「ゴルフは健康にいい」「ゴルフをする人はしない他人より健康寿命が5年長い」だからゴルフをしましょうと多くのゴルフ関係者が口をそろえる。しかしゴルフ場や練習場といったゴルフ施設が、健康増進に寄与する施設であるというイメージが万人に定着しているだろうか。「健康増進施設といえば?」と聞かれると、多くの人はフィットネスクラブやスイミングクラブと答え、ゴルフ場や練習場と答える人は少ないだろう。
そんな中、健康増進施設として国のお墨付きが貰える制度がある。「健康増進施設認定制度」がそれで、昭和63年(1988年)に制定された。
健康増進施設・指定運動療法施設とは?
「健康増進施設」は、“健康増進のための運動を安全かつ適切に実施できる施設”と定義され、条件をクリアすれば厚生労働大臣に認定される。申請のあった施設が条件を満たしているかを調査する機関が、公益財団法人日本健康スポーツ連盟(通称、けんすぽ)だ。
更に、この認定された健康増進施設の中で一定の条件を満たせば、「指定運動療法施設」として認定される。特筆すべきは、医師の処方により、同施設を利用して行った運動療法にかかった費用は、医療費控除の対象となるという点だ。
健康増進施設は全国で354施設、うち指定運動療法施設は255施設。(2024年4月5日現在)
認定を取得している施設の多くが、フィットネスクラブや公共の運動施設で、パーソナルジムや治療院なども数件認定されているが、ゴルフレンジを併設しているフィットネスクラブはあるもののゴルフ施設の認定はゼロ。
ゴルフ施設が健康増進施設として認定されれば、差別化につながるだけでなく、ゴルフ=(イコール)健康というイメージを定着させることにつながる。ましてや指定運動療法施設に認定されれば、ゴルフ施設での運動が運動療法とみなされることになり、ゴルフ産業にとって大きくプラスになるはずだ。
そこで、この認定をゴルフ施設が取得できる可能性を探ろうと、けんすぽの事務局長、田中尚子さんに話を伺った。
令和4年の認定規程緩和でハードル下がる
「厚生労働省は健康増進施設の利用を促進するため、令和4年に認定規程を緩和しました。以前は運動フロアの面積が150㎡以上必要でしたが、改正後は20㎡以上でOK。また以前はシャワールームか浴室が必須でしたが、これもプール施設以外は必要なくなりました」と田中事務局長。
更に設置するトレーニングマシンも緩和され、改正前は大胸筋強化にはチェストプレス、大腿四頭筋(太もも)の強化にはレッグプレスなど、鍛える身体の部位ごとにマシンが1台ずつ必要だったが改正により撤廃。また有酸素運動も、ミッドミル(ランニングマシン)とエルゴメーター(自転車のペダル式運動器具)が各1台ずつ必要だったが、改正後はエルゴメーターが1台あれば良くなったとのこと。
よってハード面では令和4年の規程緩和でかなりハードルが下がり、近年急増しているインドアゴルフ施設でも十分認定される可能性があるといえる。
しかしネックとなるのは「人の問題では」と田中さん。というのは健康増進施設の場合、健康運動指導士の資格所有者が常勤で1名以上いなければならない。また指定運動療法施設にいたっては、健康運動指導士の他に健康運動実践指導者が必要(非常勤可)となるからだ。
健康運動指導士とは、簡単にいうと個々に合った運動プログラムを作成する人。もう一方の健康運動実践指導者は、運動指導の知識や技能を持ち、運動プログラムを実践するための指導をする人で、共に公益財団法人健康・体力づくり事業財団が認定する民間資格だ。
ゴルフ施設で働くスタッフで、これらの資格所有者は少ないだろう。そこで田中さんから裏ワザを教わった。健康運動指導士は、4年制の体育大学を出ている、指導歴がある等条件が厳しいが、健康運動実践指導者は3年以上の運動指導歴があればよく、条件がゆるい。健康運動実践指導者の資格があれば、健康運動指導士の受講資格が得られるので、こちらを先に取得するとスムーズとのこと。
田中事務局長は、「これらの資格取得からはじめると、認定が下りるまで一年ぐらいはかかるでしょう。しかし申請のあった施設には、足りない部分をけんすぽが指導するため、書類が通り、調査に至った施設は100%認定を取得しています」と語る。
ゴルフを健康産業に発展させるべく、多くのゴルフ施設にチャレンジして欲しい制度だ。
(日本健康ゴルフ推進機構会長/小森 剛)
小森様
新しい視点をご提示いただき、有難う御座います。ゴルフが健康産業としてゴルファーへ貢献しているのではないか、と感じてはいましたが、既存の制度を活用し、健康施設としての認証を国から得る、この様な観点は此れまで自分自身には無かったものです。
大変勉強になりました。
大野様、コメントありがとうございます。ゴルフが本当の意味で健康産業の仲間入りをすれば、業界はもっと活性化すると確信しています。今後とも、ご指導、お力添えの程、よろしくお願い申し上げます。