世代交代が進むゴルフ界、団体中枢の早期改革が課題

2015年ゴルフの祭典、マスターズも華やかな中に幕を閉じたが、特に今年のマスターズはいつもと一味違う感慨を世界のゴルフ界に与えたように感じる。

当初は参加さえも危ぶまれたタイガー・ウッズの出場、しかも予想を覆す大活躍、スタートで躓いた世界ランク一位、ローリー・マキロイの見事な巻き返し、そして人気者、フィル・ミケルソンの素晴らしい追い上げ、我が松山英樹の素晴らしい成績、そして新しいスター誕生、ジョーダン・スピースの優勝・・・期待された役者達の予想を上回る大活躍で世界のゴルフファンを熱狂させた稀にみる最高のイベントだった。

この願ってもないような展開は、このイベントを主催しているマスターズ委員会の、遅滞している世界のゴルフ再興を意図して、このような結果が出やすいようにする深謀遠慮が働いたのだとうがった見方をする評論家もいるが、そう思いたくなるような結末だった。

世界のゴルフツアーでは、これまで幾多のライバル関係がツアーを盛り上げてきており、古くは50年以上前のアーノルド・パーマー、ゲイリー・プレーヤー、ジャック・ニクラウスのビッグスリー(今年のマスターズでは三人で始球式を務めた)、日本では20年前のAON(青木、尾崎、中嶋)、そして、PGAツアーではつい先頃までのタイガー・ウッズとミケルソン・・・これまで幾多のライバル関係がゴルフ界を盛り上げ、経済環境や団塊の世代の後押しはあったにしても、ゴルフ産業の隆盛を呼時代にゴルフブームをもたらしてきている。

今回のマスターズで多くの人が感じたことだと思うが、ジョーダン・スピースの記録ずくめの優勝で、今年から新しいライバル関係、マキロイとスピースという図式が誕生するのではないかという期待だ。

多くのファンがウッズやミケルソンの復活を願ってきたと同時に、マキロイ、スピースという新しいライバル関係の誕生を喜び、これによりゴルフのイメージチェンジ、引いてはゴルフ界、ゴルフ業界の変革までもつながってくるのではないかとの新たな期待が出てくる。

勿論、松山英樹の活躍が国内ゴルフ界にとって大きな刺激になり、後に続くスターへの期待、業界活性化の期待へとつながって行くことは間違いないだろう。

一方、ゴルフ産業界を見渡すと、以前も触れたように、この春は企業経営者の世代交代が急速に進み始めている。

このことは国内ゴルフ関係企業のみならず、欧米を含めて多くのゴルフ関連企業がトップ経営者の若返りとそれに伴う経営陣の刷新を行っているのに気が付く。そして当然の事ながらそれに伴う経営方針の変更や修正も行われているようで、このところそれらの企業が発表する経営施策や販売方針にその変化が色濃く現れてきているようだ。

米国の大手企業はこれまでの上級者向け製品一本槍の新製品発売頻度の高い大量販売型マーケティングを改め、よりゴルファーオリエンテッドな戦略に修正しだしている兆しが見えるし、国内大手企業も、これまでの手前味噌的なプロダクトアウト式販売方針からユーザー目線中心の商品企画に方向修正を行っている。例えばダンロップスポーツの例に見るように、シューズやアパレルなどの外注型製品については、これまでのOEM方式から、アシックスやデサントのようなそれぞれの専業メーカーに、販売も含めた商品企画開発、生産、販売機能の大半を委ね、餅は餅屋的分業マーケティングにより、これからのグローバルなブランド競争時代に備えている企業もある。

これらの施策はこれまでの企業体質では恐らく生まれてこなかっただろうし、新しい若い経営感覚から、次々に発表される施策には頼もしさを感じると共に期待もしている。

ゴルフ関連団体から体質を変えるべき時が来ている。

このような変化の時を迎えているゴルフ界に対応し、先進の欧米ゴルフ団体はR&AやUSGA、PGA各団体そのものが自ら体質を変え業界をリードしていこうとする姿勢がみえる。

R&A、USGA、PGA・オブ・アメリカは。既に若い後継会長が決定しているし、マスターズ委員会でさえも、世界のゴルフ振興に先頭に立って協力するためかつての頑なな態度を改めゴルフ自体を変えていこうとしている姿勢が、その方針やファンサービスの随所に見えてきたことは、いちいち内容をあげるまでもなく世界中のファンが気付き始めていることだと思う。

翻って現在の日本国内ゴルフ関連団体の体質はどうだろう。形の上ではゴルフ関連17団体によるサミットミーティングとか、ゴルフ市場活性化委員会(GMAC)とかもっともらしい名前のついた組織は存在しているようだが、その活動状況や成果があまり見えてこない。

これはそのトップに君臨しているJGAのゴルフ界改革に対する無関心さに拠ることが大きいと思うが、参画しているゴルフ業界各分野の団体の問題意識欠如や連携不足に起因するところも大きいと推測する。

その中に於いて、昨年いち早くトップ交替したプロゴルフ協会(JPGA)は、倉本会長の強力なリーダーシップのもと、次々と改革への施策発表が行われ、そのやる気を見ることができる。しかしながらゴルフ界に於ける各団体の機能は密接にリンクしているため、一団体が頑張ったところでその効果が現れてこないことは当然だ。既にゴルフ場業界や練習場業界はPGAに呼応して改革に取り組もうとしている姿勢は見えるが、これら団体にしてもその業界全体を掌握しているとは言い難い状態で、この改革も今後難航が予想される。

いずれにしろゴルフ界全体のダイナミックな改革を進めるには、これら団体全てが、ゴルフ企業がやったような体質転換を行わなければ何も変わらないことが見えているだけに国内ゴルフ界の現状は深刻だと思う。

一刻も早くこれら団体に変革の兆しが見えてくることを期待して止まない。

ABOUTこの記事をかいた人

長年ゴルフ用品メーカーに勤務、商品企画、広報宣伝、海外業務を担当。退職後はその経験を活かし、主にゴルフ用品に関連する執筆活動を開始。最近は海外ゴルフ関係ニュースの翻訳、ゴルフ用品関連座談会司会、海外メーカー来日時のインタビューなどでゴルフ専門媒体に協力している。