障害者の詩に思う ~杉山通敬~

JGJA創立10周年によせて

日本のゴルフ界の活性化が叫ばれて久しい。日本ゴルフジャーナリスト協会では、創立10周年という節目を迎え、ジャーナリストという立場から、日本ゴルフ界をさらに発展させていくにはどうすべきか、協会としてどのような活動を行っていけばよいのか、会員の皆様にさまざまな助言・提言をいただいた。

JGJA会員 杉山通敬

いつだったか、朝食をとりながらNHKの総合テレビを見ていたら、番組と番組の短いインターバルに、体に障害のある少年の詩が紹介された。正確に憶えていないのは作者に大変失礼だけれど、そしてその名前もメモすることが出来なかったのでここに明記出来ないのも大変に申し訳ないのだが、それはつぎのような短い詩であった。

ぼくはゆっくり顔を洗い
ゆっくりご飯を食べ
ゆっくりと動く
ぼくのゆっくりは一番早いのだ
たしかそのような詩だった。わたしは今まで見えなかったことが急に見えたようなオドロキを感じた。そして世の中には知らないことがたくさんあると同時に、ジャーナリズムの一端を担う者として、世の中の人びとに知らせなければいけないこともたくさんあることを思い知らされた。
Aという事柄をBという媒体を通して、Cという不特定多数の人びとに伝えるのがジャーナリズムの仕事であろうが、ともするとAという事柄を恣意的に取り上げ、それをまたBという媒体が恣意的に料理し、Cという不特定多数の人びとに伝えがちなのではあるまいか。
わたしが少年の詩にオドロキを感じたのは〈ぼくのゆっくりは一番早いのだ〉という結句の圧倒的な断定にあった。言葉に力があり、日常があり、アピールがあって、その少年の志操と詩藻が見事に結実されていると思った。それをいっさいの恣意を排して、そのまま伝えたNHKの伝え方もよかった(別にNHKにおべんちゃらしているわけではありませんよ)。
世の中では日々、さまざまなことが起こっているけれど、どのような事柄にも公明正大な目を向けておくことが、ジャーナリストとしての努めなのだな、と改めて思い知らされたのだ。そしてその目はJGJAという団体が養っていくべきものと、一人ひとりの会員が養っていくべきものとがあるように思う(ことさら大上段に構えなくてもいいのだけどね)。