JGJA ムーンレイクゴルフクラブ市原コース勉強会

JGJAは2024年7月23日に「ナイターゴルフは熱中症予防になるか?」の実体験を兼ねて、ナイターゴルフに関しての勉強会を千葉・ムーンレイクGC市原コースで実施した。

同GCでの勉強会にはJGJA会員12人が出席。ナイター用のLED照明を開発、ゴルフ場はじめスポーツ施設にナイター設備を販売・施工している株式会社スリーエスの櫻木邦善会長と、同GCを運営するパシフィックゴルフマネージメント(以下PGM)から同GC滝口和祐支配人、PGMマーケティング部マーケティンググループの須賀隆グループ長にナイターゴルフについての話を聞くとともに、質疑応答を行った。

 

まず、櫻木会長が同社で開発したLED照明について解説した。「昨今の異常な猛暑で、屋外スポーツはこれから見直されるんじゃないか、朝早くスタートして昼間の暑いときはやらずに夕方から夜にかけて始まる。気候変動による暑さ対策でナイター(でスポーツ)をする人口が増えてきている。照明というものはアスリートにどれだけ快適なプレーをしていただけるか」と、暑さ対策としてのナイターの必要性を強調した。

照明に関する専門的な説明は同社HPに譲るが、光には照射対象に届く有効光束と届かない無効光束があり、光公害などになる無効光束を少なくすることが必要。同社では独自のレンズ、デュアルレンズを開発。通常50%前後の有効光束を86%に上げた。「アンジュレーションがあったり、クリークやバンカーがあったりするゴルフ場で光を目的の場所に届けられるようにした」という。プロゴルファー羽川豊をアドバイザーとして起用し、実際にプレーして光が行き届いているかの確認なども行っている。

韓国の提携会社がナイター施設を提供しており、自身も視察してきた。韓国では600コースほどのうち、100コースほどでナイター設備を導入しており、同社で88コースを手掛けているという。韓国で盛んなのは日本の半額以下の電気料金によるところが大きいそうで、昼間よりも夜の方が需要が多く、料金が高い「逆転現象」も起きているという。

「日本もそうあるべきじゃないかと思います。たとえば、雪国は営業できる期間は6、7カ月しかない。最終スタートを30分延長することで6組入る。ナイター設備にかかる費用、その費用対効果がどうか、プレーヤーに快適な環境の提供すればゴルフ人口が増えるのではないかと考えている」と話した。

ナイター設備を導入するためにはどのぐらいの費用がかかるのか。通常、18ホールでポール100本程度、1本のポールに電球4台を乗せるそうで、コースの状況にもよるが「通常は4億円程度」という。また、すでに水銀灯を設置しているものをLEDに替える場合は「1億円程度」という。LEDにすることで電気代は半減する可能性があるそうだ。

費用対効果が重要だが、ナイター設備は今後のゴルフ場営業の1つの核になる可能性を秘めているようだ。

 

続いて、ナイター設備導入に積極的なPGMから、滝口支配人、須賀マーケティンググループ長が、同社が運営するナイターゴルフ場についての説明をした。

同GCを運営するPGMでは、運営する148コースのうち6コースでナイターゴルフの営業を行い、8月に2コース、12月に1コースで新たにナイターゴルフを開始する予定。

今回の会場となったムーンレイクGC市原コースでは2017年に水銀灯からLEDに交換し、ポール数115本、電球520球で18ホールのナイター営業をしている。電気は自家発電機で供給している。

ナイター営業の実績について、滝口支配人は「市原コースは8万2000人、うちナイターは2万8000人。この時期は昼夜の料金が逆転しています。ナイターの方が若干高い」という。猛暑の時期、ナイターの需要が多いということだ。

この時期は60組ほどナイター枠を設定しているが、予約に関しては「金土曜日を除いてほぼほぼ当日予約。金土に関しては今の時期は前日に満枠になってしまうことが多い。予約は後ろのスタート時間から埋まっていきます」という。最終スタートは20時で「24時30分までは風呂に入れます。レストランはやっていません。受付が終わると、1階と地下のシャッターがおりて、地下にロッカー、お風呂がありますのでそこで済ませていただく」という。クラブハウスの形状などもナイター営業への向き不向きがありそうだ。

