LPGAツアーやPGAシニアツアーの大会など多くの競技を開催してきた千葉・富里ゴルフ倶楽部(GC)が、2023年12月31日をもって閉場する。JGJAでは5月17日に、同GCで勉強会を実施。プレー体験後、カレドニアンGCとともに運営する東京グリーン富里カレドニアン株式会社の早川治良会長に、富里GC設立から今回の閉場に至る経緯や思いを聞いた。
今年87歳になる早川会長は、4月1日付で実質の業務を長女の渡辺友美子副会長に託し、自身は相談役の役割になった。
名コースが閉場を余儀なくされたのは、成田空港の第3滑走路の建設に当たってコースの一部がかかるためだ。
「6年前に第3滑走路の計画書が出され、コースの3分の2ぐらいが範囲になっていました。お断りしたのですが計画はどんどん進み、国の仕事なので協力しなければいけないだろうという事で」と、閉場を決断した経緯を話した。
十分な補償が得られると思っていたが、簡単にはいかなかった。
「会員には預り金(預託金)を全額返さないといけない。NAA(成田国際空港株式会社)は『(NAAには全額返還する)責任はない』と話がかみ合わなかった。粘り強く交渉した」。
有力政治家に嘆願書を送ったり、滑走路にかからないホールの土地の買い上げ交渉などで、何とか預託金を全額返せる金額の提示にこぎつけ、会員総会を経て、今年12月31日の閉場を決定したという。
「当初は青天の霹靂。残す方法はないか、千葉県内の他の土地も探したが、3年前に諦めました。国のことを考えると、日本が(世界に)開かれていくのは必要なことだと。(預託金を)全額返還できるので肩の荷が下りました」。
そう話す早川会長の表情は晴れやかにも見えた。「預託金は絶対に返さないといけない」という言葉が何度も。会員への思いの強さが感じられた。
1989年開場に当たっての苦労話などを、ジョークなども交えて披露した。用地買収は一筋縄ではいかなかったという。自身もスコットランドに足を運び、ゴルフ発祥の地のリンクスを視察して回り、コースの設計思想に生かした。カレドニアンとともに、当時は珍しかったワングリーンを採用したのも、早川会長の思いが表れている。うねるフェアウエー、巧妙に配置された池やバンカーなどのハザード、何よりグリーンの速さが特長。同社のカレドニアンGCに「14フィート研究室」を設置し、日々グリーンの研究をしているという。
さて、富里GCをJGJA会員がプレーで体験した。スタート前に「今日は12フィートにしておきました」と笑う座間英二支配人に送り出された。下りや横からのパットには相当苦労した会員が続出。昼食時の話題もグリーンの速さ、メンテナンスのすばらしさだった。
コース内には大きな木が数多くある。年を重ねて熟成されたゴルフ場の風情が醸し出されている。会員からは「何とか残せないものだったのかねえ」というため息が漏れていた。
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