リオオリンピックの真実
2016 年8月5〜21日の17日間にわたって開催されたリオデジャネイロオリンピック2016。
28競技306 種目が行なわれ、メダルラッシュもあり日本中を大いに沸かせてくれたオリンピックとなった。そんなリオオリンピックをスポーツカメラマンである小中村政一氏が取材撮影。様々な競技を撮影する中で、見えてきたリオオリンピックの光と影をレポートする。
国民に歓迎されなかったオリンピック
2016年リオデジャネイロオリンピックが8月3日に開幕した。
事前に伝えられていたメディア報道では、政治不安で相当治安が悪化しているという報道が常に流れていた。
私自身も今年の3月から4月にかけて、オリンピック会場とその周辺の視察撮影を行いにブ
ラジルに向かったのだが、その時の現地通訳ガイドもブラジルのなかでもリオ・デ・ジャネイロは特に危なく、ブラジル人でも行きたくない街の一つだと言っていた。
また、視察の時に一つ気になったことがある。それは、オリンピックまで4カ月を切っているというのに街の中にはオリンピックの幟や看板などがほとんど見かけなかった。あったのは空港やたまに見るオフィシャルショップだけ。
これだけでもオリンピック開催がブラジル国民に歓迎されていないことがよくわかった。
オリンピック開催は歓迎されてはいないが、サッカーだけは別のようだった。IOCとFIFAは非常に仲が悪ことで有名だが、その煽りをもろに受けているのがオリンピックだ。サッカーを知らない人に少し補足説明をしよう。オリンピックは4年に一度の祭典だ
が、そのオリンピックの年にサッカーもまたワールドカップとは別に4年に一度の祭典を行っている。
それが南米選手権とヨーロッパ選手権だ。簡単に説明すると、ヨーロッパの一番と南米の一番を決める大会である。この2つの大会が、オリンピックの直前に行われる。サッカー選手もチーム関係者も、重点とする大会はオリンピックよりこの2つの大会の方だ。
今回のパターンで見てみると、まずオリンピックに出場しているサッカーチーム国で、ヨーロッパ、南米選手権に出場しているチームは何チームかある。代表的なチームが、ブラジル、アルゼンチン、ポルトガル、スウェーデンなどである。またオリンピックサッカーは23歳以下の選手で構成されるチームで、3人だけオーバーエイジが適用され無条件で出場できるという条件付きの開催となる。そんななか、アルゼンチンを見てみると皆さまご存知リオネル・メッシ選手はアルゼンチン代表として南米選手権には出場をしているが、オリンピックは不出場。またポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドも同様ヨーロッパ選手権に出場をしているが、オリンピックは欠場。スウェーデン代表のイブラヒモビッチ選手も同様である。
なぜかというと、これはチーム事情が大きく関わっている。サッカー選手は、クラブチーム側の契約で一年間拘束される。すなわち極論を言えばクラブチームに代表戦に出てはダメだと言われればそれまでである。簡単に言うとクラブチームとしては、高い年棒を支払っているのはチーム側で、代表で試合出場しても何のメリットもなく、代表戦で怪我をされることを一番恐れている。そんななか、チームとしては、オリンピックとヨーロッパ選手権、南米選手権両方出場はどのチームも認めていないということだ。すなわちサッカー選手として評価が高くなるFIFA 主催であるヨーロッパ選手権、南米選手権を皆選ぶというわけだ。
112年ぶりにオリンピック競技としてゴルフが復活
前置きが長くなったが、そんな中ブラジル代表としてオリンピック初めての金メダルを獲得するという意思を表明し、南米選手権を外れオリンピックにかけた男がいた。それがネイマールだ。ネイマールはサッカー大国ブラジルとして、オリンピックの金メダルを母国開催で獲得する意思を示した。
ある意味この表明が、ブラジル国民に大きな影響与えた。全くオリンピックに興味のない国民たちに興味を示させた。
ブラジルの治安はサッカーブラジル代表の勝ち負けで大きく変わるというぐらい大きな影響力を持っている。そんななかでオリン
ックは開催されたのだが、チケットの売れ行きはサッカーと水泳、テニス、バスケット、体操など世界的に人気の競技だけ売り切れて、他の競技は全く売れてはいなかった。また、安い席から売れて、高い席は人気のカードであっても売れ残っていた。それでもあくまでも私の感覚だが、当日券の売れ行きは良かったように思える。
リオのオリンピックはメイン会場の敷地内にほとんどの施設があり、一日頑張れば4から5試合は観戦できてしまう。その日のお目当の競技を観戦しに行ったとしても他の競技も観戦できてしまうため、当日券の売り上げは良かったように思う。
オリンピックの二大柱は、水泳と陸上である。意外に知られていないのだが、オリンピックは水泳と陸上は開催が重ならないように毎回配慮されている。
前半が水泳で後半が陸上というようにスケジュールが組まれている。そして112年ぶりにオリンピック競技としてゴルフが復活した。復活した理由はいろいろとあるだろうが、一番大きな理由としては放映権やスポンサー収入の多さだろう。ここでサッカーの話を詳しくお伝えさせて頂いたことが生きてくるのだが、結局オリンピックで選手たちには名誉しか手に入らず、収入という面ではほとんど期待ができない。すなわち、その競技で稼ぎがいい選手はオリンピックに出場するより、オリンピック期間中に開催されている試合に出場したり、休んで本職に専念するなどしたほうが大きなメリットになるから出場しないという理由がほとんどである。これはサッカーだけではなくゴルフも同様と言える。結局、男子プロでいうと世界ランキングトップ10の中で出場した選手はわずか4人である。
日本も松山英樹選手、谷原秀人選手が出場資格を有するにも関わらず、出場を見送った。もちろん治安の面や、ジカ熱の心配などもされているので一概に収入面だけの問題ではないが、いろいろと課題は残ったであろう。
(続)
GOLF&GOLF 12月号 掲載