ナイターを利用する年齢層は「10代から30代までは通常だと20%強なんですが、当クラブでは先月(6月)は37%。40~50代は41%、その分60代以降がかなり減ります」と、ナイターはいわゆる「現役世代」が仕事を終えて利用するケースが多いようだ。

また、女性比率もPGMが運営するナイターがある6コースで昼間は15%、ナイターでは19%と高くなっている。「ナイターの場合は2サムがほとんど。割増は取っていません」というので、カップル利用も多いようだ。

コストに関しては一番大きな割合を占める電気代に関して「当クラブは発電機を回していますので、年間で発電機は11万リットル、今単価が93円ですので、1100万円ぐらいの燃料費がかかる」という。

損益分岐点に関する質問には「6月に関しては7200人ぐらい入っていまして、だいたい6000人ぐらい入れば収益的には問題ないかと思います」という。入場者数が減っても、営業時間が短くなって燃料代が少なくなるなど、そのあたりのバランスの問題になる。

利用するゴルファーから見ると、ナイターの良さは房総方面のゴルフ場で昼間のプレー後に見舞われるアクララインなど道路の渋滞の回避。行きも帰りもスムーズに移動できる。「市原地区でゴルフをやった方が、交通情報でアクアラインが10キロ渋滞していたら、当クラブでハーフやっていこうか、という話がでるのは聞きます」と、飛び込みのゴルファーもいるらしい。

メリットが多い感じがするので「24時間営業はどうか?」という問いには「どうしても芝は休ませないといけない。今がギリギリ」と、コースコンディションを保つには芝の休息が必要なようだ。

さて、肝心の暑さ対策、熱中症予防にナイターゴルフは効果があるのだろうか。「実際にプレーしてみてください」と送り出された。ちなみに、この日は市原市で今年最高の気温39度を記録し、全国的にこの夏一番の暑さとなった日だった。

初めてのナイタープレー(9ホール)の筆者個人的な感想を簡単に。18時過ぎのスタートだったが、すでに日が傾いており、昼間のような直射日光ではないため、日差しの強さはない。この日は風が吹いていたので、どちらかというと心地よかった。今回は座席に送風が送られる「クール・カート」を使用し、凍らせたスポーツドリンクのペットボトル、塩タブレット、着替えなどを熱中症対策で持ち込んだが、あまり関係なかった感じだった。日焼け対策はしていない。

 

スタートして3ホールほどはまだ日が残っており、昼間と同じ感じ。日没後、3ホールほどはいわゆる薄暮で空に明るさが残っているため、普通の白いボールは見にくい。「光るボール」というのを試してみた。打つと光るタイプと、ボールにスマホなどで光を当てると光って色も変えられるというタイプ。飛距離が3割減ほどになるが、見やすくなる。

上がり3ホールは空も真っ暗になり、通常のボールでも見やすくなる。光るボールだと、夜空に打ち上がるときれいだ。スコアなどをガチに追うのではなく、友人、カップルでゴルフを楽しむ、そのために演出するという使い方がいいのだろう。

明るさは昼間の明るさを求める人には暗いだろうが、林の中に入ったボール以外は、探すのは容易だった(昼間も同じか)。ただ、グリーンやフェアウエーのアンジュレーションが昼間よりは見にくい感じがした。

日中の最高気温39度だったとは思えないほど、涼しい中でゴルフが出来たことは確かだった。覚悟していた大汗はかかず、3本持ち込んだペットボトルは2本空けたが、もちろん、熱中症にはならなかった。

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ABOUTこの記事をかいた人

1959年北海道札幌市生まれ。札幌南高―北海道大学工学部卒。82年日刊スポーツ新聞社入社。同年から計7シーズン、ゴルフを取材した。プロ野球巨人、冬季・夏季五輪、大相撲なども担当。2012年、日刊スポーツ新聞社を退職、フリーに。
著書に「ゴルフが消える日」(中公新書ラクレ)、「ビジネス教養としてのゴルフ」(共同執筆、KADOKAWA)
日本プロゴルフ殿堂、国際ジュニアゴルフ育成協会のオフィシャルライターでHPなどに執筆。東洋経済オンラインでコラム「ゴルフとおカネの切っても切れない関係」を担当。趣味で「行ってみました世界遺産」(https://世界遺産行こう.com/ )を公開中。
【東洋経済ONLINEより】
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