SLEルールは「飛びの規制」に効果はあるのか   菅野 徳雄

SLEルール」は本当にゴルファーのためになるのか!
高反発フェースのドライバーはクラブとして認められないというけれど・・・

クラブフェースの反発係数を0・830以内に抑えるSLEルール(スプリング効果規制)が2008年1月1日から施行される。高反発クラブはゴルフ規則によって正式なゴルフ用具として認められないというもの。しかし、現状では「ルールだからといって素直に受け入れられない」などの意見も多く、一般ゴルファーやゴルフ場も含めて賛否両論が渦巻いている。SLEルールの今後の問題点、一般のアマチュアゴルファーに与える影響などについて識者の意見を集めてみた。


 

SLEルールは「飛びの規制」に効果はあるのか   菅野 徳雄

2007年三井住友VISA太平洋マスターズはブレンダン・ジョーンズ(豪)が517ヤード・パー5の最終18番ホールの第2打を8番アイアンでグリーン左カラーまで運び、そこからパターで直接入れて、イーグルをとり、バーディーの谷口徹を振り切って勝った。プロにとっていまやパー5は2つで乗るのが当たり前の時代になってしまった。それもアイアンで。

かつてはルールブックに「パーの算定に際しての参考距離表」というのが載っていた。それによるとパー3は250ヤード以下、パー4は251~470ヤード、パー5は471ヤード以上となっていた。

ところがテクノロジーの進化によってクラブの飛びの性能が急速にアップしたことでプロの飛距離が飛躍的に伸びて、300ヤードのロングドライブは今ではそれほど驚くべき数字ではなくなっている。国内のツアーでも500ヤードを越えるパー4のホールが出てきている。

「このまま放置しておいたら500ヤード台のパー5は全部2つで届き、パー4はドライブ&ピッチのホールになってしまう。何とかしなければならない」

ドライバーの飛距離がこのまま伸び続けたら、プロやエリートアマの試合はコースの距離を長くしなければならないという問題も出てくる。このままクラブの飛距離が伸び続けたらゴルフゲームの質をも変えてしまうということから、ドライバーの飛びの性能を何らかの形で規制しなければならないという声はだいぶ前からあった。

そしてついに、2008年1月1日から「SLEルール」が施行される。SLEとは「スプリング効果」(Spring Like Effect)のことで、クラブフェースの反発係数(COR)が、0・830以内でなくてはならないというルール。ルールによって、いわゆる高反発のクラブはクラブとして認められなくなるのである。

ではそれでクラブの飛びの進化にブレーキがかかるのかというと、各メーカーはSLEルールに適合しながら、従来の高反発を超えるドライバーをすでに発表している。そうなるとSLEルールは飛びを規制するためには何の役にも立たないということになる。現代のテクノロジーを持ってすれば「飛ぶクラブ」はまだまだつくれるといわれている。

「2008年以降でもプライベートのゴルフであれば高反発クラブを使ってもかまわない」と思っている一般アマチュアゴルファーも多いと思う。しかし「ゴルフ規則は世界共通の規則であるから、競技であるかプライベートであるかは関係なく、スプリング効果の基準を超える高反発クラブは2008年1月1日以降ゴルフ規則に不適合となる」。

日本ゴルフ協会(JGA)のホームページにはそう書いてある。

アベレージゴルフファーでもSLE適合クラブ(ドライバー)に買い換えなければならないということになると、余計な出費を強いられることになる。「プロと違ってわれわれが高反発を使ってもたいして変わらないのだから使わせてくれ」と言う一般アマチュアゴルファーの気持ちも痛いほどわかる。事実、大半のエンジョイゴルファーにとってドライバーの飛びはささやかな楽しみである。それが即ゴルフの精神に抵触するという短絡的なことにはつながらない。プロやエリートアマの競技と90%を越えるエンジョイゴルファーを一括りにするのは、どこかに無理があるのではないだろうか。