メディアは、人気競技に集中し話題性のない競技には取材撮影をしないという悲しい現状が今でもある
今回のオリンピックは日本が史上最多のメダル数の41個を獲得したわけだが、私自身メダルの数ももちろん大事だが、何よりもその内容が今回は良かったように思う。
と言うのもメダル獲得が史上初めてとなった競技が多数あったこと。それが日本人としてとても誇らしく思えたからだ。卓球男子、バトミントン女子、カヌーそして陸上競技の競歩でも初のメダル獲得をした。
メディアは、人気競技に集中し話題性のない競技には取材撮影をしないという悲しい現状が今でもある。どの競技も日の丸を背負い、日本を代表して戦うという事に関しては、サッカーや体操などと全く変わらない。
しかし結果を出さない限り、メディアに取材さえしてもらえない現状を色々な競技を取材して感じた。またそれだけではなく、同じ競技、同じ協会でも男女の違いで、あり得ないくらい対応の差がある競技も存在した。
それがレスリングと卓球だ。正直、人気が左右するから国内などで差が出てしまうのは仕方がない事だとは思う。ただオリンピックという大会でその差は不要ではないか。協会側も人気にあやかり、人気のあるどちらか一方だけに予算を掛けてしまっては、掛けていない方の人気はまず出ないだろうし、もっと言うなら育成にも影響してくる。これは冷静に考えてもらいたい問題であると感じた。特に今回の卓球に関しては、当初女子に注目が集まっていたが、間違いなく男子が成績もよく、結果を残した。今後の協会の動きにも注目していきたい。
危険だという事も伝えながらブラジルの良さや素晴らしい場所のなどの報道ももっとするべき
最後に今、インターネットが普及し、色々なことが便利になり、色々な情報がすぐに手に入る世の中となっているが、現地で見たことや感じた事を報道するメディアがまだまだ少ない。
と言うのも私は今回のリオだけでなく、サッカーワールドカップの南アフリカ大会なども取材しているが、治安の悪さなどのネガティブ報道が先行して、現場のいいところや見どころなどの報道が少なすぎるように思う。確かに現地に行く人への配慮や身の安全を伝えることは大切だが、その報道はあくまでもネットや現地テレビの報道をそのまま伝えているだけで、極端にネガティブな部分だけを切り取っている。もっと現場にいる人間の生の声をもっと伝えるべきだと思う。現地に滞在するとポジティブな部分もたくさんあるわけだから。
もちろん日本と比べると南アフリカもブラジルも比べ物にならないぐらい治安は悪い。でもそれはどの国に行っても同じこと。危険だという事も伝えながらブラジルの良さや素晴らしい場所のなどの報道ももっとするべき。メディアの多くが会場とホテルとの往復だけで、その国のいいところを肌で感じてはいないだろう。
それに私が現地で出会った日本人観光客の方々はツアーで来ているという事もあり、安全が最優先されるためオリンピック観戦しかせずに帰国するという方がほとんどだった。最後に私自身、次の東京オリンピックに向けて、良くも悪くも世界中のカメラマンと出会ったことで今の自分の撮影技術の未熟さを感じたし、またオリンピックに来ているカメラマンの撮影姿勢やレベルの高さには本当に自信すら奪われかけた。
ただポジティブに捉えるなら、オリンピックに集まっているカメラマンのレベルが世界最高峰のレベルだという事を肌で感じられたことは大きな私の財産となった。4年後には間違いなく東京でオリンピックが開催される。その時には読者の皆様には、たった一枚の写真でその現場の臨場感や感動を伝えられるようなカメラマンになっていることをこの誌面を通じてお約束できればと思っている。
GOLF&GOLF 2月号 掲載
- ★Sports photograph 小中村政一★
http://www.purosangue.co.jp/