アニカ・ソレンスタムが男子ツアーに出場して話題になった「バンク・オブ・アメリカ・コロニアル」の衛星中継を2日間、大いに楽しんだ。画面を通じてみるコースは、まさに異常な盛り上がりだった。テレビ視聴率も、予選ラウンドだというのに驚異的な数字をマークしたそうで、決勝ラウンドのそれを軽く上回ったという。
予選ラウンドということもあり、スコア上位の選手は関係なしに、ソレンスタムのプレーを追い続けていた。一人の選手の一挙手一投足を徹底的に追いかける「見せ方」は、はっきりいって、単純におもしろかった。
おそらく、このことはPGAツアーにとってもLPGAツアーにとっても、ギャラリー集客、テレビ視聴率アップに大いに寄与するに違いない。
目を国内に転じると、トーナメント中継のテレビ視聴率の長期的な低迷になかなか歯止めがかからない。ゴルフ人口の減少が要因だろうが、中継そのもののマンネリ化をその理由に挙げる人も少なくない。
スポーツ中継を考える時、ゴルフほど広範囲で、かつ漠然とした競技はあるまい。ティーグラウンドとグリーンは場所が決まっているが、2打目、3打目となると、どこで打ってくれるかわからない。極論すれば、テレビカメラが何十台あっても間に合わない。何か新しいことをやりたくても、制約が多すぎる――というのがテレビ局の悩みだという。
テレビ中継を見る人のほとんどは、その「何か」を得ようとしている。その意味では、ゴルフ雑誌や単行本を買うのと同じである。その「何か」は、間違いなく「うまくなるための何か」だ。その観点からいくと、昨年あたりから取り入れられているハイスピードカメラで捉えたプロのスイングの画像などは、久しぶりに新鮮に映った。
テレビ局の宣伝文句によると、それは10万分の1から100万分の1の世界だそうだ。アイアンのヘッドが深く長く芝をえぐっていくシーン、しかもその時、シャフトがかなり立っていたのには、感激に近い驚きがあった。
このハイスピードカメラを、NHKを始め、他のテレビ局でも使用するらしい。これ以外にも、いわゆる「ハイテク」画像がこれからもいくつか登場する。考えてみればあたりまえで、ものみな進化する中で、ゴルフのテレビ中継だけが1970年台のまま――ということ自体が異常だったともいえる。
グリーン上の、右に切れたり左に曲がったりするパットのシーンを長々と見せられても、勝負を決める場面以外は、(少なくとも私は)大して面白くない。それより、ショット分析などをしてもらったほうが、見た甲斐がある。
プロの技術をそっくりそのまま真似ようなどという人は、さすがにいないだろうが、ちょっとしたヒントでも得られれば、「よし、今度も見てみよう」という人が増えるのではないだろうか
地平 達郎(じひらたつお)
1948年、滋賀県生まれ。サンケイスポーツ新聞でゴルフ担当のあと、日本文化出版で月刊誌「ゴルフクラシック」創刊に携わる。現在、同社編集局長。