
そこで今回のフロムメンバーズボイスでは「日本ゴルフ界をさらに発展させていくには」を主たるテーマとして、会員4名に代表して助言、提言などの意見を寄せてもらった。
ゴルフでは、プレーヤーとキャディーとの信頼関係がことのほか重要である。メンタル面がプレーに大きく作用するだけに両者のコミュニケーションがうまくいかないとスコアもまたよくならない。ツアープロがかなりの大金を払ってでもお気に入りのキャディーと専属契約を結ぶのもそのためである。
それほどプレーヤーにとって大きなウェートを占めるキャディーにもかかわらず、アマチュアの場合はまったくといっていいほど自分で選ぶことができない。スタート時間に合わせ、コース側が割り振りしたキャディーとその日一日を一緒しなければならない。多少気心の知れたキャディーとか、はじめて同伴するキャディーでも息の合うキャディーであればその日一日楽しくプレーでき、スコアもそこそこにはまとまるだろうが、万が一嫌だなと思うようなキャディーだと、その日一日は地獄だ。高いプレーフィーを払って遊びに来て、不愉快な思いをして帰るようでは、それこそなんのためのゴルフかわからなくなってしまう。
これは、私の学生時代の友人が先日あるゴルフ場で実際に体験したことだといって打ち明けてくれた話だが、聞かされているうちにこちらまで嫌な思いにさせられたので、あえて紹介させてもらう。
彼についたキャディーは中年女性で、もう10数年の経験を持つベテラン。グリーンまでの距離、芝目の読みなどはさすがに光るものがあったそうだが、なにせおせっかい焼き。セカンドショットを打とうとクラブ選択に入ると「残り何ヤードだから、何番アイアンで打ちなさい」といって、自分で選んだクラブを有無をいわせず差し出す。グリーン上でも然り。彼が芝目を読んでいると、「ここはスライス・ラインでかなり切れる。カップに向かって順目です。50センチは左に打って下さい」と機先を刺す。そのあまりのさし出がましさに、これでは自分本来のプレーができなくなると思い「キャディーさん。ボクが聞いたときだけ答えてよ」というと、そのあとは完全無視。「グリーンまで残り何ヤード?」と問いても、「さあ…」とそっぽを向いたままだったという。
このキャディーはなにも悪気があっておせっかいを焼いたわけではないだろう。親切心からアドバイスしたに違いないと思う。しかし、ゴルフはあくまでもプレーヤー自信がいろいろな状況を的確に判断し、自分の全責任においてプレーする。だからこそ無我夢中になれるのであって、キャディーはあくまでもそのプレーヤーの助言者、補助者にすぎない。そのことをキャディーも忘れてはならないのではないか。プレーヤーが主なら、キャディーは従。この法則が崩れたとき、ゴルフはゴルフでなくなる。
そこで、これは私からの提言だが、スタート前にはプレーヤー、キャディーとも、「おはようございます。私は○○です。今日一日よろしくお願いします」と挨拶を交わすようにしてはどうだろう。そして、キャディーはプレーヤーから質問されたことにできるだけ的確に答える。そうすれば、プレーヤー、キャディーとも一日楽しくプレーでき、いいスコアもマークできるようになると思う。
セルフ・プレーならともかく、キャディー同伴のプレーではその日一日5、6時間は一緒に過ごすのだから、楽しい時間を共有したいものだ。
〈プロフィール〉渡辺 司郎(わたなべ しろう)
1954年産経新聞入社。その後サンケイスポーツに移り、主にゴルフ記者として取材活動をする。定年退職後はフリーライターとして主に雑誌にゴルフレッスンものを連載。現在(有)司ゴルフ企画代表取締役、日本ゴルフジャーナリスト協会会員、東京運動記者クラブ会友、日本アジアシニアゴルフ協会会員。プロゴルファー渡辺司の父。