コロナ禍においてゴルフがちょっとしたブームになっています。業界誌を読むと、広々とした屋外でプレーするゴルフは三密を回避でき、感染症対策さえ守れば安全にプレーできると認識されたことがその要因と分析しているようです。さらに、キャディを付けないセルフプレーや、ハーフで昼食休憩を挟まないスループレーの導入が進み、格安かつ時短でプレーできるゴルフ場が増えてきました。徐々に若年層の参入が増えていることもブームの後押しになっていると考えられています。
ゴルフ場利用者数は、2020年4~5月の緊急事態宣言中は、さすがに対前年同期比で35%減(580万人減)と大幅に落ち込んだものの、同年8月の対前年比では18%増(126万人増)に転じ、同様に10~12月の3ヶ月間でも100万人程度の増加となったとのこと。(月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド 2021年5月号P60 参考)
練習場の利用者数もゴルフ場と同様に増加の傾向にあるようです。関東エリアの約50施設の対前年同月比の推移をみると、2020年は10.3%増となりました。2021年に入ってもその傾向は下がらず、1月は11.4%増、2月は10.0%増で推移しています。(同誌P82 関東ゴルフ練習場連盟提供データ参考)
松山英樹選手のマスターズ優勝や、笹生優花選手の全米女子オープン優勝が、このゴルフ人気に拍車をかけているようです。ゴルフをする人が増えて業界が活気づくのは良いことですが、一方で、私はこのブームに危機意識を持っています。なぜなら、ブームは一過性で決して長くは続かず、勢いのあるときには意外な落とし穴が潜んでいるからです。ゴルフプレーを例に考えてみましょう。
好調期に潜む落とし穴、課題意識のある人ほど成長する
比較的高い確率で真っすぐなボールが打てる人は、ボールが曲がったときのリスクを考えずにコースを攻めているケースが多いです。しかしながら、プロでも上級者でも100%ボールを曲げずに打てるという人はまずいません。よって、リスクを想定せずにコースを攻める人は、ボールが予想しない方へ飛んでいって大叩きする結果となります。逆に、ボールがよく曲がるという課題を抱えている人は、慎重ゆえに大きなミスをすることなく、スコアをまとめることができます。
スライスが多いプレーヤーなら、ティイングエリアの右端にティアップし、フェアウェイの左サイド、もしくは左のラフを狙ってコースを狙って攻めていくでしょう。コースを対角線上に斜めに利用するためプレーエリアを広く使うことができ、多少曲がってもフェアウェイをキープする確率が高まります。想定以上に大きく曲がってしまっても、せいぜい右ラフぐらいで止まってくれます。つまり「ボールが曲がる」という問題点を、攻め方の工夫で克服しているわけです。
バンカーが苦手という問題を抱えている人は、バンカーを徹底して避けるよう攻め方を工夫します。一方、なまじバンカーに自信がある人はバンカーへの警戒心が希薄です。バンカー越えでピンをデッドに狙うなど無謀な攻め方をして難しいバンカーに捕まり、結果大叩きをしてしまいます。
めったにボールは曲がらない、バンカーなんて怖くない、といった過信や慢心がある人は、努力や工夫を怠り、油断を生み、好ましくない結果を招きやすくなります。一方、ボールが曲がる、バンカーは苦手といった問題を抱えている人は、それ相応に攻め方の工夫をするため、良い結果を得られる確率が高まるでしょう。何より、課題意識を抱えている人ほど、向上心と練習意欲のモチベーションが旺盛です。その結果、自身の成長(ゴルフの上達)につながるわけです。
ブームに浮かれることなく、ゴルフ業界にもイノベーションを!
企業の成長も同じではないでしょうか。好景気にのって業績が好調であることにあぐらをかき、時代の変化に対応できず淘汰されていく企業は数多くあります。コロナ禍は世界各地で大きなインパクトを与えています。いま生き残っている企業は、さまざまな経営リスクを克服するべく奮闘し、事業を維持・成長させてきました。それは、リスクとしっかり向き合っているからこそ為し得ていることだと思います。そして時に、それが業界に変革をもたらすイノベーションとなり、経済の発展に大きく貢献してきました。
私が今のゴルフブームに危機意識を抱いているのは、ゴルフ人口の減少に歯止めをかけるだけの「これは画期的!」と思えるイノベーションに、まだ出会えていないことにあります。
英国で発祥したゴルフが世界中に広まり、日本でも多くの人々がゴルフを楽しんでいます。その間、クラブやボールは劇的に進化し、ゴルフウェアの機能やファッション性も大きく変化しました。ゴルフをはじめる動機や目的も、日本の場合、かつてはビジネス上の接待、上司との付き合いの意味合いが強かったものが、最近では純粋にゴルフを楽しみたいというプレーヤーが多くなっている印象です。
このように、ゴルフを取り巻くハード(クラブやウェア)やハート(動機や目的)は変化しているものの、残念ながら、ゴルフ人口は減り続けています。2001年に1,340万人だったゴルフ人口は、2019年には580万人と半減しています。ブームが続く間は良いものの、根本が変わらなければ市場の維持・継続は難しいのではと思います。
東京2020オリンピックでは、男女ゴルフ競技が霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)で開催され、世界中の注目を集めるでしょう。他のレジャーに比べたら、ゴルフの市場規模はまだまだ大きく、追い風です。私はゴルフ業界に身を置く者として、ブームに浮かれることなく、微力ながらゴルフ界にイノベーションを起こすべく、さまざまなことにチャレンジしていきたいと思っています。
私もスライスボールで苦労します。それなりに、まとめていますがやはりまっすぐとぶ練習は怠りません、
それなりにまとめられているから良しではなく、スライスを克服しようという向上心と努力が成長を促すのだと思います。