日本ゴルフ界の未成熟部分と今後の対応策 こうすれば日本人男子選手もメジャーに勝てる!~大西 久光編~

「日本の男子選手は何故メジャーに勝てないのか!?」。これまであちらこちらで論議されてきたことであるが、その多くはプロゴルファー批判の色が濃いものであった。もちろん、当事者である選手の努力不足、研究不足は指摘されて当然ではあるが、いくら批判が繰り返されても、1900年代に日本人男子選手のメジャーチャンピオンは生まれなかった。おりしも、このところ若手選手を中心にアメリカツアーに挑戦したり、全英、全米オープンにトライするなど海外を目指すプレーヤーが増えている。そこでJGJA流に「何故日本の男子選手はメジャーに勝てないのか」││メジャーに勝つためにはどうすれば良いのかという建設的な意見をそれぞれの分野の論客にご執筆願った。

真の自由競争を戦い抜ける個性が育つこと。そしてそのためには……
大西 久光氏

日本のプロが、メジャーに勝つためには、何が必要だろうか。
・メジャーに共通することは、強いプレッシャーのもとで、厳しいコースセッティングと戦うことにある。深いラフや堅くて、速いグリーンを克服するには、何よりもそういうコースを経験することが必要になる。例えば、99日本オープンのようなタフなコースの経験だ。そんな経験を通して高度な技術や精神力を身につけることができる。過酷な戦いを制覇した尾崎直道の「苦しい米国ツアーへの挑戦を続けてきたことが、この勝利につながった」というコメントがそれを裏付けている。
・タイガー・ウッズをはじめ、最近のトッププロには殆ど、世界的なコーチがついている。ニック・ファルドがレッドベターとのコンビで6回もメジャーを制覇したのは有名だが、日本のプロも世界のメジャーの勝ち方を知りつくしたコーチの指導を受けるべきではないか。「川岸プロを私に2年預けてくれれば、メジャーを獲らせる」と豪語したレッドベターの言葉を私は今も忘れられない。20世紀のベストプレーヤーに選ばれたジャック・ニクラスですら、グラウトを師とし、技術的なことのみならず、精神的なことについてもアドバイスを受けていたのだから。
・メジャーは、英国や米国で開催される。日本と違い、言葉、食事、芝の種類、等々大きな変化を受け入れなければならない。島国で育った日本人にとって、異文化への順応はそれほど楽なことではない。小林浩美が米国挑戦4年目に2勝して、「やっと疲れないで初日の1番ティに立てるようになった」と言ったことが今でも印象に残っている。海外ではプレー以前にタフな人間力が求められる。それらをおぎなうために、海外の一流キャディをつけることも必要だ。海外で成功した青木が最初から外国人キャディをつけていたことからもそれを推察できる。
・技術的には、飛ばすこと以上に、コントロールに重点をおくべきだ。メジャーではラフからの100ヤードよりもフェアウェイからの150ヤードが有利になるケースが多い。サントリーオープンに勝ったニック・プライスのようなフェードやドローでフェアウェイをとらえる技術が求められている。
・コースマネージメントも重要なテーマの1つだ。特に、日本のプロがメジャーに挑戦する場合、パー5ホールの攻め方に注意しなくてはならない。距離的には日本のコースと変わらないが、グリーンまわりのガードが厳しく、2オンに挑戦してミスした後のリカバリーが難しいからだ。例えばマスターズで2オン可能な13番(485ヤード)や15番(500ヤード)の難しさを見れば、インサイドワークの重要性が判る。
国境のないスポーツの世界で勝ち抜いていくためには強い人間力が求められる。今までの日本社会に強い自立心を育てる環境があっただろうか。横並びの教育ではなく、真の自由競争を戦いぬける個性こそが必要だ。そんなことを考えると、海外でジュニア時代を過ごしたプレーヤーのたくましさが求められている。
日本のゴルフ界は、心、技、体、すべてにタフなヒーローを待ち望んでいる。

〈プロフィール〉
大西 久光(おおにし・ひさみつ)
1937年兵庫県西宮市生まれ。59年関西学院大学を卒業し、日本ダンロップ(住友ゴム)に入社。99年住友ゴム常務、及びダンロップスポーツエンタープライズ社長を退任し、ターゲットパートナーを設立し、代表取締役に就任。