「第2回 JGJAゴルフミーティング」レポート~ゴルフ人口減少!ゴルフ場に人を呼び戻すための議論~

日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)は、11月25日(火)、「第2回JGJAゴルフミーティング」を開催し、JGJA会員10名、ゲスト3名の計13名が参加しました。

JGJAゴルフミーティングとは、主にオンラインで会員相互の情報交換の場を提供するものです。会員相互のコミュニティ形成や会員活動を支援することが目的で、このことを通じてゴルフ業界の活性化を図ります。

今回は、前回のテーマ「日本のゴルフ場を魅力あるものにするために」の続編として開催。テーマは「ゴルフ場に足を運ぶ人を増やすために」です。
JGJA会員でゴルフトライアスロン協会の代表、松尾俊介氏に、前半の約30分、前回の講演内容のショートバージョンをお話しいただき、後半の約45分は2グループに分かれて意見交換会を行いました。

そして全体の進行役は、前回に引き続き私(小森)が担当。グループディスカッションでは、グループAは小森が、グループBはJGJA事務局長の林氏が務めました。

■「第2回JGJAゴルフミーティング」の詳細は ▷ こちら

ゴルフ事業者に求められる「意識転換」

前半の松尾氏の講演は、「危機的な日本のゴルフ~急速な改革を行わないと日本のゴルフ産業は急速に収縮する~」と題し、日本のゴルフ界全体が抱える5つの問題点や、ゴルフ場が抱える8つの課題を解説した上で、「ゴルフ場の改革(案)」を提案しました。(図1)

(図1)「ゴルフ場の改革(案)」(作成:松尾俊介氏、プレゼン資料より抜粋

そして今回のテーマ「ゴルフ場を利用する人を増やす」にフォーカスし、ゴルフ場を“ゴルフをする場所”から、“ゴルフもできる場所へ”の意識転換が必要とし、ゴルフ場という広大な場所で何ができるか?を考えて実行することが大事だと訴えました。そして最後に「ゴルフ場を起点とした新たなビジネス展開ができれば、ゴルフ場が抱える課題の多くは解決の方向に進む」と締めくくりました。

松尾氏のプレゼンを終えて出された質問・意見は次の通りです。(カッコ内は発言者、敬称略)

【質問】
日米の比較で米国のゴルフ人口が増加した理由は?(鈴木)
→松尾氏回答
・USGFやNGFが危機感を持ち、ツアーの活性化や女性、ジュニアの育成など、早めに対策を打ってきたこと。
・メンバーは家族単位なので家族ぐるみでコースを利用し、生活の中にゴルフが浸透していること。
・多くの都市がゴルフ場を中核に都市開発をしている。よってアクセスが良いこと。
・米国は経費をメンバーが負担するため、財政的に安定していること。

【意見1】
「売上=客数×客単価」という単純な公式で考えると、人口減少時代の日本において、これから客数を上げる施策は厳しく、客単価を上げる施策を打つべき。とはいえ単なる値上げでは顧客は離れる。よって客単価を上げるに見合う“価値を高める”必要があり、ここが論点の一つになると思う。(小森)

【意見2】
パブリックコースの顧問を務めている立場から言うと、パブリック制にすればよいというのは少々的外れではと思う。日本のメンバーシップは会員の年会費や名変書き換え料でそれなりに(資金が)回っている。パブリック制で日銭を稼いでも厳しいのでは。(島崎)

【意見3】
コースによって形態や経営の目的が異なり、利益を上げるという本来の経営を目的に運営しているコースがどれだけあるのか疑問。NGKが発表しているゴルフ場来場者数は、ゴルフ人口減少と共にゴルフ場の数も減っているので1施設あたりの来場者数は減っていない。故に危機感が希薄でゴルフ場の方からムーブメントは起こりにくい。
この業界に30年にいるがゴルフに新規参入する人が少ない。ジュニアもしかり。体育の授業など学校教育にゴルフを取り入れると変わってくると思う。
ゴルフ場がやるべき事と業界(団体)がやるべき事を分けで考えた方が良い。そして志のある人から行動していけば良いと思う。(本間)
(意見3を受けて)
→学校教育は体育のみでなく、マナーやエチケット重んじるゴルフの文化は、道徳や総合教育の題材として活用できると思う。(小森)

ポイントは自治体および地域との連携

松尾氏のプレゼンの後、ZOOMのブレイクアウトルーム機能を使って2グループに分かれ、事前募集したアイデアを基に45分間意見交換会を実施。その後メインセッションに戻り、全体発表を行いました。各グループからの発表内容は次の通りです。(カッコ内は発言者、敬称略)

■事前アイデアは ▷ こちら

【グループAの発表】
当グループは「足(交通)の問題」にフォーカスして意見交換を行った。その背景は、日本の殆どのゴルフ場は郊外にあるためアクセスが悪く、足の問題は深刻であること。免許の返納で交通弱者が増加しているという社会課題解決の一石二鳥が期待できるという2点。
交通弱者をゴルフ場が保有するクラブバスで救えないか。地域のシャトルバスとして機能させ、そのルート上にゴルフ場を配置すれば、より多くの人がゴルフ場に足を運びやすくなる。
ゴルフ場に足を運ぶきっかけとして、子ども食堂の運営、学童の機能を持たせる、教育委員会を巻き込んで総合教育をやる等のアイデアが挙げられた。その上で人手不足が切実な問題。
自治体が積極的に参入している市原市や鹿沼市の事例は参考になる。(小森)

【グループBの発表】
足の問題はあるが、運転手不足、利用者減少などでバスの運行は難しい。ゴルフ場単体となると尚難しい。
「企業研修に活用する」に多くが喰いついた。ゴルフをするだけの施設でなく、違う目的で活用する場所にする発想が必要。また「女性にウケると男性にもウケる」には皆が共感した。(林)
クラブバスは地域内の複数のゴルフ場で共同運行すれば良いのでは。またバスを有料にしてコストを回収してはどうか。企業研修、マラソン大会などで活用する際、コーディネーターが必要。専門の会社にコーディネーターを依頼してはどうか。(鈴木)

(企業研修について)
これは私のアイデア。単にコンペルームを研修で活用するというだけでなく、スクランブル方式等で中上級者から初心者、未経験者までが皆で協力し合い、目標達成するプロセスをゴルフを通じて学ぶというもの。(小森)

また林事務局長から女性がゴルフをはじめるにはハードルがとても高いといった意見が出され、いずれ本ミーティングのテーマにしたいとなりました。

最後に、今回話し合われた内容を業界に発信していく必要があり、そのためにJGJAの各会員から伝手のあるメディアに情報発信していくと共に、ゴルフサミット会議への発信を小森より提案。
それを受けた嶋崎氏の回答は次の通り。「サミット会議の活動は新年会と国会議員へのアプローチのみ。よって活性化委員会(GMAC)やJGAにアプローチする方が良い」(島崎)

今回のミーティングの要点は、ゴルフ場がゴルフをするだけの場所でなく、違う目的で活用する場所にする発想の転換が必要であること。そのためには自治体や異業種と連携し、地域活性や社会課題の解決に視点を向けることも大事であると感じました。そして何より、今回出されたアイデアや意見をどう社会実装していかが課題になりそうです。

次回は、来年4月24日(金)18時より、「ジュニア育成」をテーマに、JGJA会員の小原高幸氏のプレゼンを中心に開催する予定です。
(文:小森)

(図2)第3回JGJAゴルフミーティングのお知らせ

※ゴルフミーティングの動画は近日中にアップいたします。

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【略歴】
1993年 サラリーマンからゴルフインストラクターに転身。
2004年 ハル常住さんが主管するハルスポーツビレッジ認定インストラクターとして“ゴルフと
    健康との融合”をテーマに活動を始める。
2005年 「有限会社ゴルフハウス湘南」の代表取締役社長に就任。
2008年 総合コンサルティング会社「株式会社船井総合研究所」と共同で、ゴルフ練習場活性化
    プロジェクトを立ち上げる
2011年 朝日新聞グループが選定する「マイベストプロ神奈川」に認定される
2018年 神奈川県未病産業研究会に参加
2020年 「一般社団法人日本健康ゴルフ推進機構」を設立し、会長に就任する

【メディア実績】
■ゴルフクラシック誌(2008年12月号~2010年12月号)
 連載「ゴルフが変わる!ボディ・チューンナップ」全24回を執筆
■週刊ゴルフダイジェスト(2014年1月28日号)
 「ボールを打たずに上達する!凄い練習法」掲載
■ビジネス情報サイト「Biz Clip」(2015年10月~)
 連載コラム「ゴルフエッセー~耳と耳の間~」現在も執筆中
https://www.bizclip.jp/

【著書】
「仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?」(出版社:星雲社)
 https://www.publabo.co.jp/golf